「飯綱ハーバルブリーズ」の作業拠点となっている、三上明美さんのご自宅の庭に、スタッフの皆さんが集まってくれました。皆さんそれぞれが得意なことを生かし、協力し合って運営しています。こちらで作られている美味しいハーブについては、「飯綱ハーバルブリーズ[前編]」をぜひご覧ください。
(後列左から)ロングさん、青木さん(前列左から)ヒルさん、三上さん、梨本さん
写真前列中央が、代表を務める三上明美さんです。三上さんは、元カリスマドッグトレーナー。「犬のトレーニングでは、犬と話をすることが大事なんです」と語る三上さんはメンバーに対しても丁寧な対話を心がけています。「あなたの今一番大事なものはなに?って聞くと、子育てだったり介護だったり、皆さん大事なものがあるんです。あれもこれも同時にやるのは大変。私は時間があるから、今は私が主だった作業は進めておくので、メンバーそれぞれの生活に合わせて仕事に参加できる体制をつくっています。でも、3年後には私は退いて、皆さんに任せられるようにしたいと思っています」(三上さん)
「三上さんは、みんなのいい部分を上手に引き出してくれるんです」。こう話してくれたのはハーブコーディネーターの梨本薫さん(41)。4年前に飯綱町に移住し、祖父の介護の傍ら6月からハーバルブリーズに参加しています。もともとハーブに興味があり、移住後は自分でハーブを育てたり、お茶にして飲んだりしていたという、ハーブが大好きな梨本さん。今はハーブコーディアルを商品化するための試作に力を入れているそうです。茶葉は、マロウやカモミールなど単種類ごとの販売のほか、さまざまな種類をブレンドした商品も開発しています。これらは主に三上さんと梨本さんが2人で試行錯誤しているそうです。
土づくりや栽培を中心に担当しているのは、青木しづかさん(46)です。農家だった祖父、家庭菜園をしていた父の影響で、以前から土いじりが好きだったそう。夫のロング・クリストファーさん(43)はアメリカのハワイ出身。ご夫婦は、ハワイで同じ大学に通っていたのが縁で結婚したそうです。ロングさんはメンバー唯一の男性で、縁の下の力持ち。畑の草刈りなど、力仕事を引き受けてくれています。畑に置いてあるベンチはロングさんの作品なのだとか。 「バニラのようなホーリーバジルの香りが好きです。お茶だけじゃなく、ハーブで健康なライフスタイルを提供できるといいね。飯綱町が、ハーブとさまざまな手作りのもので有名になったらうれしいな」(ロングさん)。
雑草に黒いシートを被せて発酵させ雑草たい肥として活用
ヒル・恵里奈さん(41)は、デザインを担当。ハーブティーのパッケージデザインやリーフレットを制作しています。オーストラリアから移住し、青木さんと同じく二児の母としても奮闘中です。飯綱ハーバルブリーズとの出会いは、いいづなリゾートスキー場に子どもたちと遊びに行ったとき。スキー場のキッズコーナーで働いていた三上さんに、一緒にやらない?とスカウトされたのだとか。
ボタニカルのおしゃれなラベルはヒルさんのデザイン
「パーマカルチャーに興味があって、土いじりも大好きです。パソコン作業でイライラしたときには土に触れると心が落ち着きます。飯綱ハーバルブリーズは心豊かになれる場所です。オーストラリアは多民族国家なので、ディルやバジルなどのハーブ、スパイスの使い方をたくさん教わりました」とヒルさん。来年には、畑の真ん中に子どもたちが遊べるように滑り台を設置しようという案もあるのだとか。
取材したのは9月下旬ですが、飯綱東高原は涼しいためナスタチウムが元気に咲いていました
飯綱ハーバルブリーズの皆さんが一様に口にするキーワードは、「環境」と「健康」、そして「こだわり」。ミントコーディアルのために果汁を絞った有機レモンの皮は、ロングさんが塩とバジルを混ぜたレモンスパイス調味料にしたのだそう。
「コロナ禍を経て、持続して誰でも実践できる農法が大事だと改めて思いました。飯綱ハーバルブリーズでは農薬、除草剤、化学肥料不使用で、牛糞と鶏糞を使って、なるべく地球にやさしい畑づくりを目指しています」(青木さん)
「ハーブの形をくずさず、細胞をくずさないようにゆっくり乾燥させる手法も私たちのこだわりです」(梨本さん)
メンバーたちの、ハーブに対するスタンスや働き方は、これからの時代に調和しています。
飯縄山から爽やかな風が吹きおろします。ハーブ園で作業をしている大人たちの横で、小さな子どもが走り回って遊んでいます。「こういう、子どもも一緒にいられるような風景が理想なの」と三上さん。梨本さんは、「みんな、何歳になってもトライする三上さんに引き寄せられ、ブレンドされ、それぞれが持っている良さを発揮しているように感じます」と微笑みます。「3年後には皆を引っ張っていく立場から、陰ながら支える立場になる」と宣言している三上さんの目論見は、どうなることでしょう。飯綱ハーバルブリーズの皆さんは、気負わず自然体で楽しんでいる姿がとても美しく見えました。