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IIZUNA 100 PROFESSIONAL PEOPLE

008 noon farm(ヌーンファーム)佐藤省吾さん・由佳さん

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積極的な販路開拓で、若い世代に
飯綱町のりんごのおいしさを伝えたい。

東京での仕事や暮らしの疲れから都会を離れ、全国を旅するなかで、外での仕事=就農を選んだ佐藤省吾さん。「アップルファームさみず」での2年間の研修を経て、独立後は、妻の由佳さんと二人三脚でりんご農家の道を歩んでいる。

 東京のCM制作会社でプランナーとして働いていた佐藤省吾さん。会社にも都会暮らしにも疲れ退職した後は、国内を旅するなかで次第に農業、特に果樹農家に興味を覚えたという。そこで1年間かけ各地で短期農業研修に参加。そのひとつとして訪れた「有限会社アップルファームさみず(P62)」で食べたりんごのおいしさ、法人による就農へのバックアップ体制、当時の代表・山下勲夫さんの面倒見のいい人柄に惹かれ、同法人の研修生第1号になった。
そして2年間修業を積み、2011年、会社から畑を譲り受け独立。2013年に由佳さんと結婚後は、二人三脚でさまざまな農業の取り組みを進めている。その一環が、首都圏や名古屋方面でのマルシェ出店や、若いオーナーの八百屋への販路開拓だ。目指すのは、多くの同世代に自分たちのりんごを食べてもらうこと。
 「やはり子育て世代は金銭的な余裕がないので、主な購入層は僕らの親世代です。でも、うちは減農薬栽培をしているから子どもも安心して食べられるので、若い人が集まる場所には積極的に出店し、対面販売に努めています」(省吾さん)

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「育てたりんごがおいしいと言われることはやはり励みになりますし、外で働く仕事は健康的です」と話す佐藤夫妻。省吾さんは研修後もアップルファームさみずで開催される勉強会に積極的に参加し、地域の若い農家との情報交換も図っている。目下の課題は、倉庫建設のための場所探しだ。

 こうした努力が実り、現在は毎年、数百件ペースで受注を拡大中。しかし「今後は西日本での売り上げも伸ばしたい」と由佳さんは話す。
 「関西に住む私の親が『こんなにおいしいりんごは初めて』というほどの味わいなのに、あちらでは長野のりんごは知られていなくてもったいないと思っています。そこで、九州も含め、西日本にも飯綱のりんごを広めたいですね」(由佳さん)
 そのためにも見据えているのは、冷蔵施設を備えた倉庫の建設だ。それにより、長期間りんごが販売できる体制を整えたいという。
 「飯綱のりんごのおいしさは町民にとっては当たり前すぎて、その情報をうまく発信できていないと思います。しかし、長野県はどこでもりんごを作っているので、中途半端ではダメなんですよね。だから『ここにはりんごしかない』と言い切るほどの思い切りがないと、ほかに埋もれてしまいます」(省吾さん)
 農業に限らず、差別化はマーケティング成功への第一歩だ。そうしたなかで、都会から移住したふたりの独自の観点は、営業の強みになるとともに、同じ考えの農家が集まることは町全体のブランド化にもつながるだろう。前向きなふたりの話からは、そんな希望を感じた。

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2015年には娘の葉奈子ちゃんが誕生。子どもが少ない地域のなかでかわいがられており、出荷最盛期には近所の人が預かってくれるという。子どもが生まれたことで、佐藤夫妻はさらに販路開拓や将来像を真剣に考える時間が増えたという。

PROFILE

省吾さんは東京都出身。由佳さんは奈良県出身。4年半勤務した博報堂プロダクツを退職した省吾さんは、屋久島など各地を旅し、全国9カ所での短期農業研修を経て、2009年、(有)アップルファームさみずの第1号研修生に。2011年、飯綱町普光寺で独立。2013年、東京で働いていた由佳さんと結婚。現在、長女の葉奈子ちゃん、猫1匹と暮らす。

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