コミュニティのなかで、
循環し協力して生きていく形ができたらいい。
自然に根ざした無理をしない暮らしを求め、北軽井沢でコミュニティの追求と酵素玄米弁当の販売を始めた八木岡暁洋さんとみやさん。2016年4月に飯綱町に移住し、自然環境とコミュニティを生かした自然保育の方向性も見据えている。
シンプルで正直でしなやかな生き方。八木岡暁洋さん・みやさん夫妻の話を聞いて浮かんだのは、そんな言葉だ。
それぞれに日本各地を転々としながら住み込みの従業員として働き、上高地の山小屋のアルバイトで出会ったふたり。「もっとシンプルに、自然を信じた生活を送っていいのではないか」との考えから、島根県津和野町の山奥で3年ほど自然農法を行う農家として暮らし、群馬県北軽井沢に移住。エコビレッジ(持続可能性を目標としたコミュニティ)にも興味があったため、元ペンションの物件を利用してシェアハウスを始め、小さなコミュニティのなかで循環し協力する生き方を探った。それと同時に始めたのが、酵素玄米の弁当販売だ。
「もともと普通の玄米食をしていたら風邪を引いたりお腹を下したりしなくなり、ひどかった花粉症や腰痛も治ったんです。腸内環境が改善され、血行がよくなったからかな。それを酵素玄米に変えたら、おいしさが格段に違いました」(暁洋さん)
そんな酵素玄米弁当の販売はすぐに人気が出て、いろいろな出会いからイベントに出店するようになったという。そして、シェアハウスでは仲間に弁当作りや飼い犬の散歩を手伝ってもらうなど、自然な形で協力体制ができていった。
そんななか、以前から長野県に住みたかったことと息子・樹人くんの誕生を機に、自然に囲まれ気持ちがよさそうだと感じた飯綱町に移住。イベント出店用の酵素玄米おにぎりを作りつつ、コミュニティで生きる一環として、飯綱東高原での自然保育も少しずつ始めている。
「せっかく自然のなかにいるのだから、忙しい思いで子どもを保育園に送り迎えするよりも、地域でできる範囲で育てられればいいと思ったんです。自然農法と一緒で、自然の力を信じたいな、と。そして、既存のシステムにとらわれずにいろいろなものを見てきた人たちに子どもを見守ってもらうことで、子どもたちには『こんなに変な人もいるけど楽しそうだろ(笑)』と知ってもらう場をつくりたいと思っています。だから、ちょっと変な人と知り合う機会も多いのですが、飯綱町のみなさんとも幅広くオープンに付き合っていきたいので、温かく見守っていただけたらいいですね(笑)」(暁洋さん)
現在、日本の地方のなかでは、お金では買えない大切なものに価値を置き、できる限り地域社会で生産し消費する循環型社会経済が新たな動きとして広がっている。貨幣経済に頼らない新しい経済を考え、人生もキャリアもしなやかに生きる八木岡さんの話からは、多様性を認め合う社会の面白さと、暮らしの豊かさを探るヒントが込められているように感じた。
PROFILE
暁洋さんは茨城県水戸市出身、1979年生まれ。みやさんは福岡県北九州市出身、1980年生まれ。それぞれ、沖縄や京都、北海道、富士山などで働くなかで上高地で出会い、バンを改造して全国車中泊の旅を経て、島根県津和野町に移住。その後、群馬県北軽井沢に移り、酵素玄米弁当を販売する「C#cafe」としてイベント出店。2016年4月、飯綱町川上に移住。