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IIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLE

052 ファームトヤ 外谷淳弥さん

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地域を守るためにできることから協力しつつ、
町全体で発信力を高めていきたい。

4代続くりんご農家で新たな栽培方法や品種の栽培に取り組み、役場や農協青年部からの情報も積極的に取り入れている外谷淳弥さん。飯綱町のなかでも特に奥深い奈良本地区に根ざし、子育てをする父としても現実的に未来を見据えている。

新たな栽培に積極的に挑戦

 飯綱町でも山奥に位置する奈良本地区で育ち、父の体調不良を機に、曽祖父の代から続く農家を23歳で継いだ外谷さん。当時、栽培していたのはりんごのほかに米と花。なかでも父母は花に注力し、りんごから花への転換を試みたという。
 「でも、飯綱の標高や昼夜の寒暖差、粘土質の土壌はりんご栽培に最適で、特にこの辺は町内でも標高が高くて降水量が少なく、栽培適地でした。そうした環境や産地としてのブランド力を考えると、やはり花よりもりんごが合っていた。そこで、父の他界後はりんごに戻すため、成木までに時間がかかる従来の普通栽培ではなく、高密植で植える新わい化栽培に挑戦しました」
 こうして今から8年前、町内でも早い段階で新わい化栽培を導入。新品種の栽培にも取り組み、販売面でも新たに始まった役場の飯綱町プレミアムりんごオーナー制度に登録した。今では全国20組のオーナーが外谷さんの畑を訪れている。

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2009年と早い段階から新わい化栽培に取り組む外谷さん。奈良本地区は町内でも特に雪が多いため、高樹高にするなど試行錯誤をしながら取り組んでいる。「新わい化栽培で思ったような木の成長が見られたり、収穫ができた時はやりがいを感じます」

 「こうした栽培や制度の新しい情報は、特にここ数年、役場から多く届くようになりました。講習会や農業実験の誘いも多くあります。また、JAながの青年部にも入っているので集まりには話を聞きに行き、仲間同士で情報交換もしています。知らないことを知るチャンスがあるのは刺激になりますね」
 青年部では農薬を30%以上削減した栽培も実践し、静岡と愛知のJA直売所で出張販売もしている。
 「もう何年も続けているので、行く先々で『待っていたよ』と言ってもらるのはうれしいです」

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減農薬栽培も常に畑を観察し、天気も確認しながら適期に必要な農薬を散布している。今後は葉摘の省力化が図れる「ぐんま名月」など、さらに新品種の栽培に挑戦する予定。

地区継続のためできること

 こうしたなか、奈良本地区は近年、鹿やイノシシによる農業被害が増加し、外谷さんは罠猟の免許を取得した。それに、若者が減り、子どもがいるのは外谷さん宅を含め3軒だけ。三水第二小学校閉鎖に伴い、今後は通学面での心配もある。
 「だから、この地区を守るためにも、ここに興味をもってくれる人を増やしたいんです。町内でも特にこの地区は外灯が少ないから星がきれいで、夜は動物の声しか聞こえないほど静か(笑)。そうした魅力の発信力を町全体で高めたいですね」
 そのためにも、農業ができなくなった高齢者から畑を借りたり、青年部としても高所作業のサクランボハウスの被覆を手伝うなど、できることから始めている外谷さん。それを後押しするように、今年の秋祭りには、数年前にこの地区で林業をし、親の体調不良で地元に帰っていた移住者が参加しに戻ってくるという。「うれしいですね」と話す笑顔と一つひとつの地道な努力が、地区継続の兆しにつながっていくのだろう。

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米も栽培しているほか、花の栽培も今なお継続中。とはいえ、以前の切り花ではなく、花木(観賞のための樹木)に力を入れ、正月用のボケの花をハウス栽培している。

PROFILE

飯綱町奈良本出身・在住。1975年生まれ。高校卒業後、長野市内の専門学校に進学し、経理を勉強。卒業後、廃棄物処理などを行う長野市内の総合商社で経理として勤務。1997年に退職し、家業の農業を後継。2009年から新わい化栽培に取り組む。現在はJAながの青年部連絡協議会長、JAながの青年部北部支部長を担当。高校1年、中学2年、小学5年の3児の父。

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