新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ5類に移行することが決まり、各地で連休らしい賑わいが戻った今年のゴールデンウィーク。飯綱町では、5月6日に、町内初となる「ロゲイニング」が開催された。企画・主催したのは、住民有志による「The(ジ)遊友団」。当日は、町内外から多くの人が参加し、盛り上がりを見せた。
そもそもロゲイニングとは――。「ロゲイニング(ROGAINING)またはロゲイン(ROGAINE)とは、オーストラリア発祥のナビゲーションスポーツです。コンパスと地図を持ち指定されたコントロールポイントをまわりいかに多く得点を獲得するかを競います。競技は主に山、森林、高原などの自然の中でおこなわれます。競技は、大規模なオリエンテーリングと考えてもらえれば、おおよそのイメージはつかんでもらえるでしょう」(日本ロゲイニング協会公式HPより引用)。最近は、競技者が会場となるエリアを縦横無尽に巡る競技性から、地域の魅力発信や観光客誘致を進める一つのきっかけにしようと、全国各地でそれぞれの地域性を生かした形にアレンジして開催されるケースが増えているようだ。「いいづなロゲイニング」は、基本に則りながら、道中バスが使えたり、川柳を読んで投稿すると追加でポイントが獲得できたりと、さまざまなオリジナルルールを設定。普段からロゲイニングやトレイルランニングなどに精通している「ガチ勢」から、初心者や子ども連れ、散策がてらの「エンジョイ勢」まで、参加者がそれぞれの目的や体力、気分にあわせて楽しめる形で開催された。
そんな「いいロゲ」の発端は同団のメンバー・松木靖さんの発案だ。自身でも子どもたちの運動をサポートする「マツキ倶楽部」を運営している松木さんだが、町が実施している「いいづなスポーツ探検隊」の活動の一環で子ども版のロゲイニングを手伝った際に「これは町を盛り上げるイベントにできるのでは?」と感じ、周囲に話してみたそう。すると、現在、同団の代表を務めるまちづくり会社カンマッセいいづなの加藤貴彰さんも「僕もやりたいと思っていた」と賛同。「やるなら本気でやろう」と声をかけたところ、話題と2人の思いが人をつなぎ、仲間が集まった。
熱い思いを語る松木さん
開催時季をめぐっては、準備期間がタイトになってしまうことは承知のうえで、サクラやモモ、リンゴ、菜の花などの花々が咲き、気候的にもちょうど良く、見どころが多いのは「やっぱり春だよね!」と、今春の開催を決断。参考のために、おとなり須坂市で行われたロゲイニングに皆で参加し、ヘトヘトになりながら、短い期間で飯綱町バージョンをどんな形にするか詰めていったそう。
「いいロゲ」の最大の特徴は、地元の商店を巻き込み、町内に経済効果を生んだこと。競技中に獲得したポイントがそのまま、町内の加盟店で使える「いいづなポイント」として、競技終了後に参加者に進呈される仕組みを考えた。加藤さんによると、今回発行した総ポイント数は、約8万ポイント=約8万円分。参加者のなかには獲得したポイントで町内の飲食店を利用してくれた方々がいたといううれしい話もあったとか。「町にお金を落としてもらう目標はクリアした」と加藤さんが振り返るように、一定の経済効果があったと言えるだろう。
遊友団の代表を務める加藤さん
そして何と言っても秀逸だったのは、参加者から川柳を投稿してもらうというルールだ。「移住すと 呟く夫に 焦る妻」「飯綱で 最高な気分 また来ます」など、思わず笑顔になってしまう内容が寄せられた。「地元の人は当たり前と思っていて気づいていないけれど、この町には良いところがいっぱいあるとずっと感じていた」と移住歴20年以上の西村啓大さん。唯一の地元出身者である松木さんもそれに呼応するように「子どもたちが、歩いてみたら、知らなかった景色に気づいたと言ってくれていた」と話す。ロゲイニングという競技を活用した今回のイベントは、町外からの参加者だけでなく、町内の参加者にも町の魅力を存分に伝える良い機会となったと言える。
参加者と地域の協力店舗の人や地元住民が交流する姿が随所で見られた
すでに次回の開催を見据えている同団。今回は牟礼エリアでの開催だったが、次回は、三水エリアないし全町での開催を目論む。子どもと大人の体力や集中力の差、競技の理解・浸透度、自転車利用の可否など、検討の必要がある課題はあるが、「第2回も必ずやります」と意気込んでいる。「遊友団は、野郎に限っているわけではないので、どなたでも参加してほしい。飯綱町でとにかく楽しいことを一緒にやりましょう」と松木さん。「The(ジ)遊友団」の名に込めた思いが、彼らの笑顔から伝わってくる。
「The(ジ)遊友団」
(後列左から)親谷茂さん、西村啓大さん、加藤貴彰さん、滝澤宏樹さん、小林徹さん
(前列左から)荒木淳也さん、松木靖さん、山城竜星さん、岩井敦史さん、中條翔太さん