2022年9月24日(土)〜25日(日)、飯綱東高原の「てんぐ広場」(じゃぶじゃぶ池周辺)にて、第1回目となるクラフトフェア「いいづなCRAFT」が開催される予定です。呼びかけ人は、東高原の森の中にアトリエ兼住居をかまえるガラス作家・サトウカヨさん。
サトウさんは北海道札幌市出身。スキー場で、インストラクターやイベント企画に携わるスタッフとして働いていました。スキー場の経営が変わったことをきっかけに、退職して新天地で暮らすことを決心。2002年、これまでスキーの仕事で何度も訪れたことがあった長野県に、住まいを探しにやってきたそうです。
「私は古いものが大好きなのですが、飯山市の仏壇通りのレトロな町並みを見たときに、『ここだ!』と思ったんです。ちょうど、仏壇通りに賃貸の古民家を見つけたので、すぐに移住を決めました。縁もゆかりもなかったのですが、飯山市にはお寺がいっぱいあるし、大きな木もたくさんある。漠然と『寺院や大きな木がある土地は大丈夫』と思っていたので、ためらいはなかったです(笑)」
サトウカヨさん。いいづなCRAFT会場となる「てんぐ広場」で
移住後は、ハローワークの職業訓練でパソコン在宅ワークのコースを受講し、パソコンスキルを身につけました。終了後は、フリーランスとしてパソコン教室の講師やウェブデザインなどを請け負いました。
そして37歳のとき、「趣味として、今までとは違うことをやってみよう」と思い立ったというサトウさん。隣のまちにとんぼ玉体験教室があり、興味を持って見学に行ったらあいにく工房はお休みでした。「それなら、もう、自分で始めちゃおうと思ったんです(笑)」
とんぼ玉とは、いろいろな模様をあしらったガラス玉のこと。ガスバーナーやガラス棒などがセットになった初心者向けキットをインターネットで購入し、付属のDVDを見ながら独学でとんぼ玉制作を学びました。最初は上手にできませんでしたが、コツをつかむとおもしろくなってきて、時間を忘れてピアスやネックレス、ストラップなどをつくるように。そして夏祭りの日、知り合いの店の前にテーブルを出してガラスのアクセサリーを販売してみたところ、たくさんの人が喜んで買っていってくれました。
「自分で作ったものを販売するという世界があるんだ」ということを知ったサトウさんは、須坂市や小布施町などのクラフトフェアにも出店するようになりました。
「私はもともとすごく『気にしぃ』で、いろんなことを気にしすぎていました。電車にも乗れなかったし、会社勤めも苦手で、フリーランスという働き方を選びました。だからクラフトフェアでは、同じような自由な働き方を選んだ作家さんたちと会えるのがとても楽しかった。それに、お客さんとお話できるのも、とても勉強になりました」
サトウさんのアクセサリーたち。裏面が平らで表面に凹凸があるのが特徴です
ガラスのリング
パソコンの仕事はほぼ整理し、ガラス作家としての道を歩むことに決めたサトウさん。試行錯誤を繰り返し、新しいスタイルのガラス作品を作るようにもなりました。
「とんぼ玉はガラスの中に模様を入れるのですが、それには興味がなくなり、『小さな火でどれだけガラスを大きくできるか』という方向の作品を作るようになりました。玉ではなくて、例えばツバメの形にしたり、文字を書いたり……。ガラスで自由に形を作りたいと思ったんです」
口径が大きなコアガラス用バーナーを新たに取り入れることで、最大で手のひらサイズのガラス作品を作れるようになり、作品の表現技法はさらに広がりました。
新しい工具や機材のほか、クラフトフェア用の什器なども増えてきて、いよいよ飯山市の家は手狭になってきました。サトウさんは家の購入を考え、ネットで毎日のように北信エリアの物件をチェックするように。飯綱町の森の中にある現在の家が売りに出ているのを見つけたときには、すぐに内覧のアポイントを取り、5日後には購入を決めたそうです。
4匹の猫と一緒に暮らしています。こちらは麦茶ちゃん
「その頃はクラフトフェアブームで、毎週どこかでクラフト市が行われていました。ありがたいことでもあるのですが、たくさんのアクセサリーを作るのに少し疲れてもいて。もっと時間をかけて、一つひとつの作品をつくりたかったんです」
制作や新作発表に追われる日々の中で一旦立ち止まり、自分が表現したいことを見つめ直したサトウさん。その後はオブジェにも力を入れるようになりました。展示空間そのものを作品とする「インスタレーション」という手法で、2018年7月に新潟県長岡市、2020年12月に長野市で個展を開催。ガラス作家として、新たな分野の扉を開きました。
長野市tokioriでの個展
「飯綱町の森に引っ越してきて、ゆっくりとした時間の流れが自分に合っていると思うようになりました。つくりたいものに時間をかけられるようになって、作品が変わってきたと思います」
9月の「いいづなCRAFT」は、そんな飯綱町での生活が育んだ穏やかな気持ちを編み込みながら企画したイベントだと、サトウさんは話します。
「あちこちのフェアに参加して感じたのが、ほとんど販売だけで時間が終わってしまうということ。それがもったいないと、いつも思っていました。そんなとき、天狗の館のてんぐ広場を見て、私がやりたいクラフトフェアのイメージが湧いたんです。有名スポットじゃなくて、のんびりしていて、洗練されていなくて、でも使う人のことを思ってつくられた広場。イメージがどんどん膨らんできて、そのとき気づいたんです。クラフト作家の仲間はたくさんいるのだから、みんなを呼べばここでフェアが開けるって」
オブジェ:ケサラン・パサラン
オブジェ:ガラス粒のリース
「作品で『見たことのない景色』をつくりたいといつも思っていた」というサトウさん。これまではクラフトフェアの自分のブースがその景色のステージでしたが、今回は、会場の空間を作品に見立てるインスタレーションのように、「てんぐ広場全体で、誰も見たことのないような景色を表現したい」と話します。
「つくりたいのは、見て触れて、訪れた人がその中にいられる、イベント全体の『風景』です。作家さんにもお客さんにも、その風景や空気感を体感してほしい。そしていつか、飯綱町でトリエンナーレ(3年に1回開かれる芸術展覧会)が開催できるくらいになればいいと思っています」
---------------------------------------------------------------
サトウカヨさんのHP
インスタグラム @satokayoglass
日時:2022年9月24日(土)10:00〜16:00・25日(日)9:00〜16:00
会場:長野県上水内郡飯綱町川上てんぐ広場(じゃぶじゃぶ池周辺)
入場無料
雨天決行(荒天中止)