2022年9月下旬、霊仙寺湖近くの森に隠れるように広がる天狗広場で、「いいづなCRAFT」が開催されました。出展したのは、さまざまなジャンルのクラフト作家さん48組と飲食のお店12組の計60組。クラフト作家さんのうち29組は県外からの参加です。初日はあいにくの雨天でしたが、2日目は気持ちの良い秋晴れに。町内外からたくさんのお客さんが訪れて、会場は笑顔にあふれていました。
「大きなイベントを企画するのは初めてではなかったのですが、クラフトフェアは初めて。準備に半年ほどかけたのですが、その間はずっとフェアのことばかりを考えていました(笑)」
そう話すのは、フェアを企画・運営した飯綱町東高原在住のガラス作家、サトウカヨさん。「大変ではありましたけど、頭の中の思いを一つずつ形にしていくのは、有意義で楽しい時間でもありました」
かつて実行したことのないことを行うということで、サトウさんの中には緊張感もありました。そのため、よりどころとなる最大の目標を「クラフトフェアを必ず実現させること」に設定。実行委員会はつくらずに、意思決定はすべて自分で行うと決め、ぶれることのない軸を見定めながら行動しました。
霊仙寺湖周辺でイベントが行われる場合、一般的には芝生広場が会場に選ばれます。これまでさまざまなフェアに参加してきたサトウさんも、「天狗広場のような場所でクラフトフェアをやるということは、あまりないですね」と言います。しかし、サトウさんは会場を天狗広場にすることにこだわりました。
「以前から、あの場所に厳かな空気を感じていました。まるで、ものづくりをしている人が昔から大切にしてきたような土地というか、秘密の場所というか……。だから、ここの空気感と一体となったフェアをやりたいと思ったんです」
サトウさんが天狗広場に惹かれた理由の一つに、「公園を設計した人の遊び心が感じられる」ということがありました。天狗像から石畳の細いアプローチがあり、木立が終わると同時に視界が開けます。そこは緩やかな勾配のある広場のいちばん高いところで、広場全体を見渡すのにぴったりな場所。さらに、木々に隠れるようにひっそりと橋がかかっており、そこを渡ると小さな広場が現れます。まるで秘密基地のように、探した人だけが見つけられる楽しみが隠されている、素朴ながら奥の深い公園なのです。
「そういえば、この公園のマップをつくっていて気づいたのですが、この公園の敷地は天狗の横顔のような形をしているんです。もしかしたらこれも、わざとそうしたのかも」と、サトウさん。
クラフトフェアには、2日間で約3000人の来場がありました。そして、次回への課題も見えてきました。
「クラフトフェアは、2回目、3回目で来場者が大幅に増えるのが一般的。今回も、トイレや駐車場がいっぱいになってしまったり、困ったことがありました。出展者の搬入出方法やお客様の導線などの整備は、今後の大きな課題ですね」
「初回だったので、すべての決定は私が行いましたが、今後は仲間との運営という形にしたいと思っています。2日目の朝ごはんを提供する朝市も開きたいです。それから、さらに実験的にやってみたいことがあるんです」
サトウさんがやってみたいこと、それは、「時間と距離を超えたクラフトフェア」です。
「物理的にこの場所に来られる人だけではなく、例えば障がいがあって来られない人や、子どもがいるから家を空けられない人に、オンラインでこの場所の空気を感じられる場を提供したい。この場所を見ることで、たくさんの人の世界が広がるのではないかと思うんです」
ものを売るフェアを開催したいのではなく、ものづくりをしている人たちが作品を世に出せる場をつくりたい。そんな思いが出発点となったいいづなCRAFT。サトウさんが目指すのは、まちの人に誇りに思ってもらえるようなフェアです。
「この町の景色が大好きです。だから、いいづなCRAFTの方向性にしっかり肉付けをして、まちの人が『うちのまちの広場で、こんなイベントやってるんだよ』 と胸を張って紹介してくれるようなイベントに育てていけたらいいなと思っています」
最後に、サトウさんからのお礼文をこちらに掲載させていただきます。
「共催の天狗の館スタッフの皆様はじめ、運営スタッフの皆様、小林新聞店様、ご参加・ご協力いただきましたすべての皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました」
※いいづなCRAFTクレジット入り写真はサトウカヨさん提供
※撮影時のみマスクを外していただきました