トップライターKAORUさんただの料理教室ではありません! 「食の匠」育成講座で郷土料理の奥深さを知る

ただの料理教室ではありません! 「食の匠」育成講座で郷土料理の奥深さを知る

日本四大そば処のひとつとして有名な信州には、おいしいおそば屋さんがたくさんあります。が、自分で作るおそばはまた格別です。

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2月21日、りんごパークセンターで飯綱町役場産業観光課が主催する「食の匠」育成講座が開催されました。昨年6月から全9回にわたって飯綱町の食べごと文化(※1)を学ぶ講座の、今日は「郷土料理を学ぶ」パートⅡのそば打ち実習です。
講師は、飯綱町の食べごと文化をどこまでも探求するレジェンド集団、だんどりの会(※2)の皆さんです。
参加者は3班に分かれていざ実習開始。作るのは「二八そば」なので小麦粉を20%、そば粉を80%の割合で混ぜていきます。

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粉に水を少しずつ加えながら、8の字を描くように混ぜ、そぼろ状にしていきます。「水分がいい具合に混ざるとだんだん小石大の塊になってくるのよ」と教えてくれたのは、講師の丸山秀子さん(74)。腰を痛める前は、しょっちゅうそば打ちをしていたそうです。小石大になったそば粉はひとつにまとめ、体重をかけてこねます。粘土のようなそば粉の生地は、パン生地よりずっと固くて力が必要です。「よくこねると、ツヤが出てくるでしょ」と、講師の佐藤アツ子さん(79)。こね終えた生地の空気を抜きながら円錐形に整えていきます。この工程を「へそ出し」というのだそうです。細い部分を真下にして麺台に押し付け、丸くなるようにつぶします。

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ある程度薄くなるまで、手のひらのつけ根で押し延ばします。

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ここまで延びたら次は、めん棒の出番です。生地を棒に巻き付けて、引くときに延ばすと教わったのですが、力のかけ方が難しい。受講生も参加して、皆で少しずつ薄くしていきました。

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「あら、そばがカゼひいちゃった」と丸山さん。カゼをひくというのは、延ばしているそば生地の端にヒビが入ってしまったことを指すのだそうです。
 
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十分に延ばしたら、生地を8つ折りにして切っていきます。そば切り包丁は大きくて、太さをそろえるのが大変なのでみんな集中しています。そば切り包丁が足りなくなったと話が上がると、「家から持ってくればよかったわね」とだんどりの会の方々。皆さんの家に、そば切り包丁があるということに驚きました。

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切り終えたそばがこちら。「そば打ち3年、こね8年」のはじめの一歩にしては、なかなかの出来ではないでしょうか。
 
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打ちたてのそばを、すぐにたっぷりのお湯で茹でます。

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出来上がりました。いよいよ実食です。ツルンとして喉ごし最高。たまに混ざっている極太のそばの食感も楽しくておいしいねと笑顔ですすります。
堪能していた受講生の島田悠さん(36)は、「普段、家で子どもたちにそばを出しても、私の口に入る頃にはのびてしまっているんです。打ちたてのおいしいおそばが食べられて幸せです」とうれしそう。
講師のひとり、高橋信子さん(70)も、以前は自宅でそばの栽培からそば打ちまで手がけていたそうです。
「昔は、うちと丸山さん、あと近所の数軒で一緒にそばを作っていたの。種をまいて刈り取って、製粉してそれを分けてね。各家庭でそば打ちをするけど、年に一度は組(三水地区の自治体の最小単位)の皆にふるまって食べたのよ」(高橋さん)
「男の人たちが大釜でそばを茹でるための湯を沸かしてくれてね。お酒が好きな人は持ち寄りで、私たちはひたすらそばを打って、大勢でわいわい楽しかったね」(丸山さん)

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明治時代、飯綱町では一人当たり年間7升5合もそばを食べていたという記録があるそうです。今よりもっとずっと身近な食べ物だったんですね。家庭にそば切り包丁があるのも納得です。

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そばの次は、そばがきを作ります。
そば粉と倍量の水をフライパンである程度混ぜてから火にかけ、さらに混ぜていくのですが、ポイントは菜箸を数本束にすること。だんだん固まって重たくなってくるので力がいりますが、根気よく混ぜます。

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火が通ったらそばがきの完成です。こちらもそばの風味がしっかり楽しめます。
同じ粉、同じ器具で作っても、混ぜる人によって味が違いました。始めに食べたものは、少しザラっとするけれどそばの味が際立っていたし、次に食べたものは柔らかくなめらかな仕上がりで、どちらもおいしかったです。
そば打ちはハードルが高いけれど、そばがきは家庭でも気軽に作れそう。余ったら丸めてお団子にしてもいいそうです。
そばの歴史から、その時代の暮らしまで、話を聞きながら行う実習は、ただのお料理教室ではない奥深さがあります。「食の匠」講座は来年も開講される見込みです。興味がある方は、ぜひ参加してみてください。
たっぷり食べて、学んだお土産にそば湯の残りをいただいてきました。

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温めたそば湯で、そば湯割り焼酎にしてみました!とろっとまろやかで飲みやすく、身体が温まって最高です。おそば尽くしの一日となりました。

※1 「食べごと」とは、食事の仕方、料理をすることだけでなく、食のまわりにある暮らしのすべてを指す言葉。
※2  だんどりの会については、以下の関連記事をご覧ください。

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