飯綱町を出て行った人たちが
戻って来たいと思える場所にしていきたい。
東京でSEとして働くなかで、より健康的な生活を求めて地元・飯綱町上村に戻った中澤千明さん。「オーガニックリゾート」で施設管理の仕事をしながら、上村の住民として、地域の発展を考えている。
ゴルフコースや温泉施設「天狗の館」、オートキャンプ場など、飯綱東高原の各種施設の指定管理者として町から委託を受けているオーガニックリゾート株式会社。そのなかで別荘や霊仙寺湖周辺の観光施設の管理、冬場の除雪作業などを担当しているのが中澤千明さんだ。
愛知県の大学を卒業し、東京でSEとして働いていた中澤さん。しかし、IT業界の先行きの不安や、残業や休日出勤を重ねる働き方に疑問を感じ、8年間働いた会社を退職して故郷の飯綱町上村に戻ってきた。そして2015年、オーガニックリゾート役員で隣家の瀧日出勝さんに誘われ、同社に入社した。
「東京では東日本大震災を経験して大変でしたが、改めて飯綱町を見ると、そうした災害の心配がないのがいいですね。それに、東京では災害時に孤立してしまう恐れがありますが、知り合いばかりの飯綱町には安心感があります」
こう話すように、町の環境や人とのつながりには魅力を感じている中澤さんだが、山深い上村に住んでいるからこそ気になることもあるという。そのひとつがインフラ(公共交通)整備だ。中澤さんが学生の頃、必要だと思っていた町内循環バス(iバス)は運行されるようになったが、それは繰り返し要望する人がいたからだと聞いた。そうではなく、今後、移住者の増加を図るなら、バスに限らず先行投資型で快適に暮らしていけるものを導入してもよいのではないかという。
また、町の観光資源はある程度充実しているものの、古い考えを捨てないと発展は難しいと中澤さん。
「たとえば、老朽化したテニスコート。時代に沿った形にするために、大勢でできるフットサル場に変えてもよいのではないでしょうか」
もちろん、まずは自分の仕事をすることが先決だが、上村の住民として言うべきことは言わないといけないと話す。そこには、中澤さんのこんな思いが込められている。
「町の住民を増やすためには新しい人を迎え入れるだけでなく、出て行った人たちが戻って来たいと思えるような、生活がしやすい場所にならないといけません。しかもそれが一部の地域だけでなく、町全体に広がる必要があります。そのひとつがインフラ整備です」
確かに、同じ町内でも、その地区に住んでいなければわからない課題はある。町民各自がその思いを声に出していくことは、まちづくりの第一歩につながるに違いない。
PROFILE
飯綱町上村出身・在住。1983年生まれ。愛知工科大学工学部電子情報工学科卒業。長野県のIT企業の東京事業所でSEとして8年間働き、2013年帰郷。野球好きが高じてBCリーグの審判のトライアウトを受け合格したが、2015年にオーガニックリゾート(株)にアルバイトとして入社し、その後、正社員に登用されたため、現在は同社の業務に専念している。