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一見の価値あり! 御所之入地区のお祭り準備を密着取材

飯綱町では100年以上前から、五穀豊穣を祈願する秋季例大祭(秋祭り)が各地区の神社で行われてきました。芋川神社の秋季例大祭もそのひとつで、9つの地区が集まって今年は9月17日~18日におこなわれました。近年は、少子高齢化により規模を縮小せざるをえない地区も増えてきましたが、御所之入(ごしょのいり)地区では、獅子舞(ししまい)、神楽(かぐら)、お囃子(はやし)が昔から途切れることなく受け継がれています。

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御所之入地区では、ほかにも伝統的な行事が続けられています。お祭りの1日目の早朝には、地区の住民約50人が総出で『門灯篭(もんどうろう)づくり』と『大幟(おおのぼり)の竿立て』が行われるそうです。「一見の価値ありなのでぜひ見に来てください」とお誘いくださったのは、御所之入地区の住民である飯田安彦さん。皆さんが力作業をしている中、ただ立って見ているだけでよいのか!?と思いつつ、取材に行きました!

▼ 9月17日 4:30
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まだ夜も明けない暗いなかを、地区の青年部の方たちが集まってきました。地区内に「これから始まるよー」と知らせに回るために出発します。合図に使うのは板木(はんぎ:※ばんぎとも言います)。木槌で叩くと「カーン」と乾いた木の音が響きます。

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地区をひと回りして戻ると、住民が倉庫の前に集まり始めていました。倉庫から竿や柱の部品を出して、設置場所まで運びます。まだ暗いので軽トラックのライトを照らしながら作業します。

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次々に必要なものが運び出されます。大きいものは4人がかり。(手伝わずにカメラをまわす肩身の狭いマスオ)

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うっすら明るくなってきました。まずは竿の土台となる柱を立てます。手前の柱は今年新しく作られたもの。地区には大工さんや木工屋さんがいらっしゃるので、柱の製作もできるとのことです。

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地面に開いているこの穴は、祭り用の柱を立てるためだけの穴!

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柱に竿の根元を取り付け、くさびで固定します。

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竿の先に杉の葉とススキをつけます。

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いよいよ1本目の竿立てです。全員で綱を引っ張り、竿を立てます。

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続いてもう1本の竿を立てます。また全員で綱を引っ張ります。立ちましたが、土台がぐらつくとのこと。協議の結果やりなおすことに…。

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ぐらつく竿を倒し、土台に再度しっかりとくさびを打ちます。

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再度綱引きをして、無事に立ちました。今度は大丈夫そう。

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休む間もなく次は門灯篭つくりです。門灯篭とは、その名の通り門の灯篭。柱と柱の間に障子を渡し、内側に明かりを灯します。せっかく途中まで作ったのですが、「こっちの柱が先じゃだめなんだよ」と気づき途中やり直しになることも…。年に1回しか組み立てないので「どうやるんだったっけ?」となることがあるとのこと。ましてや今年は4年ぶりの組み立てです。思い出しながら作業するため例年よりも時間がかかります。

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柱の組み立てが終わり、屋根の取り付けにかかります。

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屋根の取り付けができました! 門灯篭は重いのでユニックで吊り上げるためロープを取り付けます。

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「15年ほど前までは、門灯篭も人力で引っ張って立てていた」とのことですが、竿よりも重いので、さぞかし大変だっただろうな、と想像できます。

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無事に立ちました!くさびを打って固定します。

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垂直に立っているかを確認します。調整も手作業です…。ユニックで吊り上げるためにかけたロープが気になりますね!? はい、はしごに上って外しました。夜に点灯するための電球も取り付けましたが、ここでタマ切れが発覚。買い出し部隊がコンビニへと出動していきました。

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門灯篭が立ってようやく、終了…ではありません。続いて作業するのは「ふきながし立て」です。地区の東西南北4か所に、大幟よりも低めの竿を立てるのは「うちの地区でお祭りをやってるよ」という合図だそうです。このふきながし立ても簡単ではありませんが、大幟の竿立てを見たあとなので、簡単に見えちゃいます。ここでようやく組長が解散の合図。このあとは青年部が残って、大幟と門灯篭に障子を取り付けるそうです。少し休憩タイム。

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門灯篭の障子

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大幟

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作業再開です。幟班と障子班に分かれて作業します。

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障子に書かれた文字と竜の絵は、地域の書道の先生が書かれたとのことです。迫力がありますね!

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障子の取り付けも順調とはならず…。どうやら最後の障子が入らないとのこと。柱をたたいて隙間ができるか現場調整を試みます。どうやら「平行四辺形」に歪んでいることがわかりました。「縄で枠を外から引っ張ってみるか」ということになり、縄をかけて青年部みんなで引っ張ります。私もお手伝い。

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ようやく障子が全てはまりました!
朝4:30からはじめて、約4時間。ようやく大幟と門灯篭の設置が完了しました。

これ、めちゃめちゃ大変じゃないですか!!

さらに、せっかく苦労して付けた障子ですが、「天候が心配」ということで、夜には外してしまったとのこと。なんてこったい…。

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(撮影協力:飯田安彦さん)

「門灯篭(もんどうろう)づくり」と「大幟(おおのぼり)の竿立て」は、昔はほかの地区でもやっていたそうですが、受け継がれているのは御所之入地区だけになりました。参加された地区の皆さまに、「大変じゃないですか?」とお聞きしたところ、「大変だけど達成感があるよね」「皆でわいわいできるので楽しいよ」「伝統だから当たり前だと思っている」「夜になると障子がきれいで見ごたえがあるよ」「ずっと続けてきたから、続けられる限りやりたいね」と前向きな意見がほとんどでした。でなければ、4時30分から50人も集まりませんね!
そもそもなぜ、このように大きな門灯篭や幟が立てられるようになったのでしょうか? 教えてくれたのは、本日お集まりの中で最年長の飯田聖史さん。「昔は、どこよりも大きくて立派なものを立てるぞと各地区で競っていたので、今の大きさになりましたね」

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飯田聖史さん

 

 

▼9月19日 6:17
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お祭りが終わり、翌朝は、また皆さんが集合して門灯篭の撤収と、竿ころばし(竿の片づけ)をしていました。出勤日の朝ですが、皆さんが協力して片づけをしていたのが印象的です。お疲れさまでした。(撮影協力:飯田安彦さん)

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お声がけくださった飯田安彦さんは、次のように熱く語ります。

「今回、取材にきていただいたことで、伝統的な文化を文字と写真に残すことができて良かったです。地方には連綿と受け継がれている文化や慣わしがあります。子どもの世代や移住してくる人の中には『面倒だ』『受け入れられない』と思ってしまうものもあるかと思いますし、それは当然のことで強制しようとは思いません。ただ、御所之入地区は、文化を継承していくことに価値があると考える方が多い地区です。大がかりな祭りの準備に、当たり前のこととしてたくさんの人が集まる、これが御所之入地区なのです。この価値観が共感できる人たちがいる限り、来年もその先も続けられたらいいなと私は願っています」

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飯田安彦さん

私、イイズナマスオは飯綱町に住んで6年ですが、このような大がかりなお祭りの準備が行われている地区があることを初めて知りました。100年以上続いている伝統的な地域文化や歴史を知ることができ、とても価値あるものを見せていただきました。ただの祭りの準備と言ってしまえばそれまでですが、「大変」だけれども続ける価値がある、最近は忘れがちな絆や連帯感を忘れないための、地域社会にとって意味深い行事だなと思いました。
来年のお祭りでも「門灯篭づくり」と「大幟の竿立て」が行われる予定です。遠目からなら見学してもいいとのこと。地域に残る「一見の価値あり」な行事なので、興味があるかたはぜひ見に行ってください!

※来年の開催日はまだ決まっていないとのことです。わかり次第記事を更新したいと思います。
御所之入地区 集落創生再生事業ホームページ

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