トップライターはっさく堂さんサンクゼールのアップルブランデー開発に携わる若き蒸留家/醸造家 山﨑直宏さん

サンクゼールのアップルブランデー開発に携わる若き蒸留家/醸造家 山﨑直宏さん

01.jpg

飯綱町の小高い丘の上、ブドウ畑とりんご畑、そしてのどかな田園風景に囲まれるように立つ株式会社サンクゼール。創業者・久世良三さんの妻、まゆみさんの手づくりジャムから始まった同社は、ドレッシングやパスタソース、ジュースなど、さまざまなオリジナル商品を展開。1988年にはワイン醸造も始めました。

最初は、ドイツのワイン製法によるフレッシュでフルーティなワインづくりからスタートし、同時に自社農園で欧州系のワイン用ブドウの幼苗を定植。苗が育ち良質なブドウが収穫できるようになると、自社で栽培したブドウで醸造し、オーク樽で熟成させるワインの生産に取りかかりました。また、アメリカのナパヴァレーやフランスのブルゴーニュでワインづくりの研修を行うなど、あらゆる方面で醸造の技術を磨きました。
そして2022年、フランス最大の国際ワインコンクール“Challenge international du vin 2022”など2つのコンクールにて金賞を受賞。2023年にはフランスで開催されたシャルドネ品種のワインの国際コンクール”Chardonnay du Monde”にて金賞を受賞するなど、世界的に認められるワインとなりました。

02.jpg

サンクゼールのワイナリービジネスユニットでは、4人の醸造家が中心となってお酒づくりを手掛けています。そのうちのひとり、山﨑直宏さんは、サンクゼールで蒸留酒が始まったときに自ら希望して現在のユニットに配属となりました。

「飯綱町の特産品であるりんごを使ったアップルブランデーをつくるプロジェクトが発足したのは2015年です。2017年にはドイツから蒸留器が届き、本格的にブランデーづくりが始まりました。私は大学時代からウィスキーやブランデーなどの蒸留酒が好きだったので、サンクゼールの蒸留酒づくりに関われたらと思い手を上げました」

山﨑さんは長野県池田町出身。大学と大学院では生物学を学び、2014年にサンクゼールに入社しました。
「長野県内で食品開発の仕事がしたいと思っていました。そして、商品にこだわりがあり商品開発も積極的だったサンクゼールに入社しました」

03.jpg

入社後1年間は軽井沢やつくば市の店舗に配属になり、現場を学んだ山﨑さん。2015年からは本社の商品開発ユニットに入り、レシピの開発から試作、商品化までを手掛けるようになりました。
「今は会社が大きくなったので人員も増えていますが、当時は4人しかいない部署でした。そこで、ジャムやドレッシング、パスタソース、瓶詰めなど、サンクゼールと久世福商店のオリジナル商品をつくっていました」

念願の商品開発部で充実した日々を送っていた山﨑さんでしたが、心の中にはある思いがありました。それは、「もしサンクゼールが蒸留酒づくりを始めるのであれば、その仕事に関わりたい」というもの。
「サンクゼールのルーツのひとつは、創業者である久世良三さんがフランス・ノルマンディーの風景と成熟した大人の文化に感動したことです。ノルマンディーはりんごとカルヴァドスの名産地。私も、いつかサンクゼールでブランデーがつくれたらと思っていました」

アップルブランデーのプロジェクトへの参画を希望した山﨑さんは、正式に醸造を担当するユニットに転属となりました。ワイナリーにドイツの蒸留器を設置して、九州の蒸留酒づくりを専門とする方や、ノルマンディの生産者さんを招いてノウハウを習得。これまでの商品開発の部署で得た、商品ができるまでの流れや食品衛生などの知識も大いに役立ったそうです。

アップルブランデーの原材料となるのは、ふじや高坂りんご、ブラムリーなどの飯綱町産りんご。まずは、蒸留器から流れてきたばかりのフレッシュな「ホワイトアップルブランデー」を発売。さらに、そのホワイトアップルブランデーを樽で寝かせた「熟成アップルブランデー」も商品化することができました。

04.jpg

山﨑さんの仕事は、ブランデーだけにとどまりません。ワインやシードル、リキュールなど、お酒全般を手掛けるそうです。先述したように、国際的なワインコンテストで入賞を果たすことも増え、ワイナリーユニットをはじめとした会社全体のやりがいにつながっていると言います。
「ワイナリーは中庭に面しているため、グリーンシーズンにはテラスでワインを片手にくつろいでいるお客様の姿を見ることができます。また、ワインフェスタやシードルガーデンなどでは、お客様と直接触れ合う機会もあります。そんなとき、美味しく楽しんでいただけるお酒をお客様にお届けできる喜びを感じます」

06.jpg

飯綱町内の家で妻と子どもと暮らす山﨑さん。プライベートでもワインやウイスキーを楽しんでいるそう。
「休みの日には、家族で飯綱山に登ったり戸隠神社奥社へ行くなどして、アウトドアや散策を楽しんでいます。妻は、子育て兼コワーキング施設の『みつどんのおうち』をよく利用しているようです。長野市にも自然にも近く、とても便利ないいまちだと思います」
飯綱町はりんごの町として知られますが、ワイン用ブドウの栽培に取り組む事業者も増えているようです。この町の気候や地形を活用して栽培される美味しい果物と、そこから生まれる美味しいお酒。町の魅力を生かしてさまざまな取り組みが行われ、若い人が活躍している姿はうれしく、また頼もしいですね。

カテゴリー

地図