トップいいづなびとIIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLE農業030 有限会社飯綱町ふるさと振興公社 果樹部門 畔上 翼さん

IIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLE

030 有限会社飯綱町ふるさと振興公社 果樹部門 畔上 翼さん

畔上 翼さん.jpg

楽しくも常に競争し合える仲間がいる環境を
飯綱町、特に牟礼地区でつくりたい。

飯綱町の農業振興に尽力し、そば処「よこ亭」や農産物直売所「四季菜」を営む飯綱町ふるさと振興公社で果樹栽培を担当する畔上翼さん。減農薬やブドウ栽培など新たな挑戦もしながら、牟礼地区の若手農家の発展も考えている。

社会勉強の気持ちで就職

 高齢化や後継者不足により継続が難しくなった牟礼地区の果樹農家から畑を借り受け、りんごやモモの栽培をしている飯綱町ふるさと振興公社。その主力である畔上さんは山ノ内町のりんご農家で育ち、園芸高校、長野県農業大学校を経て、一度実家を継いだものの、2007年に同社に入社した。
 「実家を継ぎたい気持ちはあったのですが、父もまだ元気だったので、もっと広く実家の仕事の評価や農業を知りたい思いで就職を決めました。今は社会勉強という気持ちで働いています」
 入社10年。色の付き方や蜜の入り方など毎年異なるりんご栽培は難しい分、やりがいも感じている。
 「親父は昔から『りんご農家はいつまでも2年生になれない』と言っていましたが、僕もこの10年で一度も同じものができたことはありません。いかに、お客さんにまたおいしいと言ってもらえるか。その積み重ねが、次のステージへの一歩です。難しいですが、そのためのいろいろな試行が楽しみでもあります」

畔上 翼さん.jpg
かつてケガをした後遺症から、電動ばさみを使って農業に励む畔上さん。秋には多くの家族連れが収穫体験に訪れることから、子ども好きの畔上さんは得意の絵を道路に描くサービスも。冬は積極的に関東圏に販売に出かけている。

牟礼の若手農家のために

 この経験を生かし、いずれは実家を継ぎたいと話す畔上さん。近年、山ノ内町ではブドウ栽培が盛んで、シャインマスカットなど新品種の登場により農業に携わる向上心が強い若者が増えており、地元に帰ると刺激を受けるという。
 「技術の会話が飛び交い、一緒にいて楽しいだけでなく、常に競争し合える仲間がいるんです」
 地域外に出たからこそ地元のよさも一段と感じられるようになったが、だからこそ飯綱町では三水地区に比べ、牟礼地区で農業を継ぐ若者が少ないことが課題だと言う。
 「若い人は研究心や観察力があるので、注目を浴びるような新品種が栽培できたら自然と農業に興味をもつ若者も増えると思います」
 そのひとつとして、同社では今年からシャインマスカットの栽培を始めた。農協の技術員からは寒冷地のため実が成熟しないだろうと言われたものの、近年は温暖化で気象状況が変わり、飯綱町と標高が変わらない山ノ内町や高山村で栽培ができているため挑戦したという。
 「僕が地元に愛着をもっているように、牟礼の人たちにも帰りたいと思うきっかけをつくれたら。そのうえで僕ができるのは、仕事をいかに楽しくやるか。苦労しても『おいしい』と喜んでくれるお客さんの存在を伝え、共感してくれる人が増えるといいのかな。そうした農業の面白さも発信していきたいですね」

畔上 翼さん.jpg
入社後の10年間で畑の面積は倍増。そのなかで畔上さんは、減農薬や有機肥料栽培にも取り組んでいる。「りんごにも人にもやさしくしたいので、できるだけ化学肥料も農薬も減らし、ほかの農家にも迷惑をかけないことが目標」と話す。

PROFILE

山ノ内町出身、1980年生まれ。須坂園芸高校卒業後、長野県農業大学校で2年間果樹を勉強。卒業後、県の果樹試験場で2年間、臨時職員(技術指導サポート)を務め、実家のりんご農家へ。2006年、再び果樹試験場から声がかかり、1年間の嘱託職員に。翌年、飯綱町ふるさと振興公社からりんご専任技術者募集の連絡を受け、即戦力として入社。

カテゴリー