トップいいいいいいづなマガジン飯綱町の企業を訪ねて④ 信濃地鶏を育てる「信濃農園」

飯綱町の企業を訪ねて④ 信濃地鶏を育てる「信濃農園」

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北信五岳の山々に見守られた標高700メートルの森の中、昔はアスパラガス畑だったという少し開けた日当たりの良い土地に、数棟のビニールハウスが立ち並んでいます。広々としたハウス内には、元気に動き回る、白黒のまだらや白と茶色などさまざまな色合いの鶏たち。長野県が誇るブランド地鶏、信濃地鶏です。人の姿を見てエサの時間だと思ったのでしょうか、鳴き声がさらににぎやかになりました。
「高原なので夏は涼しいですが、日中暑くなりすぎないように日影を作ってあげたり扇風機を回したりして、鶏たちがストレスなく過ごせるように心がけています。冬は雪がかなり積もる場所なので、ストーブとコタツを用意してあげるんですよ」
そう話すのは、飯綱町で地鶏を育てている信濃農園の代表、山浦忠司さん。
「パドックが広いので、鶏たちはたっぷり運動ができます。水は農場の天然水を汲み上げて樋でかけ流し、いつでも鶏たちが新鮮な水を飲めるようにしています。北信濃の自然に囲まれたこの土地だからこそ、できる飼育法なんです」

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もともとは兄とともに土木建設業を営んでいた山浦さん。2000年頃から工事の入札価格が徐々に下がっていることに加え、工事の規模が大きくなるにつれ新たな設備投資が必要となることを危惧し、新規事業として農業法人を立ち上げることを決心しました。
「このあたりの三水地区は、昔から米とリンゴの名産地として知られています。でも、それでは年に1回しか収穫できません。私たちがやりたかったのは、家族だけでなく、従業員の仕事も確保でき、毎月お給料が払える農業です。それができるのは、畜産だということになりました」
畜産といっても、牛は出荷まで3年半、豚は1年半かかります。鶏は40〜50日で出荷となりますが価格が安いため、オートメーション化して20〜30万羽を飼育する方法が一般的。そして、それには膨大な設備投資が必要となります。
「それならば、広い土地で時間をかけて、少ない羽数を飼育する地鶏をやろうと思いました。手間暇はかかりますが、その分地鶏には付加価値もあります」
同じような豪雪地帯の気候のもとで飼育する、秋田比内地鶏の農園での研修を経て、2003年、信濃農園は200羽の信濃地鶏のヒナとともにスタートしました。

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そもそも、信濃地鶏とはどんな鶏なのでしょうか?
信濃地鶏は、オスの軍鶏とメスのホワイトプリマスロックの掛け合わせ。一般的な地鶏の定義では、「飼育期間が80日以上、飼育方法は1平方メートルあたり10羽以下の平飼い」と決められていますが、信濃地鶏は飼育期間が120日から150日、飼育方法は1平方メートルあたり2〜3羽。エサも、無抗生物質・無抗菌剤の地鶏専用飼料を使用しています。水は最初にも述べたように、飯綱町の天然水です。
「出荷日は、地鶏のおいしさを追求し、このくらいの日数になりました。それから、味を決めるのはなんといっても生育環境。とにかく鶏にストレスを与えないように努めています」

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信濃農園は、信濃地鶏の単独農場。生産量は減りますが、それも「生育環境、日齢、エサ、健康状態などを、自分の目の届くところで管理することができるから」という理由です。品質管理をさらに徹底させるため、山浦さんは会社の敷地内に食鳥処理場と食肉加工場をつくり、生産から加工までを一元化させました。
「鶏は捨てるところがないんです。もも、むね、手羽、ハツ(心臓)、砂肝、ガラ(骨)などのほかにも、背肝(腎臓)や白子(睾丸)、とさか、もみじ(足)、さえずり(気管)まですべて食べられます。自社で解体や加工を行うことで、お客さんへの注文にもきめ細かに対応できるようになりました。例えば、むね、かくまく(はらみ)、白レバーなど、部位ごとに必要量だけ注文していただけるんです」

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信濃地鶏の特徴は、適度な運動をしているため肉質に締まりがあり、鶏本来の噛みごたえと旨味があること。成熟した信濃地鶏には程よい筋肉が付いており、しっかりとした繊維が感じられます。弾力のある触感と、噛めば噛むほどにじみ出る滋味が楽しめるのです。

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2020年の春から初夏にかけては、新型コロナウイルス感染症による取引先の自粛の影響で、信濃農園の売上は9割以上落ち込んだといいます。ネット販売によりわずかに回復しましたが、それでも課題は山積です。
「これは、誰も経験したことがない災害だと思っています。ここを乗り切るためには、嘆いているだけではなく、ぼく自身も変わっていかなければならないと思うんです」と、山浦さん。これまでもソーセージやハンバーグ、スモークなどの加工品を取り扱っていましたが、さらに、家庭で楽しむための焼き鳥セットなどの商品開発もはじめました。

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「食鳥処理場では、ぼく自身が鶏の命をいただいています。自らの手で命をいただくようになって、その重みが身をもって感じられるようになりました。部位を増やしたり、加工品を提案したりして、捨てるところがほぼなくなったのもその頃からです。鶏たちの命を無駄にしてはいけない。その使命感をもってこの危機を乗り越えたい。そしていつか、飯綱町の名産品と呼ばれるようになって、町内外のお客さんに喜んでいただくだけではなく、支えてくれている飯綱町の仲間たちみんなと、新しい未来をつくっていけたらいいですね」

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〜信濃地鶏のむね肉の焼き方〜
「鶏の品質はむね肉でわかる」と、山浦さん。信濃地鶏のむね肉をグリルにしてみました。

①身の厚いところは包丁で開くようにして均等な厚さにします。シンプルに塩とコショウ(あれば岩塩とブラックペッパーで)、またはお好みのハーブやスパイスで味付けします。
②フライパンにオイルを入れて熱し、皮目から先に焼きます。強めの中火で焼いて、焦げ目が付いたら裏返し、中火に。
③火を止めてフタをして、少し休ませます。オーブン用の天板にのせて、予め180℃に予熱しておいたオーブンに入れ、様子を見ながら8〜10分ほど焼きます。脂に旨味があるので、ナスやズッキーニなどと一緒に焼くと風味が移って無駄なく食べられます。
④オーブンを止めて、予熱で2分ほど休ませます。いちばん身の厚いところに金串を刺して、先端が熱く、なおかつ金串を抜いたときの肉汁に血が混ざっていない透明の状態なら完成。火がしっかり通っていることを確認してくださいね!
※調理時間は目安です。ご家庭のコンロやオーブンに合わせて調整してください。今回は旨味を閉じ込めるため&まるごと焼くために先にフライパンで焼色を付けましたが、もっと手軽に、一口大にカットして野菜と一緒にオーブンで焼いても美味しく食べられます。また、鶏の唐揚げも山浦さんオススメの調理法です。お好みのレシピで試してみてください。

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信濃地鶏は、皮と肉との間にある脂の旨味が強く香ばしいので、ぜひ皮も一緒に調理してください。皮は香ばしく、身は弾力がありほぐれやすく、脂の旨味がすごい! 鶏むね肉の概念が変わるおいしさでした。もっと手軽に楽しみたい場合は、焼き鳥セットやソーセージがオススメです。通信販売のほか、飯綱町ふるさと納税の返礼品として選ぶこともできます。飯綱町内ではいいづなマルシェむーちゃん、農産物直売所さんちゃんなどで販売しています。

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食べチョク(信濃農園)
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