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ホーム読むDual life尾崎えり子さんの記事ワーケーションのポイントはサマーウォーズのような「非日常の中の日常」
ワーケーションのポイントはサマーウォーズのような「非日常の中の日常」

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サマーウォーズは長野県上田市が舞台で、私たちの舞台はそこよりもう少し北の長野県飯綱町だった。

夏休み、大家族、田舎、里帰り、繋がりこそが武器。繋がりの煩わしさ。ネット世界とリアルの融合。

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ここでの体験はそんなサマーウォーズとキーワードがリンクするリモートワークプロジェクトだった。

人口は約1万人。
そんな町の古民家に千葉県流山市から6家族20名がやってきた。
みんなで布団を並べて大きな一つの部屋で過ごした。

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私は子どもを2人と、友人の子供を2人連れて行った。
毎日学童で9時間、私の帰りを待ち続ける息子に「僕の夏休みはないの?」と1年前涙目で言われた。

私の仕事時間と引き換えに子どもの貴重な体験時間を奪っていると思うと苦しかった。
とは言え、私には仕事がある。

そんな悶々とした状態を打破するため、今年はサマーウォーズワークを企画した。
大家族で行くことで家事や子どもの見守り負担を分担。現地で田舎ならではの体験を企画してもらい、子どもは夏休みを満喫、親は仕事に集中。

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飯綱町に特別なことはない。
特別ではない場所の特別なところ。
それはいつもと違う場所で日常を過ごせること。

ふるさとじゃないのに里帰りができる。
親戚じゃないのに、親戚みたいな人がいる。
朝起きてご飯食べて、ゴロゴロして、プール行って地元の人と遊んで、「暑い!」って帰ってきて。
そんな普通の夏休みがある。

エピソードを一つご紹介したい。

最終日近くなって、飯綱町に町立の室内プールがあることを知った。
1日何度入っても100円。
帽子も貸してくれる。
幼児用プ―ルと25mプール。
監視員が2名。
温室ビニールのようなものでおおわれている(直射日光を避けられる)。
受付には漫画や本が置いてあり、好きに借りることができる。

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ここでのある少女との出会いが6歳の娘にとって忘れられない思い出になった。

プールはお盆もあってか、来ている人数が少ない。
私がメンバーの子ども達10人を連れていった。
プールの脇で子ども達を見ていると、小学校4年生の女の子が声をかけて来てくれた。

「子ども達、可愛いですね」と。

自分が3姉妹の一番下であること、上のお姉ちゃんはもう高校生であること、今日はお母さんが仕事で夕方5時までプールでいることになっていること。そんな世間話をしていたら、少女が本題を切り出した。「この子達と一緒に遊んでも良いですか?」

あ、この子は私たちと一緒に遊びたかったのか。それで、私が保護者っぽいから私にわざわざ許可を得にきてくれたのか。
「もちろん!」と答えて、娘を呼びその少女を紹介した。
ちょうど娘は泳ぎの練習をしたがっていたので「お姉さんに教えてもらえば?」と誘ってみた。
すると、お姉さんは喜んでクロールを教えてくれた。

娘はまだ6歳で、プールも習っていないし、顔をようやく水につけられるようになった程度。それでも、少女はクロールの動きを分解し、娘が怖がらずにできる方法を提案しながら、一緒に1時間も練習に付き合ってくれた。

おかげで、娘はクロールの手の動きができるようになった。
娘は次の日もプールに行きたがった。「あのお姉さんいるかな?」とワクワクしながら向かった。結局いなかったけど、飯綱町はリンゴの町でも天狗の町でもなく、娘にとっては「優しいお姉さんがいる場所」になった。

それが何よりもう一度訪れる理由であり、他の町と圧倒的に違う差別化になる。

大人も子どもも地元に友達を作る。
家族連れにとってそれ以上強いリピートコンテンツはないと思う。

バケーションというカッコいい響きが似合う場所ではない。
綺麗な海やヤシの実や美味しくてお洒落なスイーツカフェがあるわけではない。

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でも、日常がある。
日常の中でいる方が、実は大人も仕事に集中できる気がしている。

夏休みの日常を過ごせる場所。

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それが飯綱町でのリモートワークプロジェクトだった。

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体験したのはこの方たち!

尾崎えり子さん
(株)新閃力代表取締役社長。
地域に密着した学童や創業スクール、サテライトオフィスを展開。
香川県出身。息子(8歳)と娘(6歳)の2人の子育て中。
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