少しでも町の雇用の担い手となり、
元気を与える店にしたいですね。
小学生の頃に理容師だった父が他界し、以来、母の香代子さんが女手ひとつで経営を続けてきた「美容室fujisawa」代表の藤澤至さん。母の希望から美容業界に入ったが、今は積極的に技術を修得し、ローカルエリアで美容師として働くやりがいを感じている。
「小さい頃から親の仕事を見ていましたが、美容業界に入りたい気持ちはありませんでした。だから、最初は親が希望するから家業を継ぐという感覚が強かったですね」
こう話すのは「美容室fujisawa」の代表・藤澤至さん。
以前はサラリーマンをしていたものの、母から後継について相談されたことで美容業界に入り、次第に自分の技術で喜んでもらえる仕事にやりがいを覚えていった。そして2000年に家業へ。今は姉の清子さんと店を支えている。客層は30~50代を中心に、上は90代まで。半分が町民で、残りは近隣市町村からの来客だ。
「新規顧客は多くなく、常連さんが主ですね。ただ、この地域では学生時代に外に出て帰ってきた方や、お嫁に来て、いい美容師を探している方もいます。そんな方に、ローカルな地域でいろいろな技術を提供できるのはうれしいですね」
そのためにも「井の中の蛙にならないように」と、毎月、東京都内や長野市内で行われるJHCA(日本ヘアカラー協会)などの会議や実技講習のほか、技を競うヘアショーなどにも参加しているという。
「やはり外に出ると視野は広がります。都会で活躍後、自分の店を開いた方や従業員を育てつつ売り上げを上げるサロン等と学べるのは刺激になりますし、ヘアショーでは自分の今の立ち位置もわかります」
そうした藤澤さんの高い知識や技術は、顧客との結びつきをより強くしている。反面、ローカルエリアで働く難しさも感じているという。
「新しいお客様はなかなか来ないし、人を育てて自分も成長したいのに働き手も少ない。だからこそ町おこしの突破口を模索していますが、なかなか決め手はないですね。でも、いつかチャンスは訪れるだろうから、諦めないことが大切です」
そのためにも、美容業界の勉強会に出席し、未来の若者たちに技術を教えられるよう備えている藤澤さん。飯綱町の雇用の担い手となり、活気あるまちづくりをすることが藤澤さんの希望だ。
「多くのお客様が人口減少する町の未来を不安に思っていますし、空き家も増えています。だから、仕事を通じてだけでなく、助け合いの精神をもってまちづくりをすることで、数十年後も町が続くようにしていきたいですね。そのためにも、この店を『ここに来たら元気がもらえる』と言われるパワースポットのような存在にしていきたいです」
PROFILE
1971年生まれ。高校卒業後は4年間、一般企業に勤務していたが、母の希望により、援助も受けて美容学校に通い、美容師資格を取得。その後、長野市内の美容室で7年間修業し、家業へ。町内の同世代が集まる飲み会から「わくわくドキドキネットワーク」を結成。4児の父でもある。