生活で必要なものが揃うコンビニの経営を通じ、
町民の生活や健康を下支えしたい。
開店して22年目を迎える国道18号線沿いのセブンイレブン三水普光寺店。その正社員として18年間働き、2年前に経営を譲り受けた吉澤裕昭さん。高齢化と小売業の閉店が進み、いわゆる“買い物弱者”が増えた町内で配達サービスにも力を入れ、町民の暮らしを支えている。
配達サービスで地域支援
「飯綱町では小売店が少なくなり、スーパーも1軒のみ。そうしたなかで、コンビニエンスストアの果たすべき役割は大きいと思っています。お弁当やドリンク、雑貨の販売、そして公共料金の支払いやATMの利用など、生活で必要なものがコンビニではたいてい揃えられます」
こう話す吉澤さんは、セブンイレブン三水普光寺店で長年店長を務め、2015年に前オーナーから経営を譲り受けた。そして、店舗を改装して拡大。店まで足を運べない人のために配達サービスを開始した。
「一番注文が多いのが、管理栄養士によりカロリーやタンパク質、野菜量、塩分量などのバランスが取れた日替わりのお弁当やおかずです。一人暮らしの高齢男性からの注文が多く、セブンイレブンの規定では店舗から3km圏内が配達の対象ですが、うちでは町内全域に配達できるよう独自に範囲を広げ、365日休まず届けています」
そうした努力により、配達件数は全国のセブンイレブン2万店舗中、最高で10位にランクインした。
「高齢男性だけでなく、女性には配達してほしい商品をカタログから選ぶ楽しさも提供できていると感じます。それに、食事面の充実は生活において大事なこと。そこから町民の生活や健康、幸せを下支えできる存在でありたいですね」
地域の雇用創出も重視
また、経営面では地域の雇用創出も考え、地元の人材採用を基本方針としている吉澤さん。
「地元の人に働いてもらうと、お客さんと世間話ができます。そうした関係づくりで、コンビニはもっとお客さんに近く、居心地がいい存在になると思っています」
そのために、従業員にはさまざまな教育の機会をつくり、週1回ミーティングを行うほか、本部主催の接客講習にも参加してもらうことで、働く意義やコンビニの価値を理解してもらっているという。
「目の前の業務をこなすだけではいい仕事はできません。なぜそうするのか。どうすればもっと喜んでもらえるか。そして、町のためには何ができるかを考えてもらっています。オーナーになって、こうしたより高いレベルの接客や宅配サービスなどやりたかったことができるようになり、本当によかったです」
「近くて便利」なコンビニが、今や地域社会インフラを支える時代。そんな地域活性化の現場といえるコンビニの経営を通じ、飯綱町のリアルを痛感する吉澤さんは、地域の未来を確かな目で見据えている。
PROFILE
飯綱町東黒川出身、夏川在住。1973年生まれ。旧姓・仲俣。信州大学教育学部中退。1997年、前年にオープンしたセブンイレブン三水普光寺店に正社員として就職。その後、店長になり、2015年5月、店舗拡大と配達サービス開始を目指し、前オーナーに希望して経営を譲受。2016年より飯綱町西部の「高岡地区活性化委員会」のメンバーも務める。