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ヨガを続けて50年 松橋明さん

日本発祥の「沖ヨガ」は、インドの伝統的なヨガの教えに、日本の仏教や神道、東洋医学や食事療法と、さまざまな要素を取り入れた総合的なヨガです。
その創設者である沖正弘先生に学び、ヨガ歴はなんと50年! 長野自然ヨガ研究会主宰の松橋明さん(69)を、飯綱町倉井地区のりんご畑に訪ねました。
 

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松橋さんのりんご園「さみず草心舎」は、150アールの畑でりんごを減農薬栽培しています。

りんごの仕事と並行して、週に数回は、長野自然ヨガ研究会のヨガクラスで長野市、須坂市、飯綱町で講師として指導をしているという松橋さん。2014年に出版したご自身の著書をテキストに、初級者から上級者までが学べる教室を主宰しています。

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こばやしひろみち氏の挿絵入りで、ヨガとは何かから実習例、科学的なことまで解説されています

本のタイトルは、「りんご農家の体験から生まれたヨガ修正法~ヨガによる腰痛・肩こり解消法」(さみず草心舎)。
冬から春に行うりんごの木の選定作業(りんごの枝を切り形を整える作業)を終えると、毎年のことながら、腕や脚、体のあちこちが痛むそうです。過去にはぎっくり腰も何度か経験しました。そんな症状を、毎日のヨガによる調整で改善する方法としてまとめられています。
「何度も腰を痛めて、自分で回復させる方法を考えました。この本には、のび猫のポーズを中心に独自のアサナ(ヨガのポーズ)も紹介しています。私と同じような症状で悩む人が、少しでも参考にして痛みがとれるように使ってもらえたらいいと思います」(松橋さん)
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松橋さんは、幼少の頃から多くの病気を経験したそうです。喘息には長く苦しみました。
また小4の時に急性腎炎で入院すると、ステロイド薬の影響があってか、顔がまん丸に腫
れあがってしまったこともあったそうです。
中学生になると、バレーボール部で活躍するまでに回復しましたが、高校3年の大学受験
時に父親の村議選出馬、祖母の急逝、葬儀など家庭の混乱もあり胃腸障害で闘病し、19歳
のときに喘息の発作で再度入院することになってしまったといいます。
「医者にかかっても何も変わらない」と諦めかけていたときに目に留まったのが、ヨガの広告でした。「母親がとっていた婦人誌の付録の冊子です。さまざまな健康法が紹介されていました。ヨガのことは何も知らなかったけれど心身改造と書いてあった。なぜか、これだ!と思ったんです。沖ヨガ道場がある静岡県三島市にはちょうど伯父が住んでいて、親近感もあったね」

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大切に保管されていた50年前の冊子
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受講料は一般3,000円と当時にしては高額でしたが、松橋さんは両親を説得して、すぐに沖ヨガ道場に入門。日本全国、海外からも入門者が集まっていたそうです。道場は住み込みで、朝から晩までヨガ漬けの毎日でした。「断食(概ね1週間以上食事をとらないこと)まではできなかったけど、絶食(1週間以下)はやりました。初めは1か月間、その後間を開けて学校の夏休み前後3か月道場にいましたよ。沖先生は全世界に接点があって、あんなおもしろい人はほかに見たことがないですよ」。
学生時代はヨガクラブを作り、沖先生の講演会を開きました。
卒業後、長野市内に就職してからも、沖先生を年に1回長野に招き、講演会と合宿を催しました。
ヨガのほかにも、油絵やスキーと多趣味な松橋さん。
「家に入った方が自由にできると思って、29歳のときにサラリーマンを辞め実家のりんご園を継ぎました。でも、りんご農家をやってみると忙しくて、土日もないから、油絵もなかなか描けなくなってしまいましたよ」

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ご自宅に飾られていた松橋さんの油絵。サラリーマン時代は北信展や県展に出品し、入選の実績もあるそう。


ヨガの先生と聞くと、早朝から瞑想したり、りんご畑の中でヨガのポーズをとっていたりするようなイメージがあったのですが、松橋さんの日常はそうではないようです。
「朝はゆっくり寝ていますよ(笑)。ポーズをとることがヨガではありません。ヨガは3年間毎日やれば、そのあとは適当でも体はおかしくならないですよ。続けることが大切ですね」
今流行りのパワーヨガ(ハタ・ヨガ)とは違い、沖ヨガはポーズだけでなく心、身、食、息、生活、環境のすべてを改善することで、心身のバランスを回復させ、自己能力を開発するヨガ。松橋さんは、入浴中に行う5分ほどの呼吸法と、入浴後に足腰を調整することを日課としているそうです。
「三昧(サマーディ)とはヨガの8段階のうち、最後の8段目のことを言います。仏教用語で、集中して動揺しない、雑念を去り没入して対象を正しくとらえるという意味です。まさにりんごの作業は三昧の状態で行なっています。作業そのものがヨガなんです」
 

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飯綱町にこの道50年のヨガの先生がいらっしゃるとは知りませんでした。ヨガというと、身体が柔らかいとかスピリチュアルなイメージなどがありますが、心と身体を整えるはたらきがありそうですね。平常心でいることを心がけて過ごす日常こそが、ヨガに通じるということなのでしょうか。聞いているこちらの背筋が伸びるような、そんな心持ちになりました。

 

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