トップライターはっさく堂さん横手地区の高台の畑でハーブを育てる「ハーブタイム」

横手地区の高台の畑でハーブを育てる「ハーブタイム」

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「ハーブタイム」メンバー。左上から時計回りに、さゆりさん、奈美子さん、律子さん、徳子さん、英子さん

7月のとある日。
初夏でも真夏日を記録することが多くなったここ数年ですが、高台に位置し、里を見渡すことができる横手地区にはこの日も涼しい風が吹き抜けていました。
日が少し傾いた午後、横手直売所「四季菜」近くの畑に、女性たちが集まってきます。
畑といってもナスやキュウリ、トマトなどの野菜は見当たらず、さまざまな種類のハーブや草花がざっくりとした区画に植えられています。ラベンダーの淡い紫がくすんだ緑の葉の間で揺れ、ナチュラルガーデンのような雰囲気です。
ドライフラワーにするためのレディースマントルを摘んだり、ルバーブを収穫したり、シーズンが終わって枯れたハーブを刈ったり……。作業着に身を包んだ女性たちはおしゃべりを楽しみながらも、手際よく畑仕事をこなします。手を動かすたびにハーブの芳香があたりに漂い、その一帯はさらなる清涼感に包み込まれました。

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日中は日差しが強いですが、夕方になると涼しい風が吹きます

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ミントを摘む徳子さん。天然の虫よけにもなります

「このハーブ畑は、横手地区のメンバーで結成したグループ『ハーブタイム』で手入れしています。作業は長くて夕方の2時間くらいかな。全員主婦なので、夕飯の支度をしなくちゃいけないから」
そう話すのは、ハーブタイムのメンバーである律子さん。
「この畑を始めた頃は、子どもたちが小さくて日中も今ほど暑くなかったから、子どもを連れてきて昼に作業したりもしてたよね」
律子さんがそう言うと、一緒に草を刈っていた徳子さんが手を止めて、「そうだったねぇ。うちも農家で、日中はリンゴの手伝いと孫の子守があるから、今はこの時間にやることが多いね」
と、笑顔で答えてくれました。

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無農薬の畑なので、カエルやミツバチなど生態系が豊かです

「ハーブタイム」が結成されたのは、今から25年ほど前、横手地区に直売所「四季菜」ができたのと同じタイミングとのこと。当時、直売所の周りは荒れ地だったそうですが、野菜畑にしようと整備されたのがきっかけでした。
「でもね、私たちはまだ嫁に来たばかりで、野菜なんてとてもつくれなかった。だから野菜は私たちの義母世代が担当することにして、私たち当時の若妻世代は、宿根草のハーブ畑をつくることにしたんです」

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おしゃべりをはさみながらも、手際よく作業していきます

比較的育てやすいラベンダーから初めて、マリーゴールドやナスタチウム、ラムズイヤーなど、少しずつ種類を増やしました。畑の隅の野バラの手入れをしたら立派な低木に育ち、秋になるとバラの実が収穫できるようになったそう。花と実は乾燥させて、ドライフラワーの材料として販売したり、自分たちでもリースをつくったりしていた時代もあったそうです。
「直売所にはずっとハーブ製品を出していたんだけど、昔はイベントに呼んでもらって、ドライのハーブを売ったりしたことも。みんなで集まって、子どもを見ながらラベンダースティックをつくったりしたよね。たくさんおしゃべりしながら」(律子さん)
「そうだね、冬もみんなで集まって、お茶を飲みながらリースつくったね。仕事ってほどの稼ぎにはならなかったけど、集まって手作業するのが本当に楽しかったよね」(徳子さん)

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ハーブ畑のラベンダーとラムズイヤー。風が吹くと、芳香がふわりと漂います

ハーブ畑は無農薬なので、草取りなどに手がかかります。子どもが成長したり、メンバーが就職したりするにつれて、育てている花も変化しました。
「リースの材料になるような花は、もうつくれなくなっちゃった。今は各自収穫して、家でドライにしてハンドメイドの材料として直売所に出したり、そのまま飾ったりが多いかな。料理に使うルッコラとかチャイブとかは、寒さに耐えられないからつくれないんです」
カモミールやレモンバームなどは耐寒性がありますが、ハーブティなどの商品にするにはとにかく量が必要です。「ハーブティは、作業しながら飲んだりはするけれど、商品化は難しいですね。今はとりあえず、畑の維持管理が最優先。ここを草ボーボーにしないように、毎日草との戦いです(笑)」(律子さん)

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ラベンダースティックやリーズの材料は、「横手直売所 四季菜」で販売中

「メンバーは5人いて、みんな横手のご近所さんなんだけど、家と職場の往復で、あまり顔を合わせる機会って実はあまりないんです。でもここに来れば、みんなに会えていろんな話ができるし、息抜きにもなるし。毎年畑仕事を始める時期になると、みんなと顔を合わせることができて、『今年も同じように春を迎えられたね』って嬉しくなるの」(律子さん)
コロナ禍前は、ハーブを売り上げた収入は、メンバーみんなで食事や旅行に当てていたそう。ここ数年は感染症予防のための行動制限などもあり、畑を維持するだけで精一杯でしたが、これからは以前と同じように活動を続けていきたいと、律子さんは話します。
「細く長くでいいんです。みんなが集まれる場所を、これからも残していきたいです」

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