トップマガジン記事飯綱町と都心の女子高生をつなぐ「農村民泊」

飯綱町と都心の女子高生をつなぐ「農村民泊」

飯綱町には、首都圏などいわゆる都会に住む中学生や高校生に、田舎暮らしを体験する機会を提供している「農村民泊受入れの会」(神谷昇会長)があります(詳細は過去記事「全国の子どもたちの「田舎」的存在を目指せ! 農村民泊アグリキャンパスinイイヅナ」参照)。近年は、コロナ禍で受け入れ数が減少していたようですが、ようやく落ち着きを見せはじめた5月上旬、東京都千代田区にある和洋九段女子高等学校の1年生71人が、研修旅行として2泊3日で飯綱町と長野市芋井地区を訪れました。

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生徒たちは、1日目の昼から2日目の昼まで、各受け入れ先農家で野菜苗の植え付けなど農作業に従事。作業後は農家さんの家に宿泊させてもらい、田舎暮らしを体験しました。2日目は、飯綱高原でじゃがいもの種まきを体験。そして最終日の3日目には、飯綱町でリンゴの花摘みを体験して、町をあとにしました。
「星空がきれいだった」「ごはんがおいしかった」「山菜がおいしかった」「自給自足をしていた」「地域の人がやさしかった」「空気がきれいだった」。2日目に開催された「地方創生プロジェクト」では、田舎暮らしを満喫した生徒たちからそんな声が挙がっていました。印象に残っていることに行者ニンニクを挙げた生徒に詳しく聞いてみると、「民泊先で行者ニンニクの醤油漬けが食卓に出て、生まれて初めて食べたがとてもおいしかった」と話してくれました。生徒たちは、山菜をはじめ、農家の畑で採れた新鮮な野菜や、都会のスーパーにはなかなか並ばない野菜のおいしさに感動したようでした。農村民泊受入れの会の事務局を務める廣田裕二さんによると、過去に受け入れた学校とはその後も縁が続き、文化祭などに地元の野菜を携え出向いたこともあるそうです。保護者から「民泊先でおいしい野菜をいただいてから、野菜嫌いだった子が食べるようになりました」と喜びの声をもらったこともあるとか。一方で、「(良いところなのに)町の知名度が低い」「移動が不便(バスの本数が少ない、車・運転免許がないと生きていけない)」といった声も挙がっていました。生徒たちは、これらの魅力と課題を整理した上で、地元住民への恩返しの意味も含めて、グループごとに地域の課題改善策や活性化策をディスカッションし、1つの意見にまとめて、発表してくれました。

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「(農作業や食材だけだとスルーしちゃうけど)食材を調理している動画や出来上がった料理の写真だったら興味を持つからSNS(YouTube、Instagram)で発信する」「おいしい旬の野菜が配達されるお野菜定期便」「農家のYouTubeチャンネルを開設してリアルな状況を見せる」「アニメやゲームを利用する」「自然と触れ合える屋外型ライブハウスをつくる」「ドライブレスカー(自動運転車)の導入」など、発表されたアイデアは、まさに高校生、Z世代ならではのSNSを活用したものなど斬新なものばかりでした。発表を見に来ていた協力農家の皆さんは、熱心にメモを取ったり、「ぜひ実現させたい」と話したりと、とても刺激的なプログラムになったようでした。

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最終日に体験したリンゴの摘花では、リンゴ農家さんに教わりながら、一つひとつ手作業で花を摘み取りました。生徒からは「難しい…」「どれを摘めば良いかイマイチわからない」「何だかもったいない気がする」などの声が聞こえてきた一方で、「今までやった農作業のなかで一番おもしろい」という声もあり、夢中で取り組む姿も見られました。道路を横切る大きな毛虫に悲鳴を上げたりしながら、作業の合間には、おやつタイムも設けられ、昨年、彼女たちの先輩が同じように摘花してつくられたリンゴジュースを片手にアップルパイを頬張り、一息ついていました。

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生徒たちに摘花の仕方を教える神谷会長

また、この研修旅行がきっかけで、生徒主催による、飯綱町産シードルの瓶に貼るラベルのデザインコンテストが実施されました。コンテストで選ばれたラベルが貼られたシードルは、町内の直売所で販売されているので、お店に立ち寄った際はご覧になってみてください。

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リモートワークやテレワークの普及により、移住や二拠点生活を選択するハードルが低くなっている昨今。都会に住む中学生や高校生を受け入れ、田舎暮らしを体験してもらう活動は、子どもたちが都会と田舎を結ぶ懸け橋となってくれることで、関係人口の増加だけでなく、将来の移住者を増やす効果も期待できるでしょう。また、実際に町に足を運んでもらい、土や木に触れ、農家さんと会話し、採れたての農産物を食べるという経験が、若い人に与える影響は計り知れません。飯綱町での体験を人生に生かしてもらえたらうれしいですね。

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