アクシデントすらたのしめる

長島伸五さん(44)

「ほんとうはリタイア後に農業をやろうと思っていたんですよね。」
新規就農して今年(2015年)で5年目を迎える長島さんは、言葉があふれるように次々と矢継ぎ早に話し出します。

いずれ農業をしたいと夢見つつ、東京で会社勤めをしていた長島さんに、となり町である信濃町出身の友人によって転機がもたらされたそうです。飯綱町のある農家さんが跡継ぎで困っている、と。その方はこの地域では有名な「名人」と呼ばれる方でした。お子さんはいらっしゃるのですが、会社勤めをし家も建ててしまい、継ぐことはしないとのこと。話を聞くと、師匠、住まい、道具、畑などの条件がそろっていて、新規就農のチャンス、と一念発起。後にも先にもこんな充実した状況で農業に関わり始められるチャンスはないと判断し、飯綱町に移住し、農業をはじめたのでした。

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「まあ、そこからが大変だったんですけど・・・」
条件が揃ったスタートと思い移住しようとしたタイミングで、その師匠となる方が急に亡くなり、それでも見よう見まねでやってみることからはじめたそうです。でも、どんどん農地や果樹がだめになっていく。新規就農をする多くの場合、2年ぐらいは経験のある農家さんの元で弟子入りし、国から研修費をもらいながらその仕事をやりながら学ぶ、そんな制度を使います。いきなり本を読んだり、見よう見まねでできる、甘いものではありません。
次々と起こるアクシデント、よくめげずにやってきたものだ、と感心せずにはいられないほどの出来事が起こったと、なぜかたのしそうに話す長島さん。
もちろん、今ではJAの方の協力、開拓した直販や直売所での販売などにより、軌道に乗ったというところまではあと一歩、ということだそうですが、除雪アルバイトなどを兼ねて、生活的は充分やっていけているとのことでした。
なぜ、こんなにアクシデントばかりなのにたのしそうに話すのだろう、と疑問を感じ、飯綱町での暮らしについて話が及びはじめると・・・

東京に比べると、はるかに人間らしい生活ができている、心の健康状態がいい、と長島さんは言います。飯綱町はなによりも「人がいい」とも。そして、ダイレクトにお客さまから反応が返ってくる、直販や直売所でのやりとり、直売所では並べようとしている先から買っていく、そんなこともあるそうです。そういうことひとつひとつが大変だけどやりがいにつながっていくのでしょうね。

「農作業は大変だけど、たのしいです。単純作業は嫌いじゃなくて。無心になれる。そして、作業中、気持ちの良い風景が広がっている・・・」飯綱町の、農業のいいところを聞いて、次々と答える長島さんを見ていると、現代人の大きな悩み、ストレスなんて感じてないんじゃないかと思えてきます。今の環境が自分に合っている、たのしいと心から感じているようでした。だからアクシデントすらもたのしめるのでしょうね。
「まずこれからは売上や収益率を上げていくことが目標、そして無農薬や珈琲豆の栽培にもチャレンジしていきたい」アクシデントのことを話すときと変わらない調子で話す長島さん。新規就農の同世代と研究会も立ち上げ、意気揚々と前を見据えています。