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トップライターはっさく堂さん飯綱町の企業を訪ねて②「株式会社サンクゼール」
トップいいいいいいづなマガジン飯綱町の企業を訪ねて②「株式会社サンクゼール」
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飯綱町の企業を訪ねて②「株式会社サンクゼール」

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■小高い丘の上に立つ欧州風ワイナリー
飯綱町アップルミュージアムからさらに山道を登った先、のどかな三水地区の風景を見渡す小高い丘の上に、ブドウ畑とりんご畑に囲まれたワイナリー「サンクゼール」があります。標高650mに広がるなだらかな丘陵地帯と、垣根仕立てのワインブドウの木、日差しを受けて銀色に輝くりんごの葉、そして、その風景を彩るように風に揺れる素朴な花たちが、ヨーロッパの田舎町を彷彿とさせます。

「サンクゼールの世界観は、フランスの田舎町で生まれました。そして、この場所を初めて見たとき、その世界観を実現させる場所はここしかないと思ったんです」そう話すのは、サンクゼール創業者の久世良三さん。

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久世さんは東京都出身。スキー好きが高じて、25歳のときに斑尾高原にペンションをオープンしました。その後、妻のまゆみさんと結婚しましたが、仕事があまりにも忙しく負担が大きすぎたため、久世さんはペンションを閉めることを決心。そのかわりに、まゆみさんがペンションの朝食に作っていて好評だった、ジャムの販売をはじめました。

「当時は『斑尾高原農場』という名前でジャムを販売していましたが、ジャムが有名になるにつれ、『斑尾高原農場に行きたいんだけど、どこにあるのですか?』という問い合わせが増えてきました。でも、当時の事務所や工場はお客様のイメージには程遠く、逆に夢を潰してしまう恐れも(笑)。それがきっかけで、よくよく考えてみたんです。今の経営は自分の求めているものとは違うのではないか。緑の多い場所に農場を作り、自ら体を動かしながら働くほうが自分らしいのではないか、と」

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久世良三さん、まゆみさん夫妻

■フランスの田舎で見つけた豊かな時間
「いつか自分の農場を持ちたい」。そう考え始めた久世さんは、ペンションを売却した後の1983年、フランス・ノルマンディー地方の田舎町に旅行に出かけました。そして、夫妻にとって遅い新婚旅行だったその旅が、久世さんの大きな転換期となったのです。

「今のように旅の情報が多くなかったので、車でとにかく走り回りました。すると、田舎道に突然、『カルバドス(アップルブランデー)』と書かれた小さな看板が現れます。その看板に従って進むと、牧歌的な風景に溶け込むように、木と石で作られた茅葺き屋根の蒸留所が立っていました。建物の周りにはカルバドスの原料となるりんごの木が植えられ、牛や馬が飼われています。蒸留所では、農園を営む家族が温かく私たちを出迎えてくれました」

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また旅の途中に、町の小さなレストランで心に残る光景を目にしたそうです。それは、何組かのお年寄りの夫婦が、ただワインと会話を楽しみながら食事をしている姿。そのささやかな日常のワンシーンに、久世さん夫妻は心打たれ、大きな幸福感を感じたと言います。
「素朴だけど丁寧に作られた料理と、地元に根づいた醸造所で作られたワイン。そして、大切な人と今日あった何気ないことを話す、ゆっくりしたひととき。それこそが、とても上質で豊かな時間だと思ったんです」
この旅で、久世さんが理想とする農場の輪郭がはっきりとしてきました。

■旧三水村の村長に語った夢
帰国後、久世さんは農場を作る土地を探し回りましたが、紹介されるのは工業団地ばかり。久世さんの理想を正しく理解してくれる人は多くありませんでした。
「市町村の役場にも電話をかけましたが、まともに取り合ってくれることは少なかった。そんななか、当時の三水村に電話した際に対応してくれた総務課長さんがとてもいい方で、村長につないでくださったんです」
村長に会い、ノルマンディーで見た光景と、自分が作りたい世界について思いの丈を語った久世さん。「土地も建物も技術者もお金もない状態でしたが、とにかく、夢を語らせてもらいました。そしていつか、自分の農園がこの土地にふさわしい存在になって、地域に貢献したい。そうお伝えしました」

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「あなたの夢は、この村なら実現できるかもしれませんよ。ここで生産される農作物を使う、ヨーロッパ型の生産業なら」
久世さんの熱意に打たれた村長は、三水村村政100周年記念事業として、サンクゼールの企業誘致を正式に決定したのです。
のちに久世さんは、旧三水村の丘の上でフランスの風景に重なる土地と運命的に出会い、1988年にジャムの工場を建て、ワインの製造もはじめました。こうして、サンクゼールの歴史が始まることになります。

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■地域に貢献する企業に
現在、ジャムやパスタソース、ドレッシングのほか、ワインやシードル、アップルブランデーまで多岐にわたる加工品を生産し、アメリカ・オレゴンにも工場を設立するまでに成長したサンクゼール。その一方で、地元産のフジやブラムリーなどのほか、「幻のりんご」とも呼ばれる飯綱町原産の高坂りんごを積極的に使うなど、地域に根ざした事業を続けています。

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本店限定の「高坂りんごシードル」。価格は2019年8月のもの

サンクゼールがシードルとアップルブランデーに使うりんごは年間67トン。そのすべてが、飯綱町で生産されたものです。去年より販売開始したアップルブランデーが好評であることから、今後、使用するりんごはさらに増えることが見込まれます。
また、飯綱町と信濃町で年間250人を安定雇用するなど、地域の仕事も生み出しています。久世さんが「いつか地域に恩返しがしたい」と村長に訴えた夢は、20年の歳月を経て、しっかりと形になりました。

「フランスで感動したのは、田舎の人が自分たちの住む土地に誇りを持っているということ。だから私たちも、飯綱町に住む人たちが誇りに思えるような仕事をして、たくさんの人に喜んでもらいたい。それこそがサンクゼールの、農場として、そして企業としてのあり方なのだと思っています」(久世さん)

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サンクゼールのワイナリーレストランは、2019年4月にリニューアル。
タパス(小皿)料理などをリーズナブルに楽しめるようになった。


株式会社サンクゼール
長野県上水内郡飯綱町芋川1260
026-253-8002(ショップ・デリカテッセン)
026-253-8070(レストラン)
https://www.stcousair.co.jp/

 

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