いろいろな人に応援してもらって
今の仕事ができていると思っています。
生まれ育った飯綱町赤塩に拠点を構え、店舗の什器製作や特注家具、看板などを手がける大川直男さん。特殊な機械操作と人情味溢れる人柄で受注を伸ばしているほか、イベントやボランティア活動も積極的に行っている。
仲間思いで責任感が強く熱血漢。飯綱町で特注家具屋を営む大川直男さんは、そんな人だ。高校時代は趣味のバイクいじりで友人たちから慕われ、手先の器用さから入社した家具工場では厳しい上下関係のなかで、一生懸命な姿から年配の職人や営業部にかわいがられた。独立開業の際は就職難の元同僚を引き込み、東日本大震災や熊本地震では復興支援イベントを企画。数十万円を被災地に募金している。母校の文化祭では毎年、ボランティアでアーチ作りを手がけ、卒業生たちからは人生相談をされるなど、何かと頼られる存在だ。
そんな大川さんの家具製作の強みは、NC加工機(コンピュータ制御で変形家具の部材を切り出せる機械)を使い、複雑な製品が作れること。この機械は特殊操作が必要で、前職の工場では専任オペレーターがいたが、大川さんは自分で動かしたい思いからパソコンを購入して独学で勉強。結果、社内で一目置かれるようになったという。
「当時、パソコンは高くて用意が大変だったけど、思い通りに機械が動かせるのは楽しかったですね。会社には憎らしい先輩もいて、よくカミさんに『やめたい』と話していたけど『仕事が一番楽しいんでしょ?』って。なんとなく入った会社だったけど、いつの間にかそうなっていたんだよね」
しかし、時代の流れで工場が閉鎖。職を失った大川さんは工場を間借りする形で2年間、外注として仕事を請け負い、NC加工機を強みに独立資金を貯めた。そして、2007年、地元で独立。当初は資金繰りに苦労したが、前職の営業担当が仕事を回してくれ、次第に事業も軌道に乗っていった。今は店舗や個人からの注文も多いという。
「お客さんが望むものをどう実現しようかいつも悩むけど、『思った通りのものができた』と言われる瞬間が一番うれしいですね」
こうしてがむしゃらに30代を駆け抜け、40代を迎えた今、大川さんはこれからの進み方を考えている。
「まだ方向性はわからないけど、若い職人をイチから育てたい思いはあります。母校のボランティアも教員だった後輩から頼まれて始めたものだけど、生徒たちと関われることは楽しいし、卒業から20年以上経っても学校に居場所があるのはうれしいですよ」
どこまでも情に厚く情熱的な大川さんのもとに、今後どんな仲間が加わっていくか楽しみだ。
PROFILE
飯綱町赤塩出身・在住。1974年生まれ。北部高校在学中にバイク事故で長期入院し、1年留年。卒業後、長野市木工団地内の家具製作会社に就職。特注家具担当として、アパレルを中心に店舗の什器等を製作。会社の工場閉鎖に伴い、2007年8月、元BBQセンターの建物を改修して独立。息子は高校を卒業し、木工の専門学校に進学。