
2025年度の秋から冬にかけて「いいづなまちカイギ」が開かれました。
これは、みんなで未来の飯綱町について考える話し合いの場です。さまざまな立場の人が集まり、率直な意見交換が行われました。
ここで出た声は、町の総合計画に反映される意見として町に届けられる予定です。
そんなまちカイギの「移住編」と「女性編」のレポをお届けします!
【移住編】
「移住編」には、移住してきた方、Uターンで戻ってきた方、地域おこし協力隊OB、地元で事業を営む方などが集まりました。
まず語られたのは、移住してよかったことについて。豊かな自然はもちろんですが、何度も出てきたのが「人のあたたかさ」という言葉でした。
新規就農を目指して移住してきた方は、秋祭りの獅子舞に参加したことがきっかけで地域の方と知り合い、不動産市場に出ていない空き家を紹介してもらって住まいが決まったそうです。また、協力隊として移住した方も、祭りへの参加からつながりが広がったということでした。

一方で、移住してきた当初はなかなか情報が入ってこないという声も。
「引っ越してきてまだ知り合いがいなかったとき、どこに何があるのか、どういう制度があるのか、そういうのがわからなかったですね。だけど人と繋がっていく中で、教えてもらうようになりました」
また仕事の形態によっては、知り合いを作るのが難しいことも。
「私はテレワークをしていたので、地域の人と繋がるっていうのがなかなかできなくて。移住してきて、どうやって地域に入り込んだらいいのかがわからなかったです」
このように、困りごととして多かった意見が「情報の取りにくさ」。役場のサイトやLINEグループなどに情報はあるものの、空き家や畑、近所のお祭りなど、暮らしに直結する情報はネットではなかなか見つからないようです。
「空き家バンクのサイトを見ても、なかなかいい物件が出てこない」
「お祭りに参加したかったんだけど、いつの間にか終わってた」
こうした経験は、多くの移住者に共通するもののようでした。
では、みんなどのように情報を得ているのでしょうか。その答えは「人づて」でした。
実際に住んで知り合いができてから、お祭りの日時を教えてもらったり、空いている畑を紹介してもらったり。実用的な情報はネットではなく、地元の人との日常会話を通して得られることが多いようでした。
町で知り合いをつくるきっかけにはいいかもしれませんが、人によってはなかなか難しいかもしれませんね。

ここで存在感を示したのが、地域おこし協力隊の役割です。
飯綱町は協力隊の人数が多く、SNSでの発信や地域での活動を通じて、さまざまな情報を持っています。「移住者でありながら地元の人とも繋がっている」という立場なので、地域おこし協力隊の活動報告会などに足を運び、知り合いになって、地元の人との繋がりをつくる足がかりにする方法もいいかもしれません。
また、いいづなコネクトやみつどんのお家(飯綱町ワークセンター)、飲食店など、町内には移住者と地元の方が自然と交わる場がいくつかあります。そうした「混ざり合う場」も、飯綱の情報ネットワークを支えているようです。
もし、移住を検討していて話を聞きたい場合や、移住してから知り合いを増やしたい場合は、まずはこういう場所に足を運んでみることも一つの方法です。
仕事についての話題でも、興味深い話が出ました。「町内には仕事が少ないが、必ずしも町内だけで仕事を完結させる必要はないのでは?」という意見です。
「飯綱に住んでても、仕事は長野市や中野市へ通勤する会社員の方はとても多いし、逆に長野市に住んでこちらに働きに来ている人もいます。また、旧三水村側の人は中野市が近いですし、旧牟礼村側の人からすると長野市へ行きやすいなど、行動範囲も住んでいるエリアによって変わります。だから、自分の生活圏は行政と一致しないことも多いし、それが自然だと思います。今はリモートなどもできるので、自分が東京でやってたことを、独立してこちらでするなど、自分で仕事をつくるということを考えてもいいかもしれません」
一方で、柔軟な働き方をつくる取り組みとして「特定地域づくり事業協同組合いいコネワークス」についても紹介されました。これは、一つの働き方だけでなく、複数の仕事をするマルチワークの制度。自分のライフスタイルに合わせて働く時間や内容を決められたり、さまざまな仕事を試してやりたいことを見つけるなど、柔軟な働き方ができるという利点があります。こちらはまだスタートしたばかりとのことですが、選択肢のひとつとして注目を集めそうです。

議論を通じて見えてきたのは、「情報は人が運ぶ」ということと、「人が集まる場があれば、自然と繋がりは生まれる」ということ。
最初の一歩さえ踏み出せれば、そこから自然と輪が広がって行きます。でも、その一歩をどう踏み出すか。
行政に意見を届けて枠組みを作ってもらうのも一つの方法ですが、どうしても時間がかかりますし、そもそもすべてを行政に投げるだけでいいのかという意見もありました。
まず自分たちが動いて仕組みを作り、そこに人や行政を巻き込んでいく。そんな方法を模索していくことこそが、住民主体のまちづくりに繋がっていくのかもしれません。
【女性編】
次に開催されたのは「女性」をテーマにしたまちカイギ。第1回目には、子育て中のお母さんを中心に、子育てを終えた世代、飲食店経営者、元保育士さん、まちづくり会社のスタッフなどさまざまな立場の方が集まり、2回に分けて行われました。

まず意見が多かったのが、保育園の困りごとです。
「2人目が生まれたのに入れなかった」「自営業で復帰を急ぎたいのに、年度途中の受け入れが難しいと言われた」など、未満児の保育ニーズが急増しているのに、保育士不足から受け入れ体制が追いついていない現実が語られました。
土曜保育にも独特の負担があります。
給食が出ないためお弁当を持参することや、毎回布団を持ち込まなければならないこと、土曜保育が園の持ち回りで行われているため、通っている園とは別の園に預けるケースがあることなどです。
「仕事があるから預けたいのに、そのためのお弁当を作らなければいけないから、早く起きなくちゃいけない」「子どもが2人か3人いたら、布団を抱えての送迎がどれだけ大変になるか」。そんな意見が上がりました。
土曜保育の負担が大きいから、結局おじいちゃんやおばあちゃんに預けて仕事に行く。そうした「仕方なく」の選択が積み重なっている現状が語られました。

しかし、同居世帯は減り、状況は大きく変わっています。88歳のおばあさんに預けているという参加者は「子どもが走り回るようになったら、もう無理だと思います」と話します。1人で育てる人も増えている社会の変化に、制度が追いついていない。それが、この場で共有された実感でした。
また、情報が得にくいということは、こちらでも課題として上がりました。
例えば保育園の入園申し込み。初めての子どもの場合、いつまでに入園申し込みをしなければいけないのかなどの情報収集は自分でしなければならないのですが、最初の子どもが産まれるときは「何がわからないかもわからない」ような状態ですよね。
「母子手帳をもらうとき、保育園の流れを1枚のペーパーにまとめて渡してくれるだけでずいぶん違う」という意見は、これからのお母さんたちのために、ぜひ実践してほしいですね。

そんななか、「行政に何とかしてと丸投げするだけでは進まない。まず自分たちで小さく動いて、実績を作って見せていくほうが、この規模の町では効果的」という提案が出ると、議論は一気に具体化しました。
土曜保育のお弁当問題に対しては、人数分をまとめて町内の飲食店にケータリングをお願いしたらどうだろう。布団問題についても、まちづくり会社の施設にある洗濯乾燥機を活用した有償サービスの需要があるかもしれない。
もちろん、まだ最初のアイデアの段階ですが、自分たちが直面している課題から解決方法を模索するという、建設的な動きに繋がった瞬間でした。

民間で試行できることはまず小さく始める。その実績とデータをもとに、行政への具体的な提案につなげる。そんなふうに、「行政を待たずに、でも行政と一緒に」というスタンスこそが、飯綱町のような小さな規模の自治体で一番効果的なのかもしれません。
小さな困りごとに本気で向き合う人たちがいるこの町は、きっと暮らしやすくなる。いいづなまちカイギは、そう感じさせてくれる場でした。