猛暑続きだった夏もようやく過ぎ、夜になると庭から一斉に虫の音が聞こえてくる。標高が高いこの町は、秋の訪れが早い。庭の草花も、季節を知らせるものが目立ってきた。秋の庭を装うものたちをちょっと探してみよう。
春に白い花を咲かせたサルナシが、ふっくらとした実をつけた。サルナシの語源は、「サルが食べる梨」ということからきているらしい。もともとは山に自生していた果物なので、あまり知られていない。皮がシワシワになってくると完熟のサイン。皮はつるっと剥け、口に入れるととてもあまーい。キウイフルーツの原種というだけあって、その断面はまるでキウイの赤ちゃんだ! ジャムやお酒に漬けてもいいが、生で食べるのが一番おいしい。
猛暑と水不足の影響で、今年のホウズキはいつもより小さく、色づきも遅かった。しかし、お盆が過ぎる頃になると見事に赤く染まった。昔はどこの農家の庭先にも自生していたホウズキ。実の中身をていねいに揉んで抜き、皮一枚になったら口に入れてみよう。舌の上で空気を入れ、膨らまして唇で押さえると「ブーッ」と音がする。皮を破らずに、種をうまく出すのがけっこう難しい。
ギボウシは基本的に葉っぱが主役。しかし、この種類のギボウシは甘い香りを放つので、花が主役。咲く時期はギボウシの中でも遅く、夏から秋の彼岸過ぎになる。今年は花芽がつかずあきらめていたら、何と木陰にひっそり隠れるように咲いていた。花瓶に挿すと部屋中が甘い香りに包まれ、とても幸せな気分になる。
庭の片隅に育てている人が多いミョウガは、晩夏から初秋にかけて登場する秋を告げる風味だ。独特の香りと特有の紅色がいろいろな料理で活躍する。天ぷらや酢の物、みそ汁の具など食材の幅は広い。ミョウガなくしてこの季節は送れない。「ありがとう」と言いたくなる。
二度咲きのバラがひときわ華やかに咲いた。そこだけ急に明るくなる。
甘い香りとつぶつぶの実。底の部分が割れかかったら完熟のサイン。いちじくは追熟しないので、完熟の状態をうまく捉えて収穫する。あと一日待とうとすると、鳥たちに先を越されることもしばしば。鳥に食べられる前に収穫し、コンポートにして保存するのがおすすめ。
毎年種がこぼれて咲くコスモス。いつのまにか増えているススキの群れ。どちらも澄んだ秋空によく映える。秋の庭には欠かせないアイテムだ。
自然豊かなこの町の秋、人も自然も忙しい。果実は実り、お米は収穫の時期。あたりの山々は冬に向かって最後の装いを楽しませてくれる。まばたきしている間に通り過ぎてしまう豊穣の秋を、しっかりと楽しもう。