
飯綱町には、「飯綱町学校給食共同調理場」という場所があり、町内の小中学校の給食は全てこの場所で作られます。地元民である私、サチヲも、中学生時代はここで作られる給食を食べて育ちました。飯綱町の給食は美味しいという評判を聞き、給食を作る人、届ける人たちを取材してきました。

今回はなんと3回にわたり給食を試食! 献立は次の通りです。
1回目(2月16日)

ごはん、牛乳、いかの生姜焼き、春雨サラダ、麻婆豆腐
2回目(2月20日)

米粉パン、牛乳、キャベツメンチカツ、切り干し大根のサラダ、ABCスープ
3回目(2月27日)

コッペパン、牛乳、カレーココット、フレンチサラダ、千切り野菜スープ
給食を食べるのは10年ぶり! トレーの正しい位置に主菜副菜と並べられたこの“THE給食”の光景にとても感動しました…!
麻婆豆腐をひと口食べて、学校給食おいしくて大好きだったな〜とあの頃の光景を思い出し、ごはんをほおばると、給食で出るお米ってこんなにおいしかったっけ?!と衝撃を受けました。アルファベットのマカロニが入ったABCスープは、食べながらよくこっそり自分の名前のAやYを探したりしたなぁとしみじみ。ボリュームもしっかりあって大満足の給食を3回も味わわせてもらい、非常に感慨深かったです!

現在、飯綱町学校給食共同調理場では、小学校2校・中学校1校の給食をつくっています。毎日700食ほどを調理するのは、約12名の調理員さん。調理場を覗くとテキパキとスピーディーに、重いものもどんどん運ぶパワフルな様子が見られました。

調理場について説明してくださったのは、飯綱町教育委員会の学校給食係長 橋詰利道さん。人手が足りないときは、橋詰さんも調理場に入り作業する日もあるそうです。

飯綱中学校の敷地内にある調理場で作られた給食は、小学校2校へ車で配達しています。届けているのは、運転手・施設管理員の高野竜次さんです。給食を届け続けてかれこれ14年!「冬の配達は大変だけれど、待っている子どもたちがいると思うと頑張れます」

給食に使われる野菜を毎日配達しているのは、塚田商店の塚田和彦さんです。「必ず届けなきゃいけないから、具合悪くなってなんかいられないよ!」

給食に携わる人たちの強い責任感とチームプレーで、毎日の美味しい給食は子どもたちに届けられています。

献立を考えているのは、栄養教諭の江澤香さん。献立は2か月ほど前に決めるそうですが、毎日のメニューを考えるのは大変そうです。献立づくりで大切にしていることは何かとうかがうと、「いろんな食べ物や料理を知ってもらいたいと思っています」と江澤さん。
もしかしたら今の時代も、そしてこれから先は、家庭の食卓には出てこなくなってしまうメニューがあります。昔ながらの和食です。おからやひじきといった料理は、食べる機会がなければ一生食べなくなってしまうかもしれません。そういった伝統や歴史ある食材や料理を取り入れるようにしているそうです。
「家庭で食べなくなってきているものも、給食で経験させてあげられたらと思っています。将来、一人暮らしをしたときとかに自分の手で作って食べてほしいです」
また、「大きくなったときに、“自分たちの給食ってさ、こんなだったよね”って話題に上がるような給食を作りたいですね」と話してくれました。


飯綱町ならではの給食の特色を聞くと、規模が小さいからこそできることがあるのだといいます。例えば、子どもたちに人気の揚げパンやシュガートーストのようなメニューは、規模の大きい調理場では出来ないそうです。飯綱町の規模だからこそ、パンにひと手間を加える作業が出来るのですね。
「あと、ここ(共同調理場)に勤めていると、子どもたちの顔が見れるんですよ」と江澤さん。調理場は、飯綱中学校の敷地内にあります。そのため、子供と一緒に給食を食べ反応を見ることができ、ちょっとした会話で子どもたちから直接、感想を聞くこともできるのだとか。子どもたちのリアルな声が、江澤さんのやりがいにも繋がっているんだそうです。「誰のための給食か」が見える、それも飯綱町の給食の大きな特徴なのかもしれません。

もう一つ、飯綱町ならではの特色は、地元食材が積極的に使われていることです。お米は100%町内産。日常的に多く使われる味噌も、地元産の大豆を使って作られたものです。夏には、きゅうり、なす、ピーマン、かぼちゃなどの野菜も多く登場します。すごいですね!
ただし、地産地消は簡単なことではありません。
「使いたい食材が、必ずしもあるわけではないんです」(江澤さん)
そもそも生産されていなかったり、量が足りなかったりすることもあるといいます。特に冬場は、地元産が使えるのはお米くらい。小さな町であるが故に、その年の天候や季節によって供給量も変わってしまいます。
そして飯綱町ではこんな取り組みも進められています。「オーガニックビレッジ宣言」です。

国の「みどりの食料システム戦略」に基づき、農業者だけでなく、事業者や住民も含めて、持続可能な地域農業を目指すというものです。飯綱町は有機農業の生産から消費まで地域ぐるみの体制で取り組むと表明しています。
そのため給食でも、有機栽培の食材を積極的に取り入れる流れを築き始めています。有機食材が使われている日は、子どもたちにそのことを伝える取り組みも行われてきました。
「まずは、料理によって使える場面で取り入れていくことから始めています」(江澤さん)。
しかし、有機野菜は形が不揃いで、規格に満たない大きさのものが多くあり、葉物野菜では、虫が混入する問題など、課題もあります。決められた時間で給食を作らねばならない調理員さんにとって、調理工程が増えるという問題が立ちはだかります。現在は、規格外野菜にも対応できる機械を導入したり、調理工程を工夫したりして、現場になるべく負担がないようにしているのだとか。

地産地消だけではなく、有機野菜の取り入れにも力を入れ始めている飯綱町。導入の過程にはさまざまな困難があり、現場では多くの試行錯誤や調整が行われ、大変さがひしひしと伝わりました。そんな課題と向き合い、実現に向けて奮闘している方もいます。飯綱町地域おこし協力隊として活動する青山純子さんです。子どもたちに安全安心で新鮮な食材を届け、生産者と直売所と調理員を繋ぐことを目的とした給食コーディネーターという役割を担っています。


青山さんが感じる飯綱町の給食の魅力をうかがうと、「移住してきて実際を知って感じるのは、子どもたちは現時点でも新鮮で美味しい食材を食べることができているということ。子どもたちは、給食を楽しみにしていることを話してくれて、美味しいんだよ!と自慢してくれるんです」
学校給食となると規模が大きく食材を大量に使用するため、どうしてもハードルが上がってしまいますが、保育園の給食では、地元の野菜が使われる頻度が増えているそうです。
「2025年度では7月から10月までほぼ毎日地産地消の野菜を保育園に届けられました。9月には2日に1度、有機野菜を使っていただいてました。加工品などはまだまだハードルが高いのですが、ハチミツをつくっている養蜂家の方や、いろいろな種類のりんごジャムを作ろうとしている方など、協力的な方々がいらっしゃるので、地元の加工品の提供が実現できたら、子どもたちに飯綱町で育ったからこそ味わえる食を知ってもらえると思います」
取り組みは動き出しましたが、まだまだ課題はたくさんあると言います。
「生産者さんを含め、給食に携わる方々などの思いは、『子どもたちに美味しい給食を食べてもらいたい』『給食をなるべく地産地消にしたい』と共通しています。でも、地産地消給食は、地元の野菜を使えば出来るというものではなく、野菜を育てる農家の人、献立を考える人、調理をする人、野菜を運ぶ人など、たくさんの人の手と思いが重なってようやく実現に一歩近づくものです。それぞれの立場の人たちが、定期的に顔を合わせて、お互いの顔がわかるコミュニケーションをしていくことが、地産地消給食の実現につながると思っています」

青山さんが協力隊として就任する前は、農産物直売所さんちゃんの店長、岩村麻友美さんが給食に地元野菜を届けるお仕事を担当していたんだとか。
「私一人ではお店の営業もあるのでできなかったことが、青山さんが来て、配達してくれて、農家さんに直接伺うようになったことで、給食に使われる野菜の種類や使用量は確実に増えました」
給食用の野菜を依頼するのは、実際に給食を食べているお子さんやお孫さんがいる農家さんをなるべく優先するようにしたいと岩村さん。“誰のための給食なのか”を意識することがとても重要だからだと言います。
「給食に使用する野菜を出荷するためには、高い基準や厳しいルールをクリアする必要があります。それでも農家さんたちは、自分の家族や子どもたちにおいしい野菜を食べてほしいからと、日々野菜づくりに向き合ってくださっています。私自身も小学生の娘がいるので、我が子が食べる給食だと思うからこそ力を尽くせると感じています」

今回の取材を通して、現場にいるからこそわかるリアルな状況をうかがい知ることができました。飯綱町の温かくて、工夫が凝らされていて、美味しい給食は、この町ならではの特長だったんだなと、10年越しに気付かされたサチヲでした。今まさに私の3歳の娘が飯綱町で育っています。成長したら給食を食べる日が来るので、もう少し大きくなったら生産者さん、栄養士さん、調理員さん方の話をしてあげたいなあと思いました。
子どもたちへのあたたかい想いが詰まった飯綱町の給食。この魅力がどうか多くの人に、そして子どもたち本人にも届きますように。