こんにちは。いいいいいいづなマガジン編集の諌山(イサヤマ)です。
みなさんは「りんご」ってご存じですか。バラ科リンゴ属の落葉高木であり、赤い実でおなじみの果実ですね。世界でも知らない人はいないほどのメジャーな果実ですが、りんごの町である飯綱町にはその「りんご」をどこよりも深く知り、楽しめる場所があるんです。
今回は飯綱町のりんご博物館「いいづなアップルミュージアム」を取材しました。結論からお話すると、飯綱町のりんご愛に当てられて「もうりんごしか見えない!」と叫ばざるを得ませんでした。
いいづなアップルミュージアムをめぐる
場所はサンクゼールなどがある小高い丘の上。取材したのは6月下旬でしたが、清涼な風が心地よい場所です。
看板には北信五岳が描かれ、りんごを手に微笑む少女。早くもりんごがお出迎えしてくれました。
館内に入ってまず目に飛び込んでくるのはミュージアムに併設されたカフェ「i-cafe」
ランチメニューのジビエカレーは美味しくリーズナブルで、りんごケーキは果実がゴロゴロ入った特製です。
りんごの時期になると、珍しい品種のりんごを使った生絞りジュースも提供するとか。お手製の看板からもポテンシャルの高さを感じさせます。
りんごケーキの美味しさを取材した記事はこちら

定期的に企画展が行われる「APPLE GALLERY」

奥には企画展が行われている「APPLE GALLERY」や、誰でも弾くことのできるピアノがあります。
企画展はりんごに関わらず広く募集しているとのこと。昔は昆虫標本の展示も行っていたとか。
メインの展示である「りんご博物館」。入館料は一般の方は300円と博物館としては格安。
また、飯綱町民であれば無料という懐の広さ。これもりんごのなせる業なのでしょう。
りんご博物館は大きな一室のみですが、所せましと展示品が並んでいます。
この時点では「30分くらいで見終わるかな」と余裕をこいていましたが、結果90分以上滞在することになります。






博物館の前半はニュートンりんご並木の歴史や、りんごの年間作業。飯綱町の立体地図に高坂りんご、りんごの効能などなど。
まさに「The museum」といった感じです。
自分は仕事柄りんごに関わる機会が多いため、勉強欲が刺激される貴重な展示でした。
ただ学術的な内容が大半なので、りんごにさほど興味のない人にとっては刺激が少ないかもしれません。
しかしそんな憂いも杞憂に終わりました。
見渡す限り「りんご」。りんごの価値観を拡げる展示がそこにはあった
りんごの学術的な話を学んだあとに待っていたのは大量のCDジャケット。
りんごの博物館には似つかない雰囲気に気圧されながらもよく見てみると…。
松田聖子の「ガラスの林檎」を発見。
令和の時代でもトップをはれるであろう逸材。
お美しいですね。
奥からは郷ひろみの「林檎殺人事件/また会える?」が出現。
物騒な事柄の後に「また会える?」というクエスチョン。緩急がすぎる組み合わせだ。
次に現れたのはベビーグッズのコーナー。子どもがお世話になりそうなグッズが
並んでいますが、よく見ると全てりんご由来成分を配合したものばかり。
ラスカル…。
ベビーグッズの向かいにはりんごファッションを身に着けたマネキンさんが。
りんごがワンポイント入った服がここのドレスコードなのだろうか。
団扇には若き日の広末涼子とりんご。徹底している。
ビデオコーナーを発見。果たしてりんごと何の関係があるのかと見てみると…。
筆者の大好きな「僕のヒーローアカデミア」通称「ヒロアカ」を発見。りんごの「り」の字もない作品のはずなのだが…
“「無個性」だった主人公が最高のヒーローを目指して成長していくヒーロー漫画。本作品では、ラストシーンでりんご飴を手にするシーンが有名。”
この選定者、伊達や酔狂で視聴していないぞ…!
ほかには死神リュークがりんごが大好物ということで「デスノート」がセレクトされていたり…
劇中、りんごを買うシーンがあるというだけで選ばれた「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」など、
りんごが絡めばOKという風潮が垣間見えてきました。
奥には「林檎の殿堂」と呼ばれるコーナーがありました。
これは2001年から2004年にかけて毎年開催されていた公募型イベントで、
その年においてりんご産業の振興に寄与、イメージアップに貢献したとされる人物や事柄を公募し、選出、功績を展示しています。
今までの流れからすると生半可なものは来ないだろうと予想していましたが…
ハルウララ(2004年殿堂入り)が選出されていました。
“その気力と体力の源は大好物のりんごにあった。”とのこと。
大好物なのか、りんごが。
同じく2004年には「人名用漢字」も選出。
林檎という漢字を使用したいと要望がありノミネート。
想像の遥か上をいくラインナップに、着いていくのがやっとです。
お子さんの味方、絵本コーナーもあります。
ご想像通り全てりんごにまつわるもの。りんごの英才教育はいいづなアップルミュージアムで。
変化球ばかりでなく、王道も抑えているのがいいづなアップルミュージアム。
飯綱町のマスコットキャラクター「みつどん」もしっかり鎮座。
そのお隣には椎名林檎の特大ポスター。「りんごのうた」も好きですが、やはり
「丸ノ内サディスティック」が筆者の好み。グレッチで殴って欲しい。
極めつけは「Apple」。
今は亡き伝説の筐体「Macintosh」です。
ここまでくると見事としか思えません。徹底したりんご尽くしに、気づけばこの空間ではりんごのことしか考えていませんでした。
りんごに想いを馳せながら博物館を出ると、目線の先には先刻の「みつどん」グッズ。
りんごのゲシュタルト崩壊したタイミングを見計らっているのでしょうか。恐ろしいマーケティング手法に脱帽です。
怒涛の勢いでりんごを感じることとなった、いいづなアップルミュージアム。
前半の学術的な展示から一転、後半のりんごにかすれば何でもOKなりんごワールド。
一体なぜこのような企画構成になったのか。今回は館長である小林浩道さんにお話を伺うことができました。
幅広いりんご展示の企画意図とは?
■話を聞いた人:いいづなアップルミュージアム館長|小林浩道さん
いいづなアップルミュージアム4代目館長。長野県上水内郡旧三水村出身。高校卒業後、東京に出てアルバイトをしながら独学で漫画を勉強する。リンゴ栽培のかたわら漫画を描き続け、1985年『漫画アクション』の新人賞佳作に入選してデビュー。故郷の三水村をモデルに地方色豊かな作品を連載し、現在も飯綱町の広報誌「いいづな通信」でまんが「食の風土記」を連載している。

「りんご博物館、興味深く拝見させていただきました。後半の多義に渡るりんご展示はなぜ始まったのでしょうか?」
小林館長
「1997年にオープンしたアップルミュージアムですが、当初はパネルなど学術的な展示ばかりの一般的な博物館でした。展示物も少なく、がらんとした印象で魅力不足を痛感していた当時の館長が、もっと個性のある展示にしようと動き出し、全国からりんごに関するコレクションを集めました。ネットで呼びかけたり、友人知人に聞いてみたり。少しづつ集めて今に至りました」
「コツコツ集めた結果、オンリーワンの博物館になりましたね。反響などはいかがでしたか?」

「迷走しているとは言われますね。テーマごとに置いているとはいえ、まだまだ整理しきれていない部分もあるので、そこは整頓したいと思います。ただこの迷走した雰囲気が功を奏しているのか、月曜から夜更かしなどメディアに取り上げられることも増え、良くも悪くも話題になってますね」

「りんごのコレクションは何か選定基準みたいなものはあるんですか?このラインを超えたらアウト、のような」

「りんごに関連すれば基本問題ないです。随時募集はしているので、何かりんごに関するものをお持ちの方はご一報ください」

「懐の広さが尋常ではない...!今後どのような博物館を目指していく予定ですか?」

「先程もお話したように、展示の整理整頓はしていきたいですね。古い展示も多くなってきているので、学術的なもの、そうでないもの含め、最新の情報にアップデートしていければと思います」

「ますますおもしろくなるということですね。一ファンとして、今後のアップルミュージアムの動向を楽しみにしています!本日はありがとうございました」
帰り際、アンケート回収箱を見つけるとここにも「Apple」
神は細部に宿る、と言いますが、りんごも細部に宿っているようです。
いいづなアップルミュージアムを訪問して2時間あまり。りんごのことしか考えていませんでした。ここまで熱中させてくれたのは、小林館長はじめ、飯綱町の「りんご愛」の強さ故なのだと感じました。
飯綱町の人だけでなく、全国のりんご好きに来てほしい博物館です。
りんごにまみれたい方はぜひ訪れてみてください。
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いいづなアップルミュージアム
住 所:〒389-1206 長野県上水内郡飯綱町倉井5
営業日時:9:00~16:00(月曜日休館)
入館料:大人300円(250円)、小・中学生150円(120円)
HP:https://www.town.iizuna.nagano.jp/docs/337.html
※( )内は、20人以上の団体料金
※飯綱町に在住の方、小学生未満のお子様は無料
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