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誰かに会えるから、通うのが楽しみに~飯綱町発! フィットネスジムの新しいカタチ

旧校舎を利用した複合施設「いいづなコネクトWEST(いいコネWEST)」内にあるフィットネスジム「Sent.(セント)」。ここは、まるで銭湯に通うときのように顔見知りに遭遇できる場所として、周辺の住民を中心にじわじわと会員数を増やしている健康づくりの施設です。
2022年4月より、施設の運営が長野市の「株式会社I.D.D. WORKS」から飯綱町の新規設立企業「株式会みみずや」に移ります。立ち上げ人のひとりは、現在もストアマネジャーを務める滝澤宏樹さん。町内に住居を構え、さらに会社を立ち上げることでより地域に密着したサービスを提供し続ける滝澤さんは、みみずやを通して何を実現しようとしているのでしょうか?

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上田市出身。長野高専で機械工学を学び、卒業後はスポーツウェアの研究をするために信州大学繊維学部に編入。感性工学を学ぶコースに進みました。
「昔から『ドラえもん』の世界観が好きで、人に近いものづくりに興味がありました。とくに、自分がどういうものをつくっているのか、最終形をイメージできる仕事がしたいと思っていて、人の体と繊維を知ることで着心地を科学する感性工学を選んだんです」
在学中はフィットネスジムでアルバイトをしていた滝澤さん。先輩からの紹介で、I.D.D WORKSが開催するスポーツイベントの手伝いもするようになりました。就職活動の時期になり、同じ学部の友人たちはスポーツウェアや繊維系の企業への就職を目指すように。滝澤さんも同じように説明会などに参加しながら、常にある疑問を持ち続けていたそうです。
「大きな企業に就職したとして、希望の部署に配属されるとは限らないし、転勤などもありますよね。自分のやりたいことはどれくらいできるのだろうと、いつも思っていました」

そんな疑問へのヒントとなったのが、I.D.D. WORKSのイベントで出会った30〜40代の地元の農家さんの生き方でした。地元や農業を盛り上げるために、「何をやるか」はもちろん「どう生きるか」までもを大切にし、毎日を精一杯楽しむ若き農家さんたちの姿を見て、「信念ある人たちの生き方に、ものすごい衝撃を受けました」と滝澤さんは振り返ります。
「熱い人たちが地域にいるのがとてもおもしろく、自分も地域での活動を突きつめてみたいと思いました。そこで、アスリートのキャリア支援と農業という2本の柱を持つI.D.D. WORKSの代表とお話し、就職させていただくことになりました」

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I.D.D. WORKSは、飯綱町のいきがい創造事業の委託業務として、スポーツイベントなどを開催していたことから、いいコネWESTでのフィットネスジム運営の打診を受けましたが、ジム経営のノウハウがないために決断を迷っていたそう。しかし、「僕たちにはこれまでの3年間、飯綱町でスポーツ事業をしてきた経験がある。その経験を次に繋げれば、この地域で、地に足を付けた事業ができるのでは」と、受諾しました。
「普通のフィットネスは都市型の運動モデルなので、そのまま飯綱町に持ってきても成り立たせるのは難しい。だから、飯綱町で活動してきた経験をもとに、このフィットネスジムに体を動かす以上の意味を付けたいと思ったんです」
しかし、それをどうやって実現するのか。滝澤さんは、そのことについて考え抜きました。そんななかで思い出したのは、自分もいいコネWESTと同規模の小学校を卒業したということ。自分が卒業した小学校で体験したいことはなんだろうと考えたとき、一つの答えが浮かび上がりました。
「旧校舎という場所で、地域の人は何がしたいのか。自分なら、運動ができて、顔見知りの人と気軽に話ができる場所ならいいなと思いました。ここに来れば、誰かがいて、つながりがあって、会話が生まれる。そういう『銭湯』のような場をつくることが、僕たちがここでフィットネスジムを運営する意味なんじゃないかと思いました」
最初は、集客にも苦労したと話す滝澤さん。それでも、「広告は打たず、口コミなどでお客さんを増やしていきたい」の一心で試行錯誤を重ねました。そのかいあって、お客さんが一緒に運動したい仲間をつれてきてくれるなどして、利用者は少しずつ増えていきました。

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「この4月から、僕ともうひとりで代表取締役を務める『株式会社みみずや』に運営委託が移行します。地域により根付くため設立した、飯綱町の会社です」
ミミズは、言わずと知れた土を耕してくれる益虫。町内の健康という土壌づくりが由来となった名前なのでしょうか。
「それもありますが、ミミズって『人間のためにいい土をつくるぞ』って思いながら土をつくっていないですよね。ただ素直に、自分たちのやるべきことをして生きていて、それがほかの生物の豊かさにつながっている。人間も同じで、『周りのためにやるぞ!』と意気込むと、どこかで無理が出てきてしまうんじゃないかな。ミミズのように、目の前のやるべきことをただおこなうのが、地域の豊かさにつながる。それが、この会社のあるべき姿だと思うんです」
フィットネスジムというノウハウを持たない事業に参入しながらも、地域への視点を忘れずに、口コミで会員数を増やしてきた滝澤さんのチーム。多くの人が顔見知りの田舎でこそ発揮できる、「あそこに行けば誰かに会える」というフィットネスジムの副産物的な魅力は、「都市型フィットネス」ならぬ「田舎型フィットネス」が発展していく上での大きな要因になるのかもしれません。

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廃校フィットネスSent.
長野県上水内郡飯綱町川上1535 いいづなコネクトWEST内
TEL: 080-9648-5823

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