飯綱町に、町民なら知らない人はいない有名なアップルパイがありましてね。
飯綱町にある三水農産物加工所チアさみずで作っている、かわいいリーフ型のアップルパイ。
素朴なパッケージがまたなんとも懐かしくて、町内のコンビニや農産物直売所さんちゃんで手軽に買えるもんだから、私もよく運転中に食べながら帰るのですがね。
いつも2つ入りのを買うわけですよ。ひとつは運転しながら自分が食べ、もうひとつは家族にお土産で持って帰ろうと思って。
右手にアップルパイ、左手でハンドルを握りつつ、ゆっくり味わいながらのドライブが至福の時間でね。
ああ今日も美味しいなぁ~美味しいなぁ~って、しみじみ噛み締めながら家に着くと、これが不思議なことに、残しておいたはずがひとつも残っていないのですね。
怖いな~、怖いな~。
恐る恐る助手席を見ると、空っぽの袋が転がっているだけ。
なんか嫌だなぁと思ってバックミラーを見ると、口元にアップルパイの食べかすを付けた自分と目が合うんですね。無意識に2つとも自分が食べてしまったんですね。
食べ過ぎたな~、食べ過ぎたな~。
※これはフィクションです(^.^)
そんな怖いほど美味しいアップルパイを、食べ過ぎてなくなることを心配せず、いつでも自宅で作れたら…!
原材料はとってもシンプル!
シンプルゆえに、作り方には大切なコツがありそうですね。
家庭で作る際のポイントを教えてくださるということで、美味しさの秘密を探りに、アップルパイ講座に参加してきました。
いいいいいいづなマガジン町民ライタースキルアップ講座・番外編、いいづなに伝わるアップルパイ講座。
講師は、「だんどりの会」の佐藤アツ子さんと宮本久子さん。
司会進行は、地域おこし協力隊の眞鍋知子さん。
飯綱町の食と農を次世代に継承する活動をされているだんどりの会について、『飯綱町の宝』と誇らしげに紹介する眞鍋さんを、目を細めて見守っているお二人。
お互いを信頼し合っている素敵な関係ですね。
飯綱町とりんごの美味しい関係も気になるので、まずはアップルパイ作りに入りましょう!
始めに、8つにいちょう切りしたりんごを大鍋で煮ていきます。
紅玉が時期的に手に入らないので、今回はふじを使いましたが、ふじの場合は甘みが強いので砂糖の量を減らすそうです。
つやつや透き通ってあま~い香りの煮りんご、もうすでにこの時点で美味しそう!
煮汁は最後の仕上げに使うほか、ゼリーに加工して食べることもできるので取っておきます。
絞り終わったレモンの皮は捨てずに、バターでべたついた道具類を掃除すると、すっきりキレイになるそうです。
そうか! レモンは天然のクエン酸ですもんね!
台所洗剤を使わなくても、身近にあるもので済ませられるのが、とっても良いなぁと思いました。
シンプルなアップルパイは、後片付けまでシンプル。
台にふるった粉を広げてその上に冷えたバターを置き、バターを細かく切り込んで、粉となじませていきます。
チアさみずのアップルパイは、折りパイではなく練りパイ。練るといっても、こねてはいけません! はい、ここポイントです。
もんじゃ焼きのように土手を作って、中央に冷水を入れて生地をまとめるのですが、お喋りに夢中になっていると、うっかりダムが決壊して「わー」となるので、いくら楽しくてもここはお口チャックです。
まとまったらポリプロピレンのビニール袋に入れて、冷蔵庫で冷やします。
1時間程経ったら生地を取り出し、めん棒で伸ばしていきます。
佐藤さんは簡単そうに伸ばしていましたが、均等に伸ばすのがなかなか難しい!
5科目平均して伸ばしたいのに、英語と国語のみずば抜けて好成績の偏ったレーダーチャートのような生地が広がるのは、私が根っからの文系だからでしょうか。
生地の厚さが3ミリ程になったところで、おもむろに丼ぶりを取り出した佐藤さん。
えっ、丼ぶり…?
DONBURI?
今日のメニューは確かアップルパイだったはず……白米炊いてあったかな。
目が点の参加者の視線を気にも留めず、佐藤さんは逆さにしたどんぶりでキレイに生地を切り抜いていきます。
お見事!
焼き型は使わないのですね~!
家庭でも作れるとうたっておきながら、本場イギリスから取り寄せた焼き型、地中海岩塩、カルピスバター、シチリア産有機レモン、波動強命水を使うと言われたら、どうしようかと思っていましたが。
まさか、焼き型すらいらないとは!
チアさみずのアップルパイは、食べたいときに、手に入る材料で、誰でも手軽に作れるのがうれしいですね。
ちなみにこのあと佐藤さんは、大きさを微調整するのにお皿を使っていました。
丸ければなんでもいいのですね~!
これなら自分にも作れる!と、確信した瞬間でした。
丸く切り抜いた底に、先ほどの煮りんごを、これでもかと敷き詰めていきます。
軽くシナモンをふったふじの上には、生のグラニースミスがゴロゴロ。
食感も甘さも異なる2種類のりんごが入ることで、ついつい口に運んでしまう、甘味と酸味がほど良いアップルパイができるのですね。
パイ生地の切れ端は、細長くカットして周りを囲い、蓋をしたら、表面に切れ目を入れ、縁をフォークで押さえていきます。
溶き卵を表面に塗ったら、いよいよオーブンへいってらっしゃい!
しばらくすると、ふんわりと部屋中に漂ってくる香ばしい香り。
ああ、パイが焼けるのを待つ時間てなんて幸せなんでしょう。
30分後、おかえりなさーい!
待ってました!会いたかった!
ここで、さきほど取っておいたりんごの煮汁を、焼き立てアップルパイの表面にさっと塗ります。
この最後のひと手間で、さらにツヤが出て美味しいアップルパイの完成です。
美味しい音、伝わりますか?
よーく耳をすませてどうぞ!
たくさん焼き上がりました~!
いやぁ絶景かな。
アップにも耐えうるこの色ツヤ。
さあさあ、お楽しみの試食タイムです。
皆で食べるアップルパイは、四角くて長~いロングバージョン。
チアさみずのアップルパイは冷めても美味しいのですが、やはり焼き立ては格別でした!
サックサクの音、聞こえますか?
今回の参加者の中には、小さなお子さま連れの方もいらしたのですが、ほかの参加者の方にお子さまをあやしてもらったりしながら、楽しんで参加されていました。
今は託児付きのお料理教室もありますが、参加者同士が見守って、赤ちゃんも一緒に参加できるゆる~い雰囲気が、田舎ならではのぬくもりがあっていいなぁと思いました。
ひたすらかわいい赤ちゃんに、参加者全員デレデレ。
試食をしていると、田舎あるあるのお漬物も登場しました。しょっぱあましょっぱあまの無限ループにハマりながら、おしゃべりに花が咲きます。
約30年前に、りんごの加工品を作って地元のりんご農家さんを応援しようと考案されたアップルパイは、今や大人気商品となりました。
町外出身の地域おこし協力隊である眞鍋さんも、女性の地位向上を築き上げてきただんどりの会の皆さんも、大好きなこの町の素晴らしさを守り、伝えていきたい想いは同じ。
今回参加した私にも、生産者や作り手の想いに触れ、ごちそうさまのこちら側で感謝を述べ美味しさの感動を伝えることは、すぐにでもできそうです。
だんどりの会の皆さんが作り続けてくださったおかげで、今日も美味しいアップルパイが私の口に入ることができました。
ありがとうございます。
しかしホールで作っても、魔法のように消えてしまったアップルパイ……。
足りないな~、足りないな~。
しばらくは、この怖いほど美味しいアップルパイの語り部として生きていこうと思います。