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トップいいいいいいづなマガジン飯綱町の企業を訪ねて③「北信五岳シードルリー」

飯綱町の企業を訪ねて③「北信五岳シードルリー」

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■旧三水第二小学校内にシードル醸造所が誕生!
三水地区の高台に、かつて子どもたちの声がにぎやかに響いた学校がありました。2018年3月に閉校となった、三水第二小学校。りんご畑と田園風景が広がるのどかな集落を見渡すように立つこの建物が、新たな仕事づくり、そして食と学びの場として生まれ変わりつつあります。

「私の家族は、昔から三水で『一里山農園』というリンゴ農園を営んできました。2005年から長野県内のワイナリーに委託し、シードルを製造してもらっていたのですが、2016年にそのワイナリーから、委託醸造から撤退するという連絡がきたのです。それで、ほかのワイナリーに委託をお願いするのか、それとも自分たちで醸造するのか、選択を迫られることになりました」
そう話すのは、北信五岳シードルリー株式会社 代表取締役の小野司さんです。

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小野司さん。実家は飯綱町三水地区の一里山農園。

小野さんはそれまで、横浜で仕事をしつつ、実家のシードルの営業を、東京などで行ってきました。2015年には日本のシードルファンを増やしたいと、「日本シードルマスター協会」を発足。セミナーやイベントを開催するなどしてシードルの普及に努めてきました。
シードルをPRしていると、「やっぱりシードルの本場はフランス。それに比べると日本のシードルはシードルじゃないよね」と言われることもあったそうです。
「しかし、実はシードルは、イギリスやスペイン、ドイツやアメリカでもつくられているんです。そして、それらがすべてフランス仕様なのかというともちろん違います。それぞれの国が、それぞれの国らしいシードルをつくっている。だとしたら私たちは、日本人にシードルを知ってもらうとともに、より日本らしいシードルをつくっていけばいい。そうすれば、日本にはこれだけの食文化があるのだから、いつかはシードルの名産地の仲間入りができるはずだと思いました」

■より美味しく日本らしいシードルを
2016年には「東京シードルコレクション」を初めて開催。想像を超える反響があり、手応えを感じたという小野さん。実家のシードルの委託醸造先がなくなるという話を聞いたのは、そんな矢先でした。
「これだけシードルが知られてきたし、リンゴ農家さんからは委託醸造したいという声も聞こえてくる。ということは、今度は自分たちの手で、より美味しく日本らしいシードルをつくる取り組みをしていく時期に入っているのだろうと考えるようになりました」
そんな中、同じようにシードルの醸造を考えていた、袖之山地区でりんごを育てる「のらのらファーム」の高野さんら現役員と出会いもあり、町内でのシードル醸造所建設の話は徐々に具体化していきました。そして小野さんたちは、飯綱町役場に事業立ち上げの相談に。リンゴを100%使ったシードルは、飯綱町が掲げる「日本一のりんごの町へ」というスローガンを支える産業のひとつになることを説明し、賛同を得ることができました。その時に「三水第二小学校が閉校となる」という話を聞き、自分達にも校舎の活用に協力できることはないかと考え始めたそうです。
「私たちがこのシードルリーで実現させたいことのひとつに、『シードルのファンを育てる』ということがありました。また、シードルを醸造したい人、委託醸造したい農家さんを育てることによって、シードル産地の魅力はより広がっていくとも考えていました。学校を舞台にやらせてもらえるのであれば、コンセプトも伝わりやすいし、公共の場でもあるので人に来てもらいやすいと思ったんです」
小野さんたちは、町民みんなの資産である校舎を使わせていただくことの理解を得るため、「第1回いいづな事業チャレンジ」に応募。結果、最優秀賞に選ばれ、閉校となった小学校に「林檎学校醸造所」を作るプロジェクトが正式にスタートしました。

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旧三水第二小学校。赤いシャッターの部分が林檎学校醸造所。

■リンゴの品種による収穫時期ごとの仕込み
2019年2月に果実酒製造免許を取得し、シードルの製造がスタート。リンゴは品種がたくさんあり、収穫期が少しずつずれているため、時期別にタンクに仕込み、「1組」「2組」とクラスの名前が付けられています。「各クラスの仕込みには、毎回10人近くの『クラスメイト』、つまり醸造作業に関わった農家さんや取扱店スタッフ、シードルファンの方々が、県外からも手伝いに来てくれます」と、小野さん。

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リンゴを破砕・搾汁する機械。

「現在(2019年10月上旬)タンクに入っているのは、8〜9月に収穫されるつがる、ブラムリー、高坂りんごをブレンドした1組です。10月にとれるシナノスイートや紅玉で仕込むのは2組、11月はふじなど多品種が3組となる予定です。4組以降は収穫時期が長いふじをベースに、配合を変えてみようと考えています。酵母やリンゴ品種の割合を変えて仕込んだときには、どんな味になるのかすごくワクワクしますね」と、笑顔を見せる小野さん。

そのほか、8月の極早生品種である夏あかりや恋空を使った「夏休みの思い出2019」など、単発でコンセプトシードルをつくることもあるそうです。

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伝統的な搾汁機「パッキング・プレス」。

こだわっているのは、製法。クラフトシードル、つまり手作り感あるシードルにしたいという思いから、工業的に圧力をかけて炭酸ガスを封じ込めるのではなく、瓶内で二次発酵させて酵母から炭酸を作り出すなど、昔ながらの製法を取り入れているそうです。

「発酵中に瓶の口を王冠で塞ぐことにより、酵母が作り出す炭酸ガスが液中に溶け込み、シュワシュワした泡となります。手間も時間もかかる製法ですが、きめ細かな泡は、酵母だからこそ作れるものなんですよ」

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手作業でシードルを瓶に充填。
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瓶内で二次発酵させ、きめ細かな炭酸をつくります。

■クラフトワイン・シードル特区からの前進を目指して
林檎学校醸造所の立ち上げにあたり、飯綱町は平成30年8月に「飯綱ワイン・シードル特区」の認定を取りました。特区に認定されると、本来は酒税法により年間6000リットル以上と定められている果実酒の製造規定量が年間2000リットル以上に緩和され、免許取得のハードルが下がります。
「現在はその緩和条件をクリアするために、飯綱町産のリンゴを100%仕様したシードルをつくっています。初年度から年間6000リットル以上というのはハードルが高い製造量なので、この特区制度はとてもありがたいです」と、小野さんは言います。しかし、北信五岳シードルリーの目標はそこにとどまりません。
「飯綱町が日本一の、リンゴの中心地を目指すのであれば、町内のリンゴにとどまらず、町外の『シードルをつくりたい』という人たちも受け入れるというのも、ひとつの方法だと思うんです。飯綱町にリンゴを持っていけば、美味しいシードルを醸してもらえる。飯綱町がそのような『シードルの町』となれば、新たな産業の形にもなると僕たちは考えます」

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初年度のシードルには、想像以上の反響があったそう。

今後は、6000リットル以上を確実に作れる見込みが立った時点で酒造免許から特区の条件を取り払い、近隣の市町村の農家さんからもリンゴを受け入れてシードルをつくりたい、と話す小野さん。
「町域にとどまらず、北信五岳が見える畑でリンゴを育てる農家さんと一緒に、シードルをつくっていきたいと思っています。そして農家さんもお客さんも、みんなが幸せになれるリンゴライフが送れればいい(笑)。『北信五岳シードルリー』とは、そんな思いから付けられた名前なんですよ」

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林檎学校醸造所 北信五岳シードルリー

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