農作物の魅力をよりアピールするような
パッケージデザインに挑戦したい。
「机の上」という屋号で長野市に事務所を構え、グラフィックデザイナーとして活躍する廣田義人さん。イラストや切り絵も自ら手がけることで他のデザイナーとの差別化を図り、オリジナリティー溢れるデザインを確立している。
思わず手にとってしまうパッケージの商品や、目を奪われるポスター。そこにあるのは、美しいデザインだ。そんなグラフィックデザインを手がける廣田義人さんは、絵を描くことが好きで美術専門学校に進み、長野市内のデザイン制作会社に5年半勤務。そんななか、善光寺近くのシェアオフィス「カネマツ」で事務所を構えるフリーランスのデザイナーと知り合い、仕事を手伝ううちに楽しくなって、「カネマツ」での独立を決めた。
「『カネマツ』はあの辺で最初のシェアオフィスでしたし、元ビニール工場を改修した珍しい建物だったので、いろいろな人が出入りしていました。それでつながった仕事もありましたね」
その後、仕事も軌道に乗り、「カネマツ」の事務所が手狭になったために移転。2年前には現在の住居兼事務所のアパートに引っ越した。
そんな廣田さんのデザインの特徴は、ひと目で「廣田さんの作品」とわかるほど個性溢れるかわいさだ。動物や魚、木など自然がモチーフのものも多く、イラストや切り絵も自ら手がけ仕上げていく。
「格好いいものより個性的なものを作りたいと思っています。だから、イラストを描くことは多いですね。デザイナーとイラストレーターは別々の発注が多いのですが、僕の絵を見て依頼してくれる方が多いので、描けることは強みかな。デザインとイラストを一緒に作れれば、頼む側も楽でしょうし」
これまでには飯綱町役場からも、成人式の冊子の表紙や合併10周年のロゴマークなどの仕事を受けたという。そんな廣田さんがこれからもっと力を入れたいと考えているのが、パッケージの仕事だ。
「最近、山ノ内町のりんご農家の仕事で、ジュースのラベルやパッケージを作って楽しかったんですよね。それに、農家さんは自分でラベルなどを作ることが多いのですが、色使いがカラフルすぎたりして、商品はおいしいのにもったいないなぁと思うことがあります。ただ、農家さんと出会う機会は少ないので、飯綱町でそういう方とつながれるといいですね」
今は独自性が重要な時代。農業にデザインの視点を取り込むことはブランド価値の向上につながり、ひいては地域産業の振興にもなるだろう。表面的な課題解決だけでなく、根底まで入り込んで人と深い結びつきもつくれるデザインの仕事。その可能性は広がっている。
PROFILE
1985年生まれ。4歳まで飯綱町で育ち、長野市に移住。11歳から再び飯綱町へ。長野商業高校卒業後、長野美術専門学校を経て、長野市内のデザイン制作会社に5年半勤務。2011年11月に独立。これまでに「LIFE DESIGN信州」PR部門賞、「長野ADC2015」長野ADC賞や審査員賞・葛西薫賞などを受賞。