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012 株式会社丸世酒造店5代目当主 関 晋司さん

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いいお米を作ってもらうことは、
いい意味でプレッシャーです。

中野市の酒蔵「丸世酒造店」を5代目として後継し、2015年から杜氏も務める関晋司さん。ほかの蔵元との差別化を図り、自分たちならではの酒を醸すために、飯綱町産の酒米を使った酒造りに挑戦中だ。

 自然豊かで酒造りに最適な諸条件が揃う長野県。酒蔵の数は全国で2番目に多く、各蔵が清らかな水と良質な酒米、伝統の技で信州ならではの酒を造り出している。それとともに意欲的な若手杜氏も続々と成長中だ。そのひとりが、中野市にある「丸世酒造店」5代目で、酒造りを始め7年目となる関晋司さん。2015年には杜氏となり、自分なりの酒造りを追求している。

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昭和59(1984)年度生まれの長野県内の酒蔵跡取り息子5人からなるユニット「59醸(ごくじょう)」にも所属する関さん。こうした同世代との取り組みも、関さんの刺激になっている。

 その取り組みのひとつが、酒造りの重要な原料である酒米の仕入れだ。今まで同店では安定供給を重視し、長野県酒造組合を頼っていた。しかし、試飲会や販売会などに出店すると来場者から酒米の産地をよく聞かれることから、周辺市町村で最適な酒米を探したという。この辺りで有名な木島平村産の米はすでに取り入れている蔵元があるため、差別化を考えてたどり着いたのが、商工会議所青年部仲間の米屋から紹介された飯綱町の米農家・仲俣孝志さんが作る米だ。
 「実際に仲俣さんの田んぼに行ってみると、すごく気持ちがいいところでしたね。6月でしたが、山の吹きおろしの風も戸隠山から流れる水も冷たくて。水が温かいと米は弱ってしまうので、こういう風土で育つ米はいいなぁと思いました」

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飯綱町西黒川の仲俣さんの田んぼにて。仲俣さんは農薬の使用回数や化学肥料の窒素成分量を大幅にカットし、数々の米のコンテストで受賞。2015年には皇居での新嘗祭献穀者として、天皇陛下に新米を献納した。

 また、高齢化する近隣農家の田んぼを受け継ぎ、年々、栽培面積を拡大し意欲的に米作りに取り組む仲俣さんの人柄にも惹かれたという。
 「仲俣さんは、米作りに関して『俺はこうする』という意志がはっきりしているので、この人なら任せても大丈夫だと信頼もおけました」
 こうして栽培を依頼をしたのが、丸世酒造店の酒と相性のよい酒米「ひとごこち」。出来栄えは上々で、取材をした冬期はまさに仕込みの真っ最中だった。
 「僕ら蔵元は、醸造家ではなく“加工屋”なんです。だから、どんなに質が悪い米でもいい酒にしなければならないし、いい米は技術力でよりよい酒にしなければいけない。そういう意味では、うちが造る酒がおいしくないと仲俣さんに迷惑をかけてしまいます。それに、うちは小さな蔵なので、独りよがりになったり、妥協が生まれる可能性もある。だから、いい米を作ってもらうことは、最後まで気を抜かないようにという自分へのプレッシャーにもなりますね」
 今後も最高の米を手に入れるために、広い視野で地域を見つめていきたいと話す関さん。挑戦は始まったばかりだ。

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飯綱町で作られた「ひとごこち」と代表銘柄「勢正宗」
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「中野市なのに飯綱町の米を使うことに疑問を感じる人もいると思いますが、僕にとって重要なのは最高の米を手に入れることです」と関さん。今年の目標は「季節に合わせた“甘口だけどすっきりとした味わい”を表現すること」と話す。

PROFILE

中野市出身・在住。明治時代から続く酒蔵の次男として育ち、帯広畜産大学に進学。卒業後は都内の食品関係企業で4年半、営業として働くうちに、時間をかけた企画や自由度の高い仕事を求めるようになり、酒造りに挑戦したい気持ちから2011年に家業へ。2015年1月には仲間と「59醸」も設立。

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