トップライターはっさく堂さんまちの人気ベーカリーカフェ「れうりや」が国道沿いに移転オープン! 移住から新店舗までの道のりをうかがいました

まちの人気ベーカリーカフェ「れうりや」が国道沿いに移転オープン! 移住から新店舗までの道のりをうかがいました

長野市と新潟県上越市を結び、飯綱町の中でもひときわ交通量の多い国道18号線。牟礼駅への入り口に差しかかるエリアには、スーパーやコンビニ、銀行、飲食店などの生活利便施設が立ち並んでいます。その一角、ここ数年はシャッターが下りたままだった店舗に、天然酵母のパンと野菜たっぷりの惣菜で、まちの人にはすでにおなじみのベーカリーカフェ「れうりや」が移転オープンしました。

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「以前の店舗も好きなのですが、奥まっているため、どうしてもお客さんが来店しづらいと感じていました」
そう話すのは、店主の浜崎愛さん。穏やかな笑顔とともに紡ぐ言葉から、浜崎さんの人や食に対するまっすぐな姿勢が伝わってきます。
「この先どうやってお店を続けていこうか、漠然と考えていました。『長野市あたりで週1〜2日くらい間借りする?』、『牟礼駅前の空き店舗に移転する?』などアイデアはあったのですが、どれもピンとこなくて。2店舗目もありかなという気持ちになっていたとき、イベントで隣のブースだったチアさみず(飯綱町の生産者グループ)の方に『それならちょうどいい空き店舗があるわよ!』と紹介してもらったのがこの物件です」
物件を見に来て「確かにちょうどいい!」と、一気に2店舗目オープンのスイッチが入ったという浜崎さん。賃貸契約を済ませ、2022年12月からリノベーションを始めました。いいづなコネクトEASTの近く、赤塩地区の1店舗目を営業しながらの改装は「もう本当にいろいろ大変でした」と話しますが、木工に心得のあるパートナーが中心となり、白壁に木目を生かした什器が映える素敵な内装が完成しました。

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浜崎さんは千葉県出身。自然豊かな土地で、何人かのお母さんと一緒に自主保育をしながら、子どもたちと外遊びを楽しむ生活をしていました。しかし、2011年の原発事故で一帯がホットスポットに近かったことや、行政の対応への不信感などがあり、「子どもが小さいうちに移住しよう」と決断しました。
「長野県には縁もゆかりもなかったのですが、たまたま避難者のための物件探しを仲介してくれる人がいて、東高原の物件に入りました。長野市とは違うのどかな感じがして、付近の山も素晴らしかった。当時中学生と高校生だった上の2人の子どもを残して、当時3歳だった下の子どもだけ連れて、2人で飯綱町に住み始めました」

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1年が経過し、パートナーの転職先が見つかったので家族で飯綱町に移住。それから1年半ほど東高原で暮らしましたが、家が手狭になってきたこともあり、三水エリアの一軒家に引っ越します。そこで、福島からの避難者から「一緒に田んぼをやらない?」と声をかけられて、初めての米づくりに挑戦することになりました。
「千葉では20坪くらいの家庭菜園で無農薬野菜をつくっていました。2人目を産んだあと、少し体調を崩したのですが、畑で体を動かすことですごく癒やされて、とれたて野菜を食べるとエネルギーをもらえました。田んぼは大変だったけど本当に面白くて、自分でお米をつくるってすごいことだと実感。もっと農業をやりたいと思うようになりました」
しかし、新規就農で生活を成り立たせるのは至難の業です。自分のやりたいことと、これから生活していくことを必死で考え、浜崎さんは一つの答えに行き着きました。
「あ、私、食にこだわりがあるじゃん。それなら自分の畑で採れた農作物をつかって、半農×半カフェならなんとかなるんじゃない?」
自分にできることとやりたいこと、周りにある環境などのリソースを組み合わせて考え抜き、しっくりとくる等身大の答えをたぐり寄せた浜崎さん。そのときの自分の状態を「食に徹底的に関わっていこうと考えたとき、いろいろなことが腑に落ちた」と表現します。
それからはベーカリーカフェや福祉施設の食堂などで働き、料理の経験を積みました。
「どこかでカフェをオープンできないかな」と思っていたとき、畑や田んぼを借りていた「古民家カフェのらのら」のオーナーの高野珠美さんが「ここでやってみない?」と声をかけてくれました。浜崎さんにとって、願ったり叶ったりの申し出です。こうして浜崎さんは、週3回、カフェを運営することになりました。

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「のらのらでは2年間働きました。ちょうど『お菓子の工房があればいいのに』と思っていたとき、元パン工房だった旧店舗を紹介されたんです。のらのらで働きながら、半年ほどかけて物件をリノベーション。つくった商品を卸させてくれるお店も決まり、2020年3月にいざオープンというときになって、コロナがまん延したんです」
当初はカフェとパン屋を同時に始めるつもりでしたが、緊急事態宣言が出され、営業は自粛。その後、時短要請となってパンを売れるようになりましたが、客足は伸びませんでした。それでも、浜崎さんは次の一歩を踏み出します。
「ずっとシェアキッチンをやりたいと思っていたんです。もともとパン工房だった物件なので、奥にもう1つ、個室となった業務用厨房があって、空けているのももったいないからそこでやろうと。そんなわけで、コロナの補助金を利用して、メンバー登録制のシェアキッチンを始めることにしました」
広告とホームページで利用者を募ったところ大きな反響があり、登録は30人を超えました。個人が委託販売用の商品をつくるほか、マルシェでの販売にも利用されることが多く、近隣のイベントの前は利用が3回転することもあるそうです。

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こちらはレトロな雰囲気がおしゃれな旧店舗

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シェアキッチンの利用者さんである「めぐりや」さん

そして2023年8月、満を持して国道沿いの「れうりや」をオープン。新店舗ではパンの販売のほかカフェ部門にも力を入れており、おすすめは、おまかせワンプレートランチやハンバーグプレート、チョコやチーズのケーキなど。ギルトフリーのマクロビスイーツもあります。以前の店舗は現在もパン工房兼シェアキッチンとして稼働中です。

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ハンバーガーなどのテイクアウトのほか、1個からお弁当も対応できます。ご飯またはパンが選べるのも嬉しい!1〜2個なら前日まで、3個以上なら3日前までに電話で予約を。

取材時におまかせワンプレートランチをいただきました。ランチは野菜がたっぷりでとてもボリューミー! 優しい味わいなので食べ飽きることがありません。大満足の一皿です。
「店舗は結構広くて、実はまだ半分しか使っていないんです。残りの半分も改装してカフェスペースをつくり、人が集えるような場所にしたいです。あと、八百屋さんが軒を並べるようなオーガニックマルシェも開きたいです」
そのほか、バータイムに日替わりバーテンダーをお願いして、野菜たっぷりのお惣菜をおつまみにお酒が飲める場所をつくるなどの構想もあるそうです。いろいろな要素をまぜこぜにしながら、しなやかに変わり続ける「れうりや」。ぜひ一度足を運んで、浜崎さんのつくる素材を活かした料理の味とその人柄に触れてみてください。

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れうりや オーガニックランチと天然酵母パン
長野県上水内郡飯綱町普光寺925-10
電話 070-6663-8603
営業時間 11:00〜17:00
定休日 月・火曜

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