トップいいいいいいづなマガジンいいづな女子会議〜Vol.3 「だんどりの会」編 後半

いいづな女子会議〜Vol.3 「だんどりの会」編 後半

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町の重鎮と恐れられる「だんどりの会」の女性たち。もちろんそれは、真面目に真剣に、町のことを考えて、女性の地位を築き上げてきたから。彼女たちの考える女性の未来、飯綱町の未来とは?

―飯綱町の女性たちについてどう感じていますか?―

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私が飯綱町に来たのは40年ほど前だけど、外から来てみて特に女性が虐げられているとまでは感じなかったですよ。あの頃は生活改善普及事業(※1)が盛んで、農村女性の地位向上のための勉強会によく行きました。そこで教えられたことを黙々とやってきて今に至ります。
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家族経営協定(※2)とかね。
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私の夫は勤め人だったけれど、昔は農家のお嫁さんはお小遣いも無くて実家でもらっていたとか、大変な苦労があったのよ。そういう状況を改善するための生活改善普及事業や家族経営協定ね。今の若い人たちは、職業を持っている人が多くて、時間に追われて大変だと思う。社会活動に向ける余裕もなくて気の毒よね。私たちの時代は今より貧しかったけれど、バブル景気もあって未来に希望が持てたよね。
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男の人も家事をするようになったもんね。以前、親戚のところに電話をしたら、電話に出た家族に「お父さんは今、お乳くれてる」って言われてびっくりしたことがあるよ。
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男女平等でいいけれど、旦那さんが家事や育児をするのが「当たり前」ではなくて、「やってくれてありがとう」くらいに思えるといいんじゃない。
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男の人は普段家事に手を出しているかいないかで、年をとってからできることがだいぶ違ってくるよね。
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うちの旦那さんは自分のことは自分でする人なんだけど、偉いのは、その時代に5人の息子を全員そんなふうに育てたお義母さんだと思う。

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―今後、どんな町になってほしいと思いますか?―

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高齢化で、「田んぼは人にやってもらう」「りんごはやめようかな」、という話もあちこちで聞くから心配だよね。農業があって、自然があっての飯綱町であってほしい。
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うちは娘婿がりんご部門は全て引き継いでくれました。子どもが継がずに、孫が継ぐっていうパターンも聞きますね。
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来る者は拒まず、新しいものは取り入れていきたいよね。
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持続可能な地域づくりが大事。若い人でも、移住してくる人でも、土を楽しく耕せるような人が増えてほしい。

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―だんどりの会の未来は?―

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伝える人をつくる、育てていく。もっと「想い」を共有していきたいですね。
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ただ郷土料理を作るんじゃなくて、むかしの人の「想い」を伝えていくの。そのためには奥深く勉強しないと。そういうのを「精神の考古学」って言うんだって。100人でも1人、1000人でも1人、1人いれば繋がる。学校でも興味を持ってくれる子も、そうではない子もいるけれど、1人でも伝わればと思って気楽にやっています。
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お味噌をつくったり、漬物を漬けたり、手を動かして作業することも大事ですね。
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頭で覚えたのは忘れちゃうけど、手の感覚は覚えてるよね。
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私らは伝えるの。後の人がどう受け取ろうと知ったこっちゃない。未来なんか私のものじゃないもの。ただ私らは、いいと思うから極力伝える努力をしましょうということだね。

―飯綱町を代表する郷土料理ナンバーワンは何ですか?―

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そういう感覚で見たことないよね。今の人たちはそういう風にしたがるけど。稲づくりと年中行事はぴったり関係性があって、それに即して行事食があるんだよ。全国的なものだけど、赤飯くらいお祝いに欠かせなものはないでしょう。最近は、「やたら祭り」(やたら:なす、きゅうり、みょうがを唐辛子や味噌漬け一緒に細かくきざんだ食べ物)なんてやっているけど、やたらは昔は、田舎の貧しい恥ずかしい食事というような認識もあったのよ。でも今では夏の盛りの食欲をそそる料理としてとても人気でしょ。
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その時畑にある物でつくるのよね。

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[飯綱町の食ごよみP5]

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飯綱町ならではといったら、お雑煮はしょうゆ味で野菜を煮て、最後にお餅の上から胡桃をすり鉢ですったものをかけるのよ。だから大晦日は胡桃を殻から取り出す作業が大変なの。黒柳さんの家の姫胡桃は大きくて美味しいのよ。
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その実を撒いても、同じようには実らないのよね。

「いただきます』の向こう側」では、「食の匠」は、作物から自然の意志といのちを感じることのできる感性を持ち、また「いただきます」の向こう側にある世界を理解することも必要である、と求めています。そのとてつもなく深い世界にただ唖然としたのですが、だんどりの会の皆さんは「先人の『想い』を伝える」と笑顔で語ってくださいました。

ならば私たちは、そのバトンを受け継いでいくのが役目なのではないでしょうか。受け継がれてきた大事なことを簡単になくしてしまわないことが、飯綱町に暮らす者に託されたこと。飯綱町の魅力は、そんなところにあるのではないかと思います。

※1 生活改善普及事業
1948年に制定された農業改良助長法にもとづき「生活をよりよくすること」「考える農民を育てること」を目的に、その達成手段として「生活技術の改善」と「生活改善グループの育成」が位置づけられた。

※2 家族経営協定
家族で取り組む農業経営について、経営の方針や家族一人ひとりの役割、就業条件・就業環境について家族みんなで話し合いながら決めるもの。

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