トップライターKAORUさんゴツいパイプが張り巡らされた謎の施設はいったいナニ?保育園の駐車場で気になっていたコレの正体がついに明らかに!

ゴツいパイプが張り巡らされた謎の施設はいったいナニ?保育園の駐車場で気になっていたコレの正体がついに明らかに!

飯綱町に3か所ある保育園のひとつ、さみずっ子保育園は、2016年に新しい園舎に建て替えられました。東側駐車場の一角にそのときできた、何かの工場のように、金属のパイプが並ぶ小屋。いったい何なのでしょう?
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保育園が建った当初から気になっていたんですよね、コレ。
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ある朝、パイプ小屋で作業している方を見つけました。これは取材するチャンス! 何をしているのか、ちょっと聞いてみましょう。
 
KAORU「あのー、ずっと気になっていたんですけど、このパイプって何ですか?」
「これは地中熱ヒートポンプシステムです。今日は定期点検で、異常がないか、圧力や動作音を確認していました」
突然の質問に答えてくれたのは、株式会社角藤 環境ソリューション室の技術主任の大島栄次さん。大島さんによると、この駐車場には長さ75mにも及ぶ地中熱交換井というポリエチレン製の管が、縦に25本も埋まっているそうです。

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KAORU「地中熱ヒートポンプ?」
「地中と地表との温度差を利用して管の中に不凍液が循環します。この循環によって生じる熱をヒートポンプで取り出して、園内の床暖房や夏の冷房に利用する仕組みです」
地中10m以深の温度は、地域の年平均気温プラス1.5度前後で、一年を通してほぼ一定なのだそうです。飯綱町の年平均気温はおよそ11度なので、地中は一年中12.5度程度ということになります。大島さんにお会いした12月の午前10時現在の気温はマイナス2度、地中熱との差は14.5度あります。この温度差を冷暖房に利用して、消費電力の削減をしているそうです。

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車が停まっている駐車場の地下深くから、冬は熱を集め、夏は熱を放出しているなんて、とても不思議です。
さみずっ子保育園では、給食室と事務室以外の全ての部屋や廊下で、地中熱を利用した冷暖房システムが設置されています。特に3歳未満児の保育室や広い廊下は床暖房になっているので、まさに頭寒足熱、ペタッと床に座り込んで遊ぶ子どもたちにとても優しい環境です。ファンヒーターを焚いているわが家より、保育園の方が安定して温かいので、うちの子は家より一枚薄着にして登園させています。

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「触るとピッてなるのよ」と園長の矢野先生。カレンダーのような画面では、子どもたちのいる登園日と休日の稼働パターンを設定することができます。登園日は通常の冷暖房、休日は凍結防止の設定になっていました。

定期点検の際には、園長先生と相談しながら細かい温度設定も確認しているのだとか。時間帯ごとに温度の設定が変えられるなんて、省エネの工夫もしやすそうですね。

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冷暖房のほかにも、車椅子マークの駐車スペースから、建物事務室への入り口(3歳未満児入口兼用)と、3歳以上児の教室入り口にかけてと、白い屋根がかかっている部分は、地中熱を使った融雪システムが設置されているため雪の日でも歩きやすく、安全に登園できるようになっていのだとか。ちなみにこの白い屋根はキャノピーといい、庇や天蓋を意味する建築用語だそうです。

KAORU「飯綱町のような寒冷地は、地中熱利用が適しているのでしょうか」
「地中熱利用システムは日本全国で普及しています。北欧や北米では一般住宅にも多く使われているように、日本でも長野や東北、北海道などの寒い地域で導入が進んでいます」と大島さん。「夏場は、エアコンの室外機から大気中に放出される排熱がヒートアイランド現象の一因となって大きな問題とされていますが、地中熱ヒートポンプなら地中で熱交換を行い、温排気を大気中へ出さないので環境にやさしいんですよ」。
なるほど勉強になりました。

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「地熱発電」という、似たような言葉もあるのですが、調べてみると地中熱が地下10mから200m程度なのに対して、地熱は地下2,000mから3,000mにあるマグマ由来の熱のこと。地熱発電は地中深くから取り出した蒸気でタービンを回して発電する仕組み。地熱と地中熱は、一文字違いで大違いなんですね。
初めは保育園の駐車場にあるパイプ小屋も発電をする装置なのかなと思っていましたが、熱交換をする装置なのですね。地中熱ヒートポンプシステムは電気使用量もCO2も削減して、低騒音、おまけに地震にも強いそうです。
保育園に設置されているのと同じ地中熱ヒートポンプシステムが、飯綱町役場庁舎にも使われています。こちらは、役場西側の駐車場に22本の地中熱交換井が埋まっているそうです。

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株式会社角藤のHPで施工実績として紹介されているさみずっ子保育園

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通るたびに気になっていた「コレ」の正体が分かって、地中熱が学べて、とてもためになりました。突然の質問に丁寧に応えてくださった角藤の大島さん、ありがとうございました。飯綱町にも、こうしたシステムが導入されていると知り、CO2や電気量削減に取り組んでいるのだなあと感心しました。わが家でも、少しでも何か工夫できないかと、暮らしを見直してみようと思います。

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