トップライター三原彩音さん「よこて方言カルタ」 制作過程から垣間見える、実は奥が深~い「方言」のはなし

「よこて方言カルタ」 制作過程から垣間見える、実は奥が深~い「方言」のはなし

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長野県飯綱町内でも随一の景観を誇る横手地区には、地元で使われている言葉を題材にしたカルタがあります。その名もズバリ「よこて方言カルタ」。今回は、このカルタの制作に携わった寺島政次さんに、制作の苦労話や実は奥が深~い方言のはなしを聞きました。

P1横手の風景.JPG
 
カルタが制作されたのは、2019年。飯綱町が、各集落の住民に集落の課題を洗い出し、希望する将来の姿について考え、話し合ってもらい、その将来像の実現に向けて実際に動いてもらおうと推進している「集落創生事業」の一環として取り組まれました。寺島さんは当時、この横手地区の集落創生事業を進める住民グループの代表を務めていました。
これまでに町内では、旧牟礼村公民館で方言集が作られたり、旧牟礼西小学校で地域のことを題材にしたカルタが制作されたりしたことがあったといいます。そんな前例があったおかげもあり、地元の言葉を集めて残し、後世に伝える機会として「方言カルタ」を制作するアイデアが横手地区の住民のなかで生まれ、取り組むに至りました。

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寺島さんたちがまず行ったのは、普段使っている方言を五十音分集めて、取捨選択すること。寺島さんたち自身よりも、親やその上の世代のほうが方言を使っていることが多いため、自分たちだけでなく、おばあちゃんたちがしゃべっていた言葉を思い出したり、実際に話を聞いてみたりしながら方言を集めたそうです。ただ、1つの言葉をとっても、ずっと町内で暮らしているおばあちゃんと、結婚を機に町外からやってきたおばあちゃんなど、その人のそれまでの経歴によって、ちょっとしたイントネーションや使い方が違うことがありました。そのため「細かなイントネーションやその言葉の雰囲気を活字で表すのは本当に難しかった」と寺島さん。方言は「日々おばあちゃんたちがしゃべっているのを無意識に聞くことで身に浸み込み、自然に出る言葉」なので、雰囲気や話し手の感情が込められていることが多いそう。

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例えば、重いという意味の“よもて”という方言。寺島さんの感覚的には、“よもて”の「よ」の発音は「ヨ」と「オ」の間だといい、しかもリンゴがいっぱい入った箱など、持ち上がるか持ち上がらないかわからないくらい重い物を動かすときなど、本当に重いと感じるときに使うそうです。
そして絵札の制作は、広島県立其町高等学校、鳥取県立米子西高等学校、聖ウルスラ学院英智高等学校の生徒に協力してもらいました。その制作過程でも苦労があったようで、3校それぞれに48枚すべての絵札を描いてもらいましたが、読み札を標準語にして依頼したため、前述の細かな言葉の雰囲気が伝わらず、できあがった絵札が読み札の意味に沿っていないケースもありました。そのため、1枚の読み札につき、各校が描いてくれた3枚の絵札から、最もその方言の意味を表しているものはどれか住民グループで話し合い、決めたそうです。

そんな“なえ”(大変)な作業を経て制作された「よこて方言カルタ」は、町内の横手直売所「四季菜」のほか、いいづなマルシェ「む~ちゃん」、農産物直売所「さんちゃん」、いいづなコネクトWEST、飯綱町観光協会で手に入れることができます。ぜひ、“ずく”(やる気)をだして、みんなでチャレンジしてみてください。

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