トップマガジン記事店主・近藤理香さんの温もりあふれるアート作品でサンドグラスの魅力再発見!

店主・近藤理香さんの温もりあふれるアート作品でサンドグラスの魅力再発見!

牟礼駅から徒歩1分のところに立つ老舗の宿泊施設・丸為旅館。2021年、長い間旅館の食堂として使われていたスペースがカフェ「サンドグラス」としてオープンしました。
以前、いいいいづなで取材させていただいたとき(あれもこれも手作り!喫茶軽食「Sand glass(サンドグラス))は、オープンしてまだ半年ということもありシンプルな雰囲気でしたが、最近はチョークアートや植物をつかったオブジェが飾られ、さらにおしゃれな雰囲気となっています。

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店主の近藤理香さんは飯綱町三水出身。小さい頃から絵を描くのが大好きで、裏が白い広告を見つけてはお絵かきに使っていたそう。いつしか近藤さんは、マンガを描くようにもなりました。高校生のとき、「別冊マーガレット」の新人賞に応募。初めての入賞を果たしました。
「高校を卒業後は、京都の芸術短期大学に進学し、日本画コースを選びました。油絵などもやりましたが、自分にはあまりしっくりきませんでした」
日本画を学びつつ、マンガの投稿も続けていたという近藤さん。卒業し、京都で就職してからもマンガを描き続けていました。何度か入賞し、担当編集が付いてデビューを目指そうというところまできましたが、結婚と出産を期にマンガ家デビューを辞めることを決心。
離婚後は、木曽のAコープの惣菜部門で働き始めました。農協系のスーパーなので、野菜をたっぷりつかった惣菜が多かったそう。現在、サンドグラスのプレートがどれも野菜たっぷりなのは、その流れを汲んでいるからかもしれません。
「県内で2番めに大きい規模の店舗だったため、惣菜の種類もたくさんあって、とても忙しかったです。恵方巻なんて、一生分巻きました。もともと関西の風習だし、もう節分には巻きたくない(笑)」

調理師免許を取得し、忙しいながらも楽しい日々を送っていた近藤さん。仕事と子育ての合間には、日本画を描いていたそうです。
「美術の雑誌『一枚の繪』で日曜画家コンクールがあり、好きな日本画家さんが審査員だったので応募しました。実家の神職を継いで神官になった妹を描いたのですが、それが初めての応募でいきなり金賞! とてもうれしくて、それからは年に1回コンクールに出すのを励みに絵を書き続けました」
そのほかにも、子どもの肖像画や、遺族の遺影の写真を明るくを描いてほしいなどの依頼を受けたり、美術系大学を受験したい学生に画材の使い方を教えたり……。近藤さんはいろいろな形で、ずっと絵に関わり続けました。
「教室をやればいいのにと言われることもありますが、人に絵を教えるのって、なかなか難しいんです。一概に『ここをこうするとこういう表現になります』と説明しても、もしかしたらその人らしさを削ってしまうかもしれない。今は人に教えるよりも、自分の作品をいっぱい増やすほうが向いていると思っています」

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お茶とスイーツでカフェ利用もオススメ。お酒とおつまみもある。

子どもたちが独立してからも木曽福島で暮らしていた近藤さんのところへ、飯綱町でカフェをやらないかという話が舞い込みました。その頃は自動車系の会社で正社員として働いていた近藤さんでしたが、「ずっと調理に従事していたので、チャレンジしてみたい」と、飯綱町に戻ることを決意。最初のカフェの話は立ち消えとなりましたが、長野市のイタリアンカフェにキッチンスタッフとして就職。調理師として経験値を積むことに決めました。
「とても忙しかったのですが、料理の仕込みをしっかりする店だったので、勉強になりました。4年間、あの厨房で働いて覚えたことが、今いちばん活かされていると思います」

飯綱町に戻ってから、美容室を経営する同級生に頼まれて、毎年クリスマスカードのイラストを描いていたという近藤さん。その絵を見たお客さんが、近藤さんが調理師として働いているという話を聞き、「ぜひ会いたい」と連絡をくれたそうです。
「絵の仕事をもらえるのかなと思って行ったら、丸為旅館さんの食堂をつかってお店をやりたい人を探していると(笑)。最初は想像もつかなかったのですが、いつか自分のお店を開きたいなと思っていたこともあり、思い切ってやってみることにしました」
自分でコンパネを腰板として貼ったり、土間にビー玉を埋め込んでもらったり、家具をつくったり……。大工さんに工事してもらいながら、自分でできるところは自分で手掛けたそうです。

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常連さんから頂いた花かごを中心に、ウォールアートを作成。

「メニューは、最初とはずいぶん変わりました。長野市で働いているときは、日替りランチのメニューの許可を上司に取るなど大変でしたが、今は自由にできていいですね」
新しい料理を思いついたらメニューに載せて、人気がなかったら外す、好評なら残したりバリエーションを増やす。自分の発想とお客さんの反応を道しるべに、サンドグラスのメニューはどんどん進化していきます。
飯綱町では、「やたら祭り」など、町内の飲食店が指定された食材をつかったオリジナルメニューを提供するイベントを定期的に開催しています。もちろん、サンドグラスも参画。
「宿題のように『これをつかったメニューをつくってね』とお題が出ると、自分では思いつかないようなメニューが生まれておもしろいです。刺激になるし、好評だとうれしい(笑)」
2022年のやたら祭りで出した「お肉たっぷりやたら冷やし中華」も好評のうちに終了したそうです。

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筆者も大好き、人気No.1のクラブハウスサンド。

最近は、お客さんがいない時間をつかってチョークアートの作品をつくるのが近藤さんの密かな楽しみになっているそう。
「日本画は白い紙に描いていくんですが、チョークアートは黒い板に白く浮き立たせていくんです。しかも、チョークだけでとても自由に描くことができる。なにこれおもしろい!って、すっかり好きになりました。しかも、日本画と違って画材をたくさん広げなくていいから、お客さんが来たらパッと撤収できるんですよ」
チョークアートでは、複数の色のチョークを黒板に塗りながらブレンドさせ、表現したい色に変えるという技法も使います。
「最初、24色のチョークを買いました。この色を出すにはこれとこれ、というふうにさぐるのが楽しいのだけど、どうしても出ない色があって。なので、お高い50色入りチョークも買いました(笑)」
実は近藤さん、チョークアートを習うどころか、ハウツー本を読んだこともないそう。指でチョークをぼかす技法に綿棒をつかったり、引っ掻いてチョークを削る表現に100円ショップの金属のマドラーを使うなど、自由な発想で楽しんでいます。

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近藤さんが制作した日本画(右)と、チョークアート。

チョークアートをカフェの壁に飾るようになると、お客さんから「この絵、とても素敵。売っていますか?」という質問を受けるようになりました。作品自体は決して安価ではないのですが、適正な光のもとで絵の写真を撮り、パソコンのソフトで画像をリタッチしてみると、チョークアートそのものとはまた違った味わいのある作品に仕上がりました。購入希望の人にそれを提示してみたところ「ぜひ購入したい」と、無事に商談成立となったそうです。
「ずっと機械が怖いと思っていて、パソコンのキーを押して画面が変わったらビビるような感じでした(笑)。でも、作品を複製するとかお絵かきツールで絵を描くとか、好きなことを目標にしたら、パソコンへの苦手意識がなくなって、むしろ楽しくなってきたんです」
最近では、チョークアートの肖像画の制作も手掛けるようになったそう。結婚や成人式など、晴れの日の記念をアートに残すのも素敵ですね。

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チョークアートの肖像画を手掛ける近藤さん。依頼や問い合わせはお店まで。

サンドグラスで絵を描いていて、ふと集中が途切れて店内を見回すとき、「ああ、この空間、好きだな」ということに改めて気づくという近藤さん。
「隠れ家的なこの空間で、これからも自分の作品をつくっていきたいです。そして、私が感じているのと同じように、お客さんにとってもここが居心地のいい場所であればいいなと願っています」

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「飯綱町商工会のキャラクター『りっぷる』が、リンゴの帽子を取って休憩中の妄想画です(笑)」

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喫茶軽食 Sand Glass
長野県上水内郡飯綱町大字牟礼509-3(丸為旅館内)
026-217-6793

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