おいしいパン作りを続けていくことで、
飯綱町の活性化に貢献できたらうれしいです。
偶然、雑誌で目にした「しぜんこうぼのぱんや きなり」に興味をもち、初めて天然酵母パンを食べて衝撃を受けた松澤秀二さん。その後、同店のスタッフとなって修業を積み、店長に就任。2016年末に閉店を迎えたことから、自分の店「継」を立ち上げた。
衝撃を受けた天然酵母パン
飯綱町の人気天然酵母パン店として名を馳せ、辺鄙な場所ながら遠方からもファンが訪れていた「きなり」。昨年末に惜しまれつつ閉店したが、オーナー夫妻のもとで店長を務めていたのが松澤さんだ。
「『きなり』との出合いは雑誌で見かけたことでした。実はそれまで天然酵母パンを食べたことがなかったのですが、今まで食べたどのパンとも違ってどっしりと食べ応えがあり、腹もちもしておいしい。こんなパンがあるんだと衝撃を受けました」
それを機に、週末は県内外のパン屋巡りをしながら「きなり」に通うように。そして、ちょうど転職を考えていたことから店内の「スタッフ募集」の張り紙に巡り合わせを感じ、素人ながら門を叩いたという。
「実はオーナー夫妻は海外移住を計画していたため、僕は移住後に営業を引き継げるよう、すぐにこねて焼くというパン作りで一番重要な技術を教えてもらえました。通常は何年も修業し、やっと学べるのに、本当にありがたいことでした。それに、僕は他店での修業経験がなくまっさらな状態で、素直で吸収が早いのもよかったようです」
こうして、勤務2年ほどで営業は松澤さんらスタッフに任された。
大事なのは継承と継続
紆余曲折がありながらも4年間、店を守った松澤さんだったが、昨年末、オーナーの提案で閉店することに。それでも松澤さんは「愛着ある『きなり』のスタイルを続けたい」と、自分の店を開く決意をした。
「パン屋をやりたいというより、このパンを作り続けたい思いでした。そこで、お客さんに店を始める連絡をしたら『パンは変わっていないですか』と多くの人から聞かれました。やはり、このパンが大事なんです」
そして今年6月、須坂市の実家の一角で立ち上げた店舗の名前は「継」。「継承」と「継続」の意味を込めた。現在はイベント出店を主に、小売店にもパンを卸している。
「やはり飯綱町には思い入れがあり、今も直売所『むーちゃん』や第一スーパーに卸しています。これからも町の活性化のために、パンを通じた貢献ができたらうれしいですね」
継続は力なり。“継ぐこと”から生まれるつながりは、きっと松澤さんの糧になるだろう。
PROFILE
須坂市出身、在住。1983年生まれ。材木の卸問屋、鉄工所の勤務を経て、2011年「しぜんこうぼのぱんや きなり」に就職。パン作りの修業を重ね、2013年、オーナー夫妻の海外移住を機に中心スタッフに。2014年末に閉店の危機を迎えたが、2015年4月、店長となって再開。2016年末、完全に閉店。2017年、自宅一角に「継」オープン。