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まさかの最終回? 農業倉庫が会場の夏フェス 中宿「田休みコンサート」が熱かった!

ビッグバンドの第1音は、中宿倉庫内の空気を膨張させたかのようにガラスを震わせ、一瞬にして私たちオーディエンスを鮮やかなジャズの世界へと連れ去りました。

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Hot Blizzard Jazz Orchestra。さまざまなジャズの名曲を披露し会場を沸かせました。

2022年6月26日、飯綱町の中宿地区で開催された第10回田休みコンサート。会場は、なんと昔の農業用の倉庫です。外は30度を超える暑く乾いた日でしたが、長野市を中心に活動するHot Blizzard Jazz Orchestraの演奏が始まると、雨がしたたる濃い緑に包まれたかのような空気感が会場を覆いました。
ふと見ると、指や足を動かしてリズムを取ったり、エアドラムを叩いている地元中宿の人も。6月半ばに田植えを終えて一休み、という時期に行われるこのコンサートには、「中宿倉庫」という日常の場所を、非日常の舞台にしてしまう魔法がかけられているかのようでした。

 

鶴ヶ島市龍神太鼓(埼玉県)。「太鼓が大好きなメンバーが揃っているんです」と話していた通り、とても楽しそう!

「田休みコンサートが始まったのは2011年。コロナ禍で2年中止になったけど、節目となる第10回を迎えることができてよかったよ」
そう話すのは、中宿倉庫田休みコンサート実行委員会の丸山優二さんです。
中宿地区は、飯綱町の中央からやや西に位置する全38戸の集落で、多くの家が農業を営んでいます。昔からの米どころで、善光寺の裏街道として参拝者が行き交った時代もあったそうです。
「『田休み』という文化は昔からどの地区にもあって、以前は日帰り旅行へ行ったりもしていたね。今じゃ田休みなんてほとんど聞かれなくなっちゃったけど、オレが百姓だからということもあって、その言葉を残したかったんだよね」と、丸山さん。
 
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じゅんさん(右)はユニット「Jun&Aya」としても演奏。ほかにもポップスやシャンソンなど、とても贅沢な内容でした。

倉庫でコンサートを行うようになったのは、2009年に、農協の持ち物だった中宿倉庫を地区が買い取ったことがきっかけでした。「字こぶしの木」という地名から取った「コブシノ木委員会」を設立し、倉庫の活用方法を話し合いました。そのなかで提案されたのが、倉庫の広さを生かした多目的ホールとしての活用でした。
「日本中どこもそうかもしれないけれど、ここでも高齢化と農業の担い手不足が問題でね。区の戸数も少なくなって、隣近所の付き合いも減ってしまった。でも、地域で知恵を出し合って盛り上げていくことで、中宿という集落は、もっといい集落になると思うんだよ。だから田休みの時期に、みんなで楽しめるコンサートを計画したの」
丸山さんが当時の倉庫番の役(係)だったこともあり、すぐに計画を実行に移しました。まずは飯綱町の「まちづくり活動支援事業」の補助を申請。そして、飯綱町在住メンバーが3人もいるHot Blizzard Jazz Orchestraなどに出演を依頼しました。コロナ禍前は、実に6組もの演者がパフォーマンスしたそうです。
 
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中宿からの風景。田園風景とリンゴ畑が広がるのどかな集落だ。

今回は、感染症対策の徹底が義務づけられていたことから、演者は3組と少なめ。積極的な集客はせず、観客のほとんどは区の住民となりました。しかしながら、ソーシャルディスタンスを取ることで会場はほぼ満員に。
ステージは、Hot Blizzard Jazz Orchestraのビッグバンドに始まり、丸山さんが初代団長と意気投合した縁で長年出演してもらっている鶴ヶ島市の龍神太鼓の皆さん、新曲キャンペーン中の母娘デュオ「准&彩」さん、そして歌謡ポップからスタイリッシュなシャンソンまで深みのある癒やしの声とダンスで魅せる「じゅん&ネネ」のじゅんさんに終わるまで、なんともぜいたくなプレゼンターたちの演奏で盛り上がりました。プログラムによって倉庫内の雰囲気がガラリと変わる、濃密な音楽体験となりました。


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実行委員の皆さん。前列右から二人目が丸山優二さん。

第10回を迎え、田休みコンサートは今回で一区切り。
「実は、実行委員会の中心は若手の女性が中心となって準備してくれていたの。これからは若い人たちがいろんなことを企画して、地域を盛り上げてくれると思います。田休みコンサートも、また違った形でできればいいね」と丸山さん。
中宿の夏フェスはしばしお休みとなりますが、いつかまたパワーアップして戻ってきてくれることを楽しみにしていますね! いろいろな世代が意見を出し合って、地区の人だけでなく多様な人たちが楽しめ、まちづくりに寄与できるようなイベントになることを期待しています。

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