こんにちは。町民ライターのこまつはるなです。
飯綱町に初のシェアハウスが登場したと聞き、
前編では、あの名番組風に、「こまつはるなの建もの探訪」として、建物に潜入取材した様子を紹介しましたが、
後編は、どんないきさつで飯綱町にシェアハウスが作られ、どういった理由で佐々木さんが管理人になったのかをお聞きしました。
佐々木彩花さんは飯綱町出身で、新潟県長岡にある美術系大学に通っていました。しかし大学2年生だった昨年4月、新型コロナウイルスのために大学がオンライン授業になってしまったのです。オンライン授業が好きになれなかったり、大学のアトリエが使えなかったりと不自由が大きかったために、休学を決意。故郷の飯綱町に帰って、自分の作品づくりや、カフェを開く夢を叶えたいと考えました。
そこで、地元企業であるツチクラ住建の知り合いに、いい物件がないかと聞いたところ、ちょうど同じタイミングで、ツチクラ住建が古い民家を購入して、その物件をシェアハウスにできないかと目論んでいたところだったそうです。
そこで、「だったらシェアハウスの管理人をやってみない?」
と提案されたのだとか。
また、千葉県の親子が飯綱町でシェアハウスを探しているという偶然も重なりました。
①猫が飼えて②古民家であることが、住む場所の希望であったため、めったにない「猫OK物件」ということで、二つ返事で管理人を引き受けたという佐々木さん。そこから話はトントン拍子に進んでいきました。ご縁があると、タイミングって重なるものなんですね。
実は佐々木さん、大学生活を送っていた長岡ではシェアハウスに住んでいたのです。ですから、共同生活であるシェアハウスと聞いても、何の不安もなく住むことを決めてしまったのだといいます。
このやりとりがあったのは2020年10月。なんと3か月後の2021年1月には、建物のリノベーション工事が始まりました。大学で建築デザインを学んでいた佐々木さんも、インテリアコーディネーターとしてセンスを生かし、古家にあった家具やガラスの引き戸などを活用し、古民家の雰囲気を残したステキなシェアハウスづくりに貢献しました。
そして工事もまだ終わっていないなか、3月には、佐々木さんと千葉から来た親子がバタバタと入居。
シェアハウスの名前は、飯綱の特産物にちなんで「Ringo荘(りんごそう)」と名付けました。
千葉からの親子もシェアハウス経験があったので、新しい暮らしはスムーズに始まったと佐々木さん。4月後半には新しい住人が1名加わり、さらに現在工事中(!)の新しい部屋も、入居者が決まっているのだとか。
なんとRingo荘にはゲストルームも設けられていて、住人の友達や家族が泊まりたいときは利用できるそう。シェアハウス内にゲストルームがあるなんていいアイデアですね。
住人は皆さん仲が良く、料理をするのが好きな人も多いことから、一緒にご飯を食べたり映画を見たり、居間では楽しい団らんの時間を過ごしているそう。
ここで突然、素朴な質問コーナー!
実は筆者こまつはるなも以前、ロンドン在住時に10年近くシェアハウスで暮らしてをしていたのです。ロンドンではシェアハウスは非常に一般的。その経験からも、果たして飯綱町初のシェアハウスはどんなルールや決まりがあるのか、困ることはないのか、気になることがいっぱいです。
Q. お風呂は1つしかないですよね。使いたいときに使えなくて「キー!」ってなりませんか?
佐々木さん「それが不思議なほど、みんながお風呂を使う時間がかぶらないんですよね」
うらやましい限りです。急いでいるときほど使用中で、こまつは何度「キー!」ってなったことか。
Q. 料理好きな方ばかりですけど、キッチン戦争は勃発しませんか?
佐々木さん「前からあったガスコンロに加えて、IHのクッキングヒーターも作ってもらったので、煮炊きができるところは2つあります。そして冷蔵庫も2つ。人が増えたら冷蔵庫はもう1つ必要ですね。キッチン用具は共有しているので、それぞれの持ち物ではありますが、勝手に使ってもいいことになってます」
Q. さすがに炊飯器は1つですよね? 今すぐごはんを炊きたいときとか、困りませんか?
佐々木「炊飯器は2つあります。私はごはんは土鍋で炊くので大丈夫です」
そういえば見渡してみると、調理用具が充実していますね。これならキッチンの場所や器具の取り合いにはならなそう。昔ながらの広いキッチンだからこそ、このゆとりが可能なんですね。
Q. 公共料金やトイレットペーパーなどの日用品はどうしているのですか?
「家賃とは別に、わたしが月ごとに共益費を集めています。そこから電気代やガス代を払ったり、共有の日用品を購入したりしています。冬の暖房費がいくらになるかわからないので、また細かく調整していきたいと思います」
しっかりしていますね。わたしがロンドンにいたときは、このシステムがグダグダになっているところも多く、住人同士のケンカのタネになることもしばしばでした。
Q. これはなんですか?
「乾燥機を使用した回数を書き込んでいます。料金は1回65円です」
確かに乾燥機は電気の使用量が大きいですもんね。こういうところで不平等感をなくして、もめる原因をなくしているのは、いいアイディア!
Q. このプレートはなんですか?
「せっかくならと部屋ごとに名前をつけようと思い、木のプレートにレーザーで名前を彫ってみました。部屋の名前はRingo荘にあやかってリンゴの品種の名前なんですよ。各々の部屋の住人がつけました」
何の品種の名前にするかで、印象が変わりますね。妙にキラキラネームな部屋名にこだわりを感じます。
Q. ご近所さんからのシェアハウスへの反応はどうでしょうか?
「まず区長さんにご挨拶に行き、地元の行事などにも積極的に関わりたいことを伝えました。シェアハウスという新しい住居の形ですので、ご近所さんからの理解は必要不可欠です。今度、コロナの状況を見ながら見学会を開きたいと思ってます」
さすが管理人の佐々木さん、お若いのにしっかりしていて、シェアハウス師匠と呼びたいくらいです。
最後に、今後のシェアハウスや、佐々木さんの夢について聞きました。
「飯綱町に興味を持ってくれた人が、お試し移住ができる場所にしたいんです」。
佐々木さんは現在、家の持ち主であるツチクラ住建に所属して働きながら、シェアハウスを飯綱町外に広めていく活動を始めているそうです。
「やはり、移住というと家がなかなか見つからなかったりと、ハードルが上がってしまうんですね。まずは気軽にゲストルームに滞在して情報交換したり、実際にシェアハウスに住んで飯綱の暮らしを体験してみたりできたらいいなと思って。飯綱町のことを知って、知り合いができたりすれば、移住もスムーズにいくと思うんです。移住者が増えれば、町にもっと活気が出るんじゃないかなって思います」
Ringo荘のコンセプトを見せてくれながら、「“まちとひとをつなげるきっかけとなる拠点に” をコンセプトに発信していくことで、賛同してくれる人たちが飯綱に集まってくる。そんな流れを作ることを目標としています」と佐々木さん。
カフェを開く夢も実現に向かっています。
実際にカフェがオープンしたら、地元の人と移住を考えている人などが交流できる場所になりそうですね。
最近は、日本でもシェアハウスが増えてきましたね。Ringo荘を取材して、シェアハウスのイメージが変わってきているなと感じました。
一般的には、家賃が安いからとか、ほかの居住者とのつながりがほしいから、といった理由が多いイメージですが、Ringo荘に住む人たちは、飯綱の未来について考えていたり、子どもを大勢の中で育てたいからだったりと、発想が本当に新しいなと思いました。
これから飯綱町にシェアハウスが増えていったらおもしろいことが起こるかもしれませんね。これからが楽しみです。