りんごの町、飯綱町のハンバーガーには、やっぱりりんごがはさんであるんです。
つなぎを入れず合いびき肉の肉っぽさを残したパテと、シャリッと歯ごたえの残るりんご、天然酵母で作ったバンズに手作りのマヨネーズ。パテを焼いたあとの、うまみの残るフライパンに、りんごのしぼり汁とみりん、しょうゆを煮詰めて作るソース。この「りんごの手作りハンバーガー」、噛み応えのバランスがとれていて、りんごの味が主張しているにもかかわらず、主役はきっちりお肉で大満足。「とってもおいしいです!」と大きな声で、自信を持ってお伝えしたい。
このハンバーガーのレシピは、2022年1月に町内に全戸配布された「飯綱町のおいしいりんごレシピBooklet」に掲載されています。ほかにも、飯綱町のりんごで作るお料理とお菓子、全13品のレシピが写真付きで紹介されていて、こんなかわいらしいレシピ本が無料でもらえるなんて、さすがりんごの町だなあと感動していました。
コロナ禍も落ち着いてきた2023年1月23日、このレシピ本に載っているりんごを使った5品を実際に作ってみるお料理教室が開かれると知り、参加してきました。「りんごの菓子・料理plus野菜塾栽培野菜料理教室」(主催:飯綱町産業観光課)と漢字がずらりと並ぶタイトルがついたお料理教室ですが、内容が特別豪華なことにびっくり。なんと、飯綱町が2021年度から取り組む農業塾「ゼロから始める野菜塾」の方が育てた、有機質肥料栽培の伝統野菜が材料に使われるのです。
会場となった、りんごパークセンター調理室のドアを開けると、漂ってくるのはりんごが焼ける甘い香り。定員15名のところ、希望者が多く18名に拡大して行われました。集まっていた方に参加動機をうかがうと、中野市在住で飯綱町にお勤めという男性は野菜塾のメンバーでもあり「りんご農家もやっているから、お客さんに「こういう風に食べると美味しいよ」って説明できるようになりたいと思って参加した」と話してくださいました。町内在住の女性は、「りんごは毎日生で食べています。ちょっとレンジでチンしてヨーグルトにあえるくらいはするけれど、料理に使ったことはないから、手軽なレシピを覚えて帰りたいなと思って」と意気込み十分。お料理教室は、講師の先生がレシピの紹介と作り方のポイントを話したあと、3つの調理台に6人ずつのグループに分かれて調理する形式で進みました。
●「りんごのクラフティー」
くし形にカットしたりんごを、オーブンペーパーを敷いたフライパンに並べて生地を流し込み、ふたをして低温でじっくり30分ほど焼いたら出来上がり。ほどよい甘さの、固めのプリンのようなお菓子です。熱いうちに食べてもいいし、冷やせばケーキのようにきれいにカットできます。私は冷やしたときの、ずっしり落ち着いた食感が好きです。
「生地を混ぜる順番が大事。ダマにならないように小麦粉を入れてから牛乳を入れてくださいね」と作り方のポイントを説明するのは、天然酵母パンやお弁当を製造販売する「れうりや」の浜崎愛さん。本日の講師のひとりで、レシピ提供もしています。「りんごの町ならではの、ちょっと変わったレシピが好評です。お料理教室も、こんなにいっぱい参加してくれてうれしい」と感激しきりといった様子。
●「鶏肉とりんごの蜂蜜しょう油煮」
タイトル通りのお料理ですが、シナノゴールドという品種のりんごを使っているのがミソです。長野県生まれの黄色いりんごで、ほどよい酸味があり、果肉が固いので煮崩れません。こちらと冒頭のハンバーガーのレシピを考案したのは、飯綱町の食と農を次世代に継承する活動をしている「だんどりの会」の皆さん。「ただ郷土料理を作るんじゃなくて、むかしの人の❝想い❞を伝えていく」というだんどりの会の活動は奥深く、とても一言ではご紹介できません。
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だんどりの会から参加している瀧澤治子さんによると、特に若い男性は、肉料理にりんごが入っているものが苦手な人が多いそう。「りんごを焼くことで、煮るのとは違って香ばしい味に変わるから食べやすいみたい。男の人も食べてくれます」。
●「白菜とりんごの浅漬け」
「ゼロから始める野菜塾」の方が育てた「野崎白菜二号」を薄切りにしたりんごと一緒に浅漬けにしたものです。この白菜は、葉肉に厚みがあり柔らかくておいしい品種です。野菜塾では市販の肥料や農薬は使わず、ぼかし肥料だけで育てています。見せてもらったぼかしは、甘酸っぱくて香ばしい香りがしました。
「私たちは、信州大学工学部の大井美知男特任教授に伝統野菜の育て方を分かりやすく教えていただいています。白菜って呼んでいたのが『野崎がね』って品種名で呼ぶようになると、野菜について少し分かってきたかなっていう感じがしています」と話してくれたのは野菜塾に参加している上野千野子さん。
「今日はうちのくるみを持ってきました。りんごとくるみは合うのよ」。だんどりの会の黒栁博子さんが用意してくださったくるみを浅漬けに振りかけて完成です。
●「りんごのキャラメルソテー」
つくり方の実演をするのは浜崎さんです。強めの火で、フライパンをゆすりながらキャラメリゼするのがポイントだそうです。フジ、シナノゴールド、グラニースミスの赤黄青がきれい。
「りんごってフルーツだと思っていたけど、野菜だと思って使えば料理の幅が広がりますね。加熱しているから量もいっぱい食べられます」という参加者の声に、なるほどと納得です。
今回の料理教室を企画したのは、飯綱町集落支援員、りんごの町づくり担当の藤沢充子さん。「このりんご菓子・料理に使ってもらうりんごは、生で食べて甘いおいしいりんごではなくても、ぜんぜん構わないです。ちなみにりんごバーガーのパンは厚めのトーストや市販のバンズでもおいしくできますよ」。レシピ本をまとめたのも藤沢さんです。「飯綱町のりんご栽培の特徴は、栽培している品種の多さです。2月には地元生産者向けに「いいづなリンゴフォーラム」が開かれるなど、りんごの町としてますます盛り上がるように活動しています。町民の皆さんには、さまざまなレシピでりんごを食べて、応援してもらえたらうれしいです」とりんごへの熱い想いを話してくれました。
町民全体でりんごの町ならではのアイデアレシピを楽しみ、さまざまなりんごの魅力を発信していくのもおもしろいですね。「日本一のりんごの町」を目指して、飯綱町はこれからも盛り上がります。