信州といえば、そば。なかでも戸隠そばは、日本三大そばのひとつにもなっています。
そばは、昼夜の寒暖差の大きい冷涼な土地を好み、信州でも多く栽培されています。しかし、霜には弱いという弱点があるそうです。
新潟の妙高から長野の黒姫、戸隠、そして飯綱のあたりは霧下地帯と呼ばれ、夏の終わりから秋の朝になると、霧が立ち込めるエリアです。この時期は、飯綱町も高台から眺めると町全体が霧にすっぽりと覆われ、とても幻想的な風景が見られます。
そばを霜から守ってくれているのが、この霧。霧のベールでやさしく守られたそばは風味豊かで栄養価が高く、霧下そばと呼ばれ、美味しいそばの代名詞となっているのです。
今回は、おいしいそばが出来る飯綱町の中で、町内外から愛されるおそば屋さんをご紹介します。
こだわりいっぱいのそば
飯綱山のふもとに店を構える「地場産工房 そば処 よこ亭」は、自家栽培している飯綱町産のそば粉だけを使っています。その日に使う分だけを石臼で挽いて手打ちしているので、口の中にそばの香りが広がります。豆から挽いて淹れたコーヒーが香り高くなるように、そばも挽きたてが一番!
よこ亭を経営する(有)飯綱町ふるさと振興公社の平塚慶吾さんは、いかにお客さまに喜んでいただけるかを念頭に、日々美味しいそばを探求していると語ります。
「そばが美味しい季節は1月下旬から2月の初旬くらいまで。春先からだんだん香りも甘みもなくなってしまいます」
そばの美味しい状態を保つためにはどうしたらいいか、全国を巡って試行錯誤を繰り返したと平塚さん。
「冷蔵庫で保存してみたこともあるけど、乾燥して香りが飛んでしまってダメでした。最終的にたどりついたのが、雪室です。雪室は一定の温度と湿度を保つので、低温糖化といって、凍らないようにそばががんばって、甘みを増すんですね。
信濃1号というそばは、香り高いことが特長なので、ぜひ、香りを味わっていただきたいです。1年を通して美味しいそばを提供したいと思っています」
同じ長野県内で、いまや村の特産品となった小谷村の雪中キャベツも、低温糖化の働きを活用したものです。
そばが自力で甘くなるとは、どんな味わいなのか、わくわくします。
おいしいそばと一緒に楽しめる飯綱町の絶景
この日にいただいたのは、野菜天ざるそば(1,050円)。天ぷらの野菜は、県道を挟んで店の向かいにある「横手直売所 四季菜」で扱っている地元産のもの。つまり、すべてが飯綱産という地産地消メニューなのです。
冷たい水で締めたそばをすすって顔を上げると、目前には飯綱町の里山の風景、さらに奥にそびえる志賀高原の山々、菅平高原まで見渡せます。こんな景色を眺めながら食べるそばは、絶品としか言いようがありません。
晴れの日はもちろん、霧の日も見てみたい。四季折々の景色とともにそばをいただけるなんて、なんとも贅沢!
観光で訪れたお客さんだけでなく、近所で美味しいそばが食べられると、地元のお客さんも多いというのも納得です。
天ぷらを食べ進めると、見慣れない白っぽい揚げ物が。ひと口かじってみると、なんとりんご! これが意外にも、爽やかな甘みが口直しになって、そばつゆにも合うのです。さすがりんごの町、そばにりんごとは、驚かれる人も多いのではないでしょうか。しかし、けっこうこのあたりでは、りんごを天ぷらにすることが珍しくないとか。いったいどんな料理とコラボしているのか、見つけてみるのも楽しいかもしれません。
平塚さんは、「これからは単なるそば屋ではなく、食べる、見る、体験する、買い物する……とさまざまに楽しんでもらいたい」と将来の展望を熱く語ってくれました。
店の裏には広い駐車場がありますが、この駐車場からの眺めは、ついついSNSにアップしたくなる飯綱町でも屈指のビューポイント。まさに飯綱町を丸ごと味わえるお店です。
掲載スポット情報
よこ亭:http://www.valley.ne.jp/~mureson/yoko/yoko.html