国立公園の山並みが一望できる飯綱町の
魅力を引き出し、人との輪を広げたい。
国立公園の自然を守り、適切な利用を進める環境省の職員として、飯綱町の一部が属する妙高戸隠連山国立公園を管理する梅田実生子さんと前田久美子さん。行政や住民、民間企業との連携から、自然保護を通じた地域活性化を考えている。
自然のために人をつなぐ
自然に恵まれ、全国で2番目に国立公園が多い長野県。そのなかで2015年に分離独立して誕生した妙高戸隠連山国立公園の長野県側を管理するのが梅田さんと前田さんだ。自然公園法のもと、公園内の建物等の審査や登山道の巡視、外来植物の駆除、子ども向け自然観察会等を行うほか、国立公園の協働型維持管理のため、行政や観光協会、企業、登山ガイドや学芸員など、市町村や業種を超えて同じ志をもつ人たちをつなぐのが主な仕事。
例えば飯綱町では、飯綱町体育協会の山岳会・飯綱岳友会が霊仙寺山の登山道整備をしているが、会員の高齢化や一団体での管理の限界から、2017年度は登山道がまたがる飯綱町と信濃町、長野市の3市町と環境省とで話し合いを設けた。
「国立公園なので、私たちがつなぐことで登山道を協働して管理できる方法を考えていけたら、という思いがあります」(前田さん)
地域資源を活用した企画
また、むれ水芭蕉園では観光協会と協力して外来植物を駆除したほか、環境省と長野市や飯綱町など2県6市町村、観光団体などからなる「妙高戸隠連山国立公園連絡協議会」ではさまざまな取り組みを展開。2017年度には国立公園内の絶景を発掘する「一目五山」のフォトコンテストを開催した。
「飯綱町は国立公園の山並みがきれいに見えるので、素敵な作品がたくさんありましたね」(前田さん)
さらに、「いいづな歴史ふれあい館」の学芸員と「小玉 こどうの会」の案内のもと、信濃町古間から牟礼までの北国街道を歩く企画も開催。
「今まで他市町村の博物館とは企画をしましたが、飯綱町では初めてでした。学芸員さんの話もとても面白かったので、多様な連携から町の魅力を引き出し、沿線の人々と何かできれば楽しいですね」(梅田さん)
こうした過程を通じて地元の人が地域を理解し、誇りをもってもらうことが大切だと話すふたり。
このほか、魅力的な資源が多い飯綱町で、エコツーリズムを広めたいという。しかし、今はまだ町との関わりが薄い状態。
「町内で私たちの活動はあまり知られていないので、この本を機に知っていただけたらうれしいです」
PROFILE
梅田さんは福井県出身、1990年生まれ。京都大学農学部卒業。大学院に進学するも中退し、2014年に環境省入省。翌年、妙高戸隠連山国立公園誕生と同時期に戸隠自然保護官事務所に赴任。前田さんは東京都出身、1989年生まれ。東邦大学理学部で生物学を学び、大学院修了後は高校の生物教諭に。2014年、「山に関わる仕事がしたい」との思いから教員を退職し、戸隠自然保護官事務所の自然保護官補佐に着任。