北信五岳道路沿い、田園風景を見渡すロケーションに立つ長崎電機商会。50年以上にもわたってまちの生活を支え続けてきた老舗の地元企業で、最近は、古民家などをセルフリノベーションする人の駆け込み寺としても機能しています。
その建物の一角に、なにやらオーセンティックな雰囲気ただようアンティーク調のドアがありました。扉を開けると、ダーク系の色で統一された、イギリスのバーのようなインテリア。2022年5月にオープンしたカフェ「GREENVEIL(グリーンヴェイル)」です。
「実は、2021年が長崎電機の50周年。この年を目安に建物を改装する計画があったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期となってしまったんです」
そう話すのはカフェ部門のスタッフの方。
「新型コロナのこともあって、大々的に宣伝ができなかったのですが、今年に入ってから世間の雰囲気も変わってきました。新聞に折り込み広告を入れたりして、みなさまにゆっくり知っていってもらおうと思っているところです」
インテリアは、内装屋さんと相談しながら「壁紙は深い緑、天井も茶色に」「間接照明はこんな雰囲気で」など細部にわたるまで考えたそう。完成したときには「思った通りの店舗になった!」とスタッフ一同感激したそうです。
「困ったのはメニューでした(笑)。地域の人たちに利用してほしい店だったので、いっそのこと利用するであろう当事者に話を聞こうと、このあたりの人たちに集まってもらったんです」
どんな料理が食べたいかアドバイスを求めたところ、「そば」「うどん」「パスタ」「カレー」など、みんなそれぞれ好きな料理を上げていきます。「もうたくさん出すぎて、これはさらに困ったなと(笑)。そんなところから始まったんです」
ランチはパスタを中心に設定。地元の方が来たときに食べてもらえるようにと、そばやうどんなどもメニューに採用しました。夏は冷たく、冬は温かい麺類にして、地元のお年寄りに喜んでもらえるように工夫したそうです。また、北信エリアはきのこの名産地でもあります。「地元のきのこをたくさん使いたい」と、「きのこのかき揚げそば」や「きのこパスタ」などでメニュー展開しました。
いちばん人気は「アフタヌーンティ(要予約)」です。イギリスのティータイムに出てくる、デザートと軽食が3段プレートに載せられた豪華な一品。内容はそのときによって変わりますが、下からサンドイッチ、真ん中はスコーンのフルーツジャムや生クリーム添えと、季節のフルーツ、上段はケーキ類です。
「見た目がかわいかったりきれいだと、やっぱりうれしくなりますよね。そういうのを考えるのが好きなんです。出したときにワーって喜んでもらえるのが、何よりもうれしい。おひとりさまでもご利用いただけますので、お気軽にご予約ください」
ほかにも、日替わりで焼くシフォンケーキや、生クリームたっぷりのパンケーキ、スコーンも人気とのこと。甘党の人が喜びそうなセレクションです。
GREENVEILには、もうひとつ楽しみ方があります。ドッグカフェとして、愛犬と一緒にお茶が楽しめるのです。
「最初はテラスのみペット可にしたのですが、夏は暑くてワンちゃんがかわいそう。なので、吠えたり粗相する心配がなければ、中もOKにしました」
犬と一緒に入れるカフェはなかなかないので、犬連れの常連さんも増えてきたそうです。いつも来る方のリクエストで、犬でも食べられるスコーンなどをつくることも。これはワンちゃんにも飼い主にも大好評なので、定番化しようと思っているそうです。
仲間と楽しみたい方向けには、バーベキューセットの貸し出しも行っています。
「1組5500円でテラスとバーベキューグリル、炭、冷蔵庫などを貸し出しています。ドリンクはうちでご注文いただき、肉や野菜はお好きなものを持ち込みで焼いてもらいます。飲み物は生ビールサーバーや飲み放題プランにも対応しますし、野菜を切るサービスもやっていますので、ぜひご利用くださいね」
地元ライターの小ネタをはさみますと、近くにある「第一スーパー」はバーベキュー用のお肉が豊富だし、直売所「さんちゃん」では地元の夏野菜が充実。近くで食材を揃えられるのもいいですね。
テラス席や窓際席からは、田園風景と、それを取り囲むように広がる里山が見えます。
「店名の『GREENVEIL』は、山の緑がまるでヴェール(幕)のように見えたからつけたんです。夏は鮮やかな緑、冬は真っ白。田んぼの様子も季節によってどんどん変化します。なにより、山の色合いが変わっていくのが好きなんです」
さまざまな人に使いやすいようにと考えられた、まちの老舗電気店が経営するカフェ。地域の人が見守ってきた、緑のヴェールに彩られた景色を楽しみながら、贅沢な時間を過ごせるスポットです。
GREENVEIL(グリーンヴェイル)
長野県上水内郡飯綱町倉井1623
TEL 026-262-1412