「どうして人はこんなに 自分色に光っているんだろう-」
飯綱町・古町にあるフリースクール「みんなの学校」の児童・生徒たちが、学校祭「あきまつり」で行われたミュージカルのような劇「神様たちの大冒険」のフィナーレで、力強くこの一節を歌いあげました。
子どもたちは、個性あふれる日本の神々に扮して舞台を演じています。劇中には、不安でいっぱいな神様も出てきましたが、子どもたちは、この神様の存在を肯定します。このお芝居では、人の気持ちを痛いほど受け止める感覚がある子がいるおかげで、みんなが幸せについて考えることができることも表しています。
「あきまつり」では、午前に劇のほかチェロ演奏などを行い、午後は教室で習字や学習ノートの展示、総合学習の一つとして3年がかりで取り組んできた土壁の小屋作りの成果発表もしました。保護者や地域の人たちに囲まれた子どもたちは、照れくさそうな、それでいて充実した表情を浮かべていました。
一般的にフリースクールは、不登校の子や学校に行きづらくなった子などが通う学校とされています。ただ、「みんなの学校」はそれだけでなく、一人ひとりがその子らしく楽しく学べる教育が目標で、オーストリア出身の思想家ルドルフ・シュタイナーの教育理念をベースに、「自然体験」と「芸術体験」を学習内容の柱としています。
一般の学校と同じように、学年に応じて国語・算数(数学)・理科・社会・英語を学ぶほか、野外活動、木や羊毛フェルトなどの素材を使った工作や手芸、人の体を楽器に見立て、音楽などを自然の動きで表現する「オイリュトミー」などで学びを深めます。いわゆる通知表やテストはありません。
子どもの主体性を大事にしている「みんなの学校」ですが、最初から学習環境が整っていたわけではありません。小中学校の教諭をしていた池田聡子さんが2011年、長男にホームスクールのようなことを始めたことがきっかけでした。そして翌年、長野市の親御さんから「うちの子もお願いします」といった依頼もあったことから、2013年から「学校」の形を取りました。
現在は、小学校1年生にあたる「1年生」から中学3年生の「9年生」までの10人余が町内や長野市などから通っています。古民家をリノベーションした学び舎は、1年から3年までの低学年、4年から6年までの高学年、7年から9年までの中等部の3教室に分けられています。
「みんなの学校」にも、実際に不登校を経験した子もいます。しかし母親の一人は、「ただの『居場所』としてだけでなく、しっかりと学ばせてくれるフリースクール」と評価します。また、町内のシュタイナー教育の考え方を取り入れた認定こども園に通ったことから、とても自然な形でこの学校を選んだ、と教えてくれた親御さんもいました。
いきいきと目を輝かせて、大自然の中で学びを深める子どもたちですが、あくまでフリースクールのため、義務教育の間は一般の学校に籍を置いておく必要があります。池田さんは、受験を控えた中学3年生がいる2019年度は少し緊張していると言います。
「あきまつり」に訪れた高校教諭は、子どもたちと触れ合い、「こういう学校がこんなところにあるのか、とびっくりした」と好意的な感想を語ってくれました。フリースクールの存在意義が社会に浸透してきたことや、学校を知ってもらいたい、という学校祭の目標の一つも果たせたのではないでしょうか。
飯綱町の豊かな自然の中で「自分色」を育て、羽ばたいていく力を培う「みんなの学校」。これからも見守っていきたいですね。