トップいいづなびとIIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLEつくり手010 合同会社ch./ch.books 編集者・ライター・書店員 島田浩美さん

IIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLE

010 合同会社ch./ch.books 編集者・ライター・書店員 島田浩美さん

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この本を通じて地域が盛り上がり、
できる形で町に貢献できたらうれしい。

地元出版社兼カフェでの勤務を経て、2011年、長野市に新刊書店とデザイン・編集事務所をオープンした島田浩美さん。この本の取材と編集を担当し、仕事を通じた地域貢献にやりがいを感じている。

 長野市で編集・デザイン事務所を営む島田浩美さん。築90年の町屋を改装した建物は、1階が「旅とアート」をテーマにした新刊書店「ch.books(チャンネルブックス)」、2階が事務所となっている。小さなスペースだが、これまでに音楽ライブやトークイベント、ワイン会なども開催してきた。 
 信州大学に進学し、在学中に読んだ沢木耕太郎の紀行小説『深夜特急』に影響を受けたことで、24歳の時に2年間の世界一周旅行に出た島田さん。帰国後は長野市内の出版社で約6年間働いたが、徹夜続きで不規則な生活だったことから、そろそろ「ちゃんと寝る」仕事がしたい思いと「ちゃんと(アイデアを)練る」という意味を店名に込め、2011年に同僚デザイナー・青木圭さんと独立した。
 現在は、長野県内を中心とした観光関連のガイドブックやWebサイト、移住促進などの町おこし関係や企業のパンフレット、福祉系の本、演劇や音楽関係のレポート、新聞のコラムなど、さまざまな仕事をしている。この本も、このページ以外のほとんどの文章は島田さんが手がけた。きっかけは2016年にアップルファームさみずの仕事をしたこと。代表の山下一樹さんに「出身地の飯綱町に貢献する仕事がしたい」と話したことがこの本の企画者の耳に入り、縁がつながったという。

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開店以来、隔月で自分たちが興味をもった長野県内の情報を発信するフリーペーパー『チャンネル』を発行していたが、仕事の依頼が増えたことで12号をもって現在は休刊中。近いうちの復刊を目指している。

 今回、取材をしたのは26人で、島田さんとほぼ同世代。取材をした先々で、小・中学校が同じだった、町への思いが同じだったなど、共感することが多かったという。
 「この仕事を通じ、まさに自分がやりたかった仕事だととてもやりがいを感じましたし、この町で生まれ育った私だからこその視点や共感から生まれる記事を書きたいと思いました。それにみなさん、町への思いや期待はさまざまですが『飯綱町が好き』という気持ちは共通していて、うれしくなりましたね」 
 こうして、仕事を続けながらも、将来は飯綱町に住みたいと話す島田さん。その背景にあるのは、町の活気が失われることへの寂しさだ。
 「やはり自分が通った保育園や学校がなくなってしまうのは、リアルに寂しいですよね。そこで、この本をきっかけにさまざまな人やもの、文化がつながり、無理のない形で町が盛り上がったらいいと思っています。そのなかで私は紙ものやWebの仕事など、自分ができる方法で地域に貢献したいです」

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長野市南県町の三軒長屋で、両隣は花屋と革細工屋。1階の店舗と2階の事務所は吹き抜けの空間でつながっており、事務所で仕事をしながら1階の来客の様子もうかがえる構造になっている。
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島田さんの左が共同経営者の青木さんで、右は2014年に入社したグラフィックデザイナーの星野智世さん。今回の本のデザインもふたりが担当した。ほかに店内での喫茶提供を担当するスタッフもおり、4人で店舗を運営している。

PROFILE

飯綱町栄町出身。1979年生まれ。信州大学人文学部卒業後、アルバイトで資金を貯め、2003年世界一周の旅へ。約50カ国を回り、2005年帰国。同年、株式会社まちなみカントリープレス入社。同社が運営する飲食店「日和カフェ」を立ち上げ、店長業と、制作していたフリーペーパー「日和」の編集・執筆業を兼任。2011年退社し、同僚デザイナーと合同会社ch./ch.books設立。

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