米や野菜の無農薬栽培にこだわり、
人も空気もいいこの町に根を張って生きていきたい。
国内外にストレッチ専門店「Dr.stretch」を110店舗以上展開する株式会社フュービックの農業部門「フュービックファーム」で米作りを担当する八重樫聡さん。飯綱町で農薬・化学肥料を一切使わない農業に取り組んでいる。
無農薬の米作りを目指し移住
東京都八王子市で生まれ育ち、サラリーマンを経て岩手県の米農家で働いた後は、家庭菜園をしつつ子育てに専念していた八重樫さん。もともと無農薬の農業に興味をもってはいたが、ある日、高校時代の同級生でストレッチ専門店を営む株式会社フュービックの社長・黒川将大さんから「健康に気遣うお客様に安心安全な食材を提供し、世界に広めたい」と相談を持ちかけられたことで、岩手県で無農薬の野菜作りを始めた。そして、翌年は「主食を提供したい」という社長の考えから米作りを開始。さらに3年目には、東京からも近く、米栽培にも適している長野県に事業の拠点を移そうと決め、県内のさまざまな行政や農業関係機関に電話をして移住地を相談した。そのなかで、JAながの飯綱支所から東柏原地区にある空き家付きの休耕地を紹介されたことで、2013年に移住。無農薬・肥料不使用の米栽培を行い、高齢化により農業の継続が難しくなった近隣住民から田を譲り受けることで、今では県外出身の4人の仲間とともに、町内外で10町歩もの農地で米栽培を行っている。
環境も人もいい町の暮らし
「無農薬栽培は、現状ではうまくいっていると言いづらい状況ではありますが、雑草の発生さえ押さえられればいけるという手応えは感じています。収量は落ちますが、無農薬で肥料も控えたほうが食味はよくなると思っています」
こう話す八重樫さん。とはいえ、自ら作物を育てて食べる喜びを味わえる農業には面白さも感じている。また、町での暮らしもほどよく楽しんでいる。
「東柏原は飯綱町のなかでも奥地にあるので、人生で初めてカーブでの車の運転が苦痛になりましたが(笑)、空気がいいのが好きですね。それに、飯綱町は岩手に比べ昼夜の寒暖差が大きく、りんごなどの農作物もおいしい。いい人も多く、よそ者にも親切です。特に近藤副町長のファンですね(笑)。家も借家をやめて2年前に購入したし、これからもずっとここで生きていこうと思っています」
いずれは地域の荒れ地を開墾し、個人としても米や野菜を栽培したいと話す八重樫さん。農業にはさまざまな形があるが、そのどれにも正解はないなかで、無理をせず自分らしいスタイルを貫く姿勢は、結果的に地域の農業に多様性を生み、豊かな社会の形成につながると感じた。
PROFILE
1971年生まれ、東京都八王子市出身。飯綱町東柏原在住。中古車の査定会社での勤務を経て岩手県に移住。稲作農業に2年従事後は、3年間、長男の育児に専念。2011年、高校の同級生だった株式会社フュービックの黒川将大社長に誘われ、同社に入社。農業部門「フュービックファーム」で野菜や米の無農薬栽培を開始。2013年、飯綱町に移住。