盆棚に使われる高坂りんご
8月半ば、飯綱町にもお盆の季節がやってきます。
お盆を前に、高坂りんごの収穫とその高坂りんごを使用した盆棚づくりのデモンストレーションがアップルミュージアムで行われました(いつもはワークショップ形式ですが、今年は新型コロナウィルスの影響で、ワークショップは実施されませんでした)。では、さっそくレポートします!
盆棚(精霊棚)とは、毎年お盆の時期になると各家庭に設置する祭壇で、ご先祖様への感謝と供養の意味を兼ねて作ります。
いいづな歴史ふれあい館の小山学芸員によると、町内の盆棚は、お供えする花や草、果物などの飾りは各家庭によってさまざまで、全く作らないところもあるそうです。
今回は、町内でもかつてスタンダードだったと思われるものを、作りました。
まず初めに真菰(まこも、イネ科の植物)やススキを使って盆ござを編みます。
集中してススキで盆ござを編む飯綱町民で講師の長崎ミツ子さん。隣では宮本久子さんが飾りに使うキュウリの馬とナスの牛を作っています。
今回はススキの葉っぱですが、本ござは真菰など山の葉っぱを使うそうです。
きゅうりの馬とナスの牛は全国共通みたいですね。
盆ござができました!!
次は、ある程度枝を落としておいたナラの木をまとめます。
ナラの木を左右に立てたら、次は高坂りんごに紐をつけて飾ります。
高坂りんごの記事はこちら
軸に紐をくくりつけて
先ほど立てたナラの枝を柱にして、飾りをつけるための枝を渡し、高坂りんごを吊るします。
会場となったアップルミュージアム 内のiカフェのスタッフの皆さんも一緒に、みんなで飾りつけます。
盆ござを柱の下に敷き、きゅうりの馬とナスの牛をセット。
高坂りんごを飾りつけた竿に、茹でたそうめんを写真のように波をつけてかけていきます。
このそうめんは縄を表現していて、ご先祖さまが、ナスの牛に載せたお土産を落とさないよう、しっかり縛り付けて持って帰ってもらうためなのだそうです。
次に、ナラの木の高い位置に、キキョウやオミナエシ、オケラミソハギなどの野草を飾ります。
この高い位置にわざわざ花を飾るのは、一説によると先祖様に戻ってくる位置を知らせる目印としての意味があるためだそうです。
こんな感じになります。
ござの上には、桃やリンゴもお供えします。
完成です!!
これが、飯綱町に伝わるスタンダード(?)だったと思われる盆棚です。
完成した盆棚の前で記念撮影です!!左は宮本さん、右は長崎さんです。
お盆についてのお話を、歴史ふれあい館の小山学芸員にインタビューしてきました。
小山さんによると、飯綱町のお盆は8/13~16まで。
13日に提灯を持ってお墓に先祖の霊をお迎えに行き、16日にお墓に見送りに行きます。これはほかの地域とも一緒ですね。
少し変わったところといえば、14日にはおやきを焼いてお供えするそうです。また、昔は15日には集落ごとに盆踊りが行われ、集落ごとに謡い継がれているオリジナルの甚句(じんく)で、場を盛り上げたのだとか。
また、長野といえば「カンバ」と呼ばれる白樺の皮を干したものを迎え火で焚くのですが、実はこれ、割と近年の商業ベースの風習だそうで、100年くらい前の記録によれば麦がらなどが使われていたと教えていただきました。
お盆が終わる16日、先祖を見送ると、盆棚は近所の川や用水に流されました。
今年は新型コロナウイルスの影響もあり、アップルミュージアムの盆棚製作のワークショップは規模を縮小して行われました。各集落のお祭りも、盆踊りなどの行事が中止になったり、神事のみとなってしまったりしたところが多いです。
伝統的な盆棚も、最近ではつくっている家庭は少なくなってしまったそうです。
時代が変わっても受け継がれるもの、残念ながら廃れてしまうものはありますが、盆棚のようにその土地の文化的なものは、疫病にも負けず、残していかれたらいいですね。お盆にそんなことを思いました。
盆棚の作り方