トップライター高井里菜さんコーヒーの香りからはじまる、飯綱町での暮らしの話~「はじめの一歩交流会 」開催レポート

コーヒーの香りからはじまる、飯綱町での暮らしの話~「はじめの一歩交流会 」開催レポート

雪が降るかもしれないね、と話していた前日までが嘘のように、この日は珍しく、青空が広がるあたたかな午後になりました。昨年12月11日に開催された「はじめの一歩交流会」の会場は、飯綱町役場近くの商店街にあるカフェ「パカーンコーヒースタンド」。淹れたてのブレンドコーヒーと、やさしいハーブティーの香りが店内に広がります。

あたたかい飲み物を片手に、参加者がぽつぽつと集まりはじめました。子連れの参加者の赤ちゃんの声に、みんながにっこりと目を細めています。堅苦しさはなく、「居間に集まった午後」のような、やわらかな空気のなかで交流会は始まりました。

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この日集まったのは、飯綱町に移住してきた人、これから移住を検討している人、あわせて十数名。

移住してきた方は「同じ町の中でも、エリアによって雰囲気が違う気がする」。そんな感覚を、なんとなく持っていたり、話に聞いたりすることもあるようです。そこで今回は、実際に飯綱町で暮らしてきた人の話を聞きながら、「飯綱町の地区の違い」をテーマに地図を囲んで町をほどいていくことになりました。

ゲストスピーカーは、2023年1月に移住し、旧三水地区に暮らしながら3年間集落支援に取り組んできた三原彩音さんと、28歳で移住して以来24年、旧牟礼地区で町の変化を見続けてきた西村啓大さんのお二人。それぞれの立場から、飯綱町の成り立ちや暮らしの実感が語られていきました。

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まず話題にあがったのは、飯綱町が「牟礼」と「三水」という二つの村が合併してできた町だということ。地図を囲みながら浮かび上がったのが、国道18号に沿うように流れる鳥居川でした。つまり鳥居川が自然境界線であったことがわかります。

「鳥居といえば神社。どこの神社でしょう?」と西村さん。
「……戸隠?」
 「そう。鳥居川は戸隠から流れてくる水なんです」

さらに、鳥居川は大昔は別の方向に流れていたものが、黒姫山の噴火によって流れを変えた“奇跡の川”だという豆知識も教えてもらいました。境界線は、単なる境目ではなく、土地の記憶そのものなのだと感じさせる時間でした。

三水の話では、「用水」がキーワードに。“三つの水”と書く三水は、古くから用水とともに暮らしてきた地域で、象徴的なのが芋川用水です。飯綱の田畑を支える水路は、信濃町方面から始まり全長はおよそ40kmもあります。
「フルマラソンできるくらいの距離で、しかもゆるい下り。散歩にもいいし、冬はクロスカントリーにもなるんですよ」(西村さん)
 暮らしのインフラが、そのまま風景や遊びにつながるように例えられ、参加者からは「芋川用水を見に行ってみたい」の声が上がります。

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一方の牟礼は、「牟礼宿」という北国街道の宿場町として栄えた記憶と、昭和の別荘・リゾート開発の歴史をあわせ持つ地域という特徴があります。「牟礼は開発、三水は農村」と言われるように、まったく違う歴史・特徴を持つ村が合併したという事実を知り、参加者はそれぞれの暮らしのイメージを重ねていました。

移住者が特に気になる自治会の話も、率直に共有されました。
草刈りや道普請、お祭り、消防団、町民運動会、球技大会、どんど焼き……と、さまざまな催しがあり、移住者にはとまどうことも多いかもしれませんが、移住の先輩たちからは、「全部は無理でも、草刈りや道普請などのインフラ整備には必ず出た方がよいでしょう」とのアドバイスがありました。

とはいえ、町内にはご近所付き合いや自治会活動が都会に近いようなエリア(福井団地や扇平団地などの新興団地)もあります。自治会活動に関しては、うやむやにしたり、無理に合わせたり、ましてや拒否したりするのではなく、「これは参加します」「それは遠慮させてください」などときちんとコミュニケーションを取ることが大切です。

できれば、家探しの際に地域の人に相談して、希望のエリアがどんな地域なのか、自分は地域に入り込むのが合っているのか、新興住宅地がいいのかなどをイメージしておくといいでしょう。そうした上で、特に移住一年目は、「『まずは見学させていただきます』という感じで、どんなことをやっているのか足を運んで覗いてみることをおすすめします。自治会活動が盛んで夜通しお祭りをやるような地区もあり、面白いですよ」と西村さん。

話のなかで印象的だったのが、牟礼と三水で自治会の呼び方や仕組みが違う、という話です。三水では「区」という単位の下に「組」という単位があり、「組」の代表は「組長」と呼ばれます。牟礼では「区」が自治会の基本単位で、「区長」が中心となって動いています。三水でいう「組」が牟礼でいう「区」と同じような単位ですが、牟礼の「区」が独立してそれぞれ活動を進めるのに対し、三水は「組」の上に「区」という単位があるので、「区」にお伺いを立てながら「組」としての活動を進めています。合併したものの町内でまだ統一されていないので、最初はちょっと混乱するかもしれませんね。

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地区の違いについて理解したところで、次は参加者の皆さんと「飯綱町の好きなところ」を出し合いました。

「人が本当に優しい」
「四季折々の変化を全身で感じながら一年を過ごせる」
「道が多くて、景色が見る場所ごとに変わり飽きないところ」
「小さい町だけど、長野市に近く暮らす上での利便性がばっちりなところ」
「集落活動が盛んで人がこの町をつくっていることを感じられること」
「牟礼と三水の両方の良さが混じり合っていること」

観光目線の言葉ではなく、暮らしの体温で語られる“好き”がリアルで、飯綱町を思う気持ちがあふれ、場の空気をやさしく包みました。

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そして最後に、ゲストを交えた参加者同士で、町内のお気に入りのスポットや気になる場所を共有し合う、地図ワークを実施しました。

参加者は、引っ越してきてまだ数週間と移住したてほやほやの方から、もう移住をして十数年経つという方、そして現在飯綱町への移住を検討中で、県内他市町村から参加された方までさまざま。それぞれの視点から、ポストイットに思い思いのスポットを書き込み、大きな集落地図上に貼り付けていきました。

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  参加者からは以下のスポットが共有されました。
●     高坂の農道:棚田と町が見下ろせる景色が最高/散歩におすすめ
●     ブレーメン(ピザ&ポニー)→天狗の館(温泉)コース:食べて浸かって幸せルート(天狗の館の冷鉱泉のお風呂が好き、という声も!ご飯もボリューミーで美味しい)
●     町民会館の新しくなった図書館:窓際が気持ちよく、北信五岳が見える“穴場”
●     小玉古道:古間駅に抜ける道に電車が見えるのがきれい
●     北国街道の古道(古町周辺):歩いた先に牟礼駅周辺のお店に立ち寄って一息つ  くこともできる
●     レストランLOOK:景色がいい、美味しい
●     黒川神社〜小学校方面へ抜ける道(裏側の景色):田んぼが広がり気持ちいい
●     袖之山周辺の桜スポット:しだれ桜、桜越しの景色がきれい
●     平出の棚田が見える細い道:走るだけでも気持ちいい(春はカタクリも!)
●     羊が40匹いる場所(普光寺西部の奥の方):観光牧場ではないので声をかける(意外な推しスポットとして登場)
●     水島牧場:観光牧場ではないので声をかける
●     東柏原のお散歩道(個人整備の散策路・ベンチあり):神社に車を置いて歩ける、山を越えて芋川の方に下りていける
●     サンクゼール:やっぱり絶景
●     戸谷峰(とやみね):日向に向かう途中の道、飯綱山がきれいに見える絶景ポイント
●  牟礼の水芭蕉園:駐車場からすぐ見られる春の楽しみ(GW前あたりが目安)

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完成したみんなの「町内推しスポットマップ」

飯綱町を知る一歩は、地図や制度だけではなく、生の人の声から始まる。そんなことを、コーヒーの香りと一緒に感じる午後でした。

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